ケチャまつりは今年で37回目だ。37回すべて出演している人はいるのかとスタッフに尋ねると少なくとも3人はいる、とのことだった。うち一人はバナナマンを演ずるYさんである。たしかにバナナマンのいないケチャ祭りは、サンタのいないクリスマスのようなものだ。わたくしも、はじめてバナナマンを見た三十数年前の夏からすっかりファンになってしまった。いつも同じパターンなのだが、何度見ても楽しめる。
見事な口上を誌上で再現してみる。
写真は2009年のときのもの
まずバナナマンでない普通の人(二人組み)が30万円からスタートし、10万、5万と叩き売りを試みるが、当然ながら売れない。そこで「あの人を呼ぼう バナナマン!」と、始まる。皆さまもごいっしょに「バーナーナーマーン!」
「バナナマンは、とくに女性の黄色い声が好きなんです」「もう1回、もう1回、お願いします」!」「ヌワッハッ、ハッ、ハッハ。バナナマン、ただいま参上」
「運命」のメロディが流れる
4人の男性にかつぎあげられてバナナマン登場。右手に水鉄砲を持ち観客に向け水を放つ。ウルトラマンのメロディでバナナマンの歌の男声合唱。
胸につけてる マークはバナナ
自慢のジェットで 敵をうつ
バナナの国から ぼくらのために
来たぞ われらの バナナマン
わたしがバナナマンです。バナナを買わない悪者はだれだ!
わたくしが来たからにはそのバナナ、必ず買っていただきます。安く売るわけにはいきません」
「少年よ、静かにしなさい。これから授業が始まる。数えてみると、このバナナ合計108本 名づけて煩悩バナナ このバナナを買えば、お父さん、あなたは煩悩から解放されます」
「さあ行ってみましょう、1万円いませんか、1万円」「ええい仕方がない。5000円いませんか。自分で買ってしまいそうな安さです」「4000円。たった4000円で煩悩が消えるんですよ、お兄さん、4000円」「高い」「わたしも高いと思う」「なら言うな」「しかしそれではバナナの叩き売りは終わってしまう」「お母さん、お子さんに『高い』という言葉を教えないでください」
「3500円」「高い」「お前たちは高いという言葉しか知らないのか」「さあ、行ってみましょう 100円」「許せない」
今日のお客さんはバナナを買いたくないのではありません。バナナの日常的な食べ方にあきていませんか。わかりました」
「バナナの非日常的な食べ方をみなさまにお教えしましょう」「夏暑い。ついつい食べ残して、食べ物を粗末にしていませんか?お父さん」「バナナを一皮だけむきます。全部むいてはいけません。バナナは皮に栄養がある。しかしこれだけではちょっと彩りがさびしい。さあ、行きましょう、ケチャップ」「エエッ?」「『エエッ』じゃない。食べる人の身にもなってごらんなさい。タップリとつけて見事な色合い。しかしこれでは、まだ味に締まりがございません。そこでカラシ。エエーッじゃない。何度も言わせないでください。食べる人の身になって考えてください。これでバナナのホットドック、バナドックの完成でございます。見てください。食欲をそそります。香りも最高です。うまいかまずいか、まずいかうまいか。それはあなた!食べてみないとわかりませーん。拍手」「これだけ多くの人々が、あなたがこのバナドックを召し上がるのを期待しています。それではお名前を」「○○さん。それでは○○さんにバナドックをご試食いただきましょう」「では、どうぞ」「○○さんに拍手」
「やってはなりません。○○さんの苦しみは三日と三晩続きます。食べ始めはいいんです。それが夜になり、翌朝になり、さらに翌日になり、体にズシンと来ます。けしてやってはなりません」「食べ方はひとつしかないのか? 暑い夏をホットに乗り切る体になる食べ方をお教えしましょう」「ではバナナの皮をしっかりむいて。皮に栄養はございません。そして、そこに七味唐辛子。しっかりとまぶしていただきます。さあ、見てください。色どりもいい、激辛バナナ、○○さん、あなたは2度不幸が襲ってこない、そういう確信をもっていませんか? 一度あることは二度ある、かもしれません。しれません。それではこの激辛バナナ、うまいかまずいか、まずいかうまいか。それはあなた!食べてみなければわかりませーん。ではご試食いただきましょう。△△さんに拍手」「辛いの苦手ですか。ではそれを克服しましょう。唇が痛い?初めてお聞きしました。この感想、拍手!」「二人の方が犠牲になってしまった。すべてはバナナを買わないみなさんの責任です。さあこの方々の苦しみに応えるためにもバナナを買っていただきましょう」
「えーい、3000円、えーい、2000円、まだ手が動こうとしない。なんだ、この静けさは。よーし、断腸の思いで、1500円。しょうがない、1000円、まだいない。800円。もしかしたらもっと安くなると思っていませんか。期待に応えましょう、仕方ない、えーい500円。値ごろ感が出てきたと思いませんか。もっと安くしろという無慈悲な反応、えーい400円。それじゃもう仕方がない。300円、まだいない、縁起が悪いこのバナナやめ。それでは新しいバナナで挑戦したいと思います。今度はひとつしか売りません。これで買ってちょうだい、250円。中途半端?わたしもそう思う。249円。もっと下げろ?えーい200円、ここで手を上げなきゃダメでしょう。ここで手を上げてくれないとわたしの立場もない。えーい、もうがんばって売っちゃおう、100円」 3人の客から「ハイ」の声。「では3人の方に100円で売っちゃおう。ではみなさんの方を向いて。みなさん、バナナを安く買おうとした悪者です。ではこのお3人の将来に幸多からんことを祈りまして、大きなお手を拝借(三三七拍子)。はい、ありがとうございました」
「100円を売り上げ、200円をケチャまつりのご寄附にさせていただきます。ありがとうございました。拍手!」
しかし、これで終わりではない。「いま買ってもらったのは腐ったバナナ、今度は正真正銘、新鮮なバナナです。いいですね。なんといってもツヤがいい。それを破格の値段で売ってしまいましょう。ただし大人の方限定、18歳未満お断り、名づけてアダルトバナナ、いやらしいんじゃありません。大人の方向けに高貴な買い方をぜひ学んでいただきたい。パンと手を上げないといけない。さあ、肩の力を抜いて、準備はOKですか?さあ、早い者勝ち、行ってみよう」「さあ10円」3人が手を上げる。「よし、売った」
トラさんの叩き売りは客を笑わせる。バナナマンの叩き売りは客を怯えさせる。初めは水鉄砲の水に当たらないか、次はマスタードたっぷりのバナナを食べさせられないか、バナナマンと目が合わないか、恐怖の20秒である。
バナナマンも同じことを30年もやっているのでだんだん客あしらいが上達する。来年はどんなふうになっているのだろうか。
見事な口上を誌上で再現してみる。
写真は2009年のときのもの
まずバナナマンでない普通の人(二人組み)が30万円からスタートし、10万、5万と叩き売りを試みるが、当然ながら売れない。そこで「あの人を呼ぼう バナナマン!」と、始まる。皆さまもごいっしょに「バーナーナーマーン!」
「バナナマンは、とくに女性の黄色い声が好きなんです」「もう1回、もう1回、お願いします」!」「ヌワッハッ、ハッ、ハッハ。バナナマン、ただいま参上」
「運命」のメロディが流れる
4人の男性にかつぎあげられてバナナマン登場。右手に水鉄砲を持ち観客に向け水を放つ。ウルトラマンのメロディでバナナマンの歌の男声合唱。
胸につけてる マークはバナナ
自慢のジェットで 敵をうつ
バナナの国から ぼくらのために
来たぞ われらの バナナマン
わたしがバナナマンです。バナナを買わない悪者はだれだ!
わたくしが来たからにはそのバナナ、必ず買っていただきます。安く売るわけにはいきません」
「少年よ、静かにしなさい。これから授業が始まる。数えてみると、このバナナ合計108本 名づけて煩悩バナナ このバナナを買えば、お父さん、あなたは煩悩から解放されます」
「さあ行ってみましょう、1万円いませんか、1万円」「ええい仕方がない。5000円いませんか。自分で買ってしまいそうな安さです」「4000円。たった4000円で煩悩が消えるんですよ、お兄さん、4000円」「高い」「わたしも高いと思う」「なら言うな」「しかしそれではバナナの叩き売りは終わってしまう」「お母さん、お子さんに『高い』という言葉を教えないでください」
「3500円」「高い」「お前たちは高いという言葉しか知らないのか」「さあ、行ってみましょう 100円」「許せない」
今日のお客さんはバナナを買いたくないのではありません。バナナの日常的な食べ方にあきていませんか。わかりました」
「バナナの非日常的な食べ方をみなさまにお教えしましょう」「夏暑い。ついつい食べ残して、食べ物を粗末にしていませんか?お父さん」「バナナを一皮だけむきます。全部むいてはいけません。バナナは皮に栄養がある。しかしこれだけではちょっと彩りがさびしい。さあ、行きましょう、ケチャップ」「エエッ?」「『エエッ』じゃない。食べる人の身にもなってごらんなさい。タップリとつけて見事な色合い。しかしこれでは、まだ味に締まりがございません。そこでカラシ。エエーッじゃない。何度も言わせないでください。食べる人の身になって考えてください。これでバナナのホットドック、バナドックの完成でございます。見てください。食欲をそそります。香りも最高です。うまいかまずいか、まずいかうまいか。それはあなた!食べてみないとわかりませーん。拍手」「これだけ多くの人々が、あなたがこのバナドックを召し上がるのを期待しています。それではお名前を」「○○さん。それでは○○さんにバナドックをご試食いただきましょう」「では、どうぞ」「○○さんに拍手」
「やってはなりません。○○さんの苦しみは三日と三晩続きます。食べ始めはいいんです。それが夜になり、翌朝になり、さらに翌日になり、体にズシンと来ます。けしてやってはなりません」「食べ方はひとつしかないのか? 暑い夏をホットに乗り切る体になる食べ方をお教えしましょう」「ではバナナの皮をしっかりむいて。皮に栄養はございません。そして、そこに七味唐辛子。しっかりとまぶしていただきます。さあ、見てください。色どりもいい、激辛バナナ、○○さん、あなたは2度不幸が襲ってこない、そういう確信をもっていませんか? 一度あることは二度ある、かもしれません。しれません。それではこの激辛バナナ、うまいかまずいか、まずいかうまいか。それはあなた!食べてみなければわかりませーん。ではご試食いただきましょう。△△さんに拍手」「辛いの苦手ですか。ではそれを克服しましょう。唇が痛い?初めてお聞きしました。この感想、拍手!」「二人の方が犠牲になってしまった。すべてはバナナを買わないみなさんの責任です。さあこの方々の苦しみに応えるためにもバナナを買っていただきましょう」
「えーい、3000円、えーい、2000円、まだ手が動こうとしない。なんだ、この静けさは。よーし、断腸の思いで、1500円。しょうがない、1000円、まだいない。800円。もしかしたらもっと安くなると思っていませんか。期待に応えましょう、仕方ない、えーい500円。値ごろ感が出てきたと思いませんか。もっと安くしろという無慈悲な反応、えーい400円。それじゃもう仕方がない。300円、まだいない、縁起が悪いこのバナナやめ。それでは新しいバナナで挑戦したいと思います。今度はひとつしか売りません。これで買ってちょうだい、250円。中途半端?わたしもそう思う。249円。もっと下げろ?えーい200円、ここで手を上げなきゃダメでしょう。ここで手を上げてくれないとわたしの立場もない。えーい、もうがんばって売っちゃおう、100円」 3人の客から「ハイ」の声。「では3人の方に100円で売っちゃおう。ではみなさんの方を向いて。みなさん、バナナを安く買おうとした悪者です。ではこのお3人の将来に幸多からんことを祈りまして、大きなお手を拝借(三三七拍子)。はい、ありがとうございました」
「100円を売り上げ、200円をケチャまつりのご寄附にさせていただきます。ありがとうございました。拍手!」
しかし、これで終わりではない。「いま買ってもらったのは腐ったバナナ、今度は正真正銘、新鮮なバナナです。いいですね。なんといってもツヤがいい。それを破格の値段で売ってしまいましょう。ただし大人の方限定、18歳未満お断り、名づけてアダルトバナナ、いやらしいんじゃありません。大人の方向けに高貴な買い方をぜひ学んでいただきたい。パンと手を上げないといけない。さあ、肩の力を抜いて、準備はOKですか?さあ、早い者勝ち、行ってみよう」「さあ10円」3人が手を上げる。「よし、売った」
トラさんの叩き売りは客を笑わせる。バナナマンの叩き売りは客を怯えさせる。初めは水鉄砲の水に当たらないか、次はマスタードたっぷりのバナナを食べさせられないか、バナナマンと目が合わないか、恐怖の20秒である。
バナナマンも同じことを30年もやっているのでだんだん客あしらいが上達する。来年はどんなふうになっているのだろうか。