北アルプスにこんな所があったのか~ これが最初の印象。
山友でんさんからお誘いのメールをいただき、即答で同行させていただくことにした。
以前にうかがっていたコースではあるが、改めて地図を見てみると・・・ へえ~こんな所が・・・ である。
9月12日は21時30分にいつもの場所で拾っていただき、七倉へ向かう。
七倉山荘前に着いたのは2時を過ぎていた。
自分は車中で数十分ばかり惰眠をむさぼれたが、運転手のでんさんは寝てはいないはずだ。
お互い仮眠を申し出ることなくそのまま出発することになった。 でんさん仮眠をとらなくて大丈夫かな?
暗闇での山歩きは最高に気持ちが良いのだ。静かだし涼しくてよい。ちょいと怖いことなんぞ想像しただけで鳥肌だって立ってくれる。
で、2時間半くらい登ったところで東の空が開けた。
あとどれくらいで天狗の庭に着くかわからなかったので、ここで日の出を拝むことにしたのが失敗のもと。
もう少しで大展望が広がったのに・・・ 残念無念。
何はともあれ、先を急ぐことにする。
Sunshine on my shoulders makes me happy だな。
光を失ったお月さんと 今日も雲がきれいなんです。
立ち止まらなければ、朝焼けの槍が見えたのに・・・ ただただ無念。
いや~すご~い! しか言葉が見つからない。
本日の最終地点の烏帽子岳もすぐそこに見えている。 たいしたこたぁねえ~ぜ。
実はこれが大いに甘かった。
ここからでは不動岳に隠れて南沢岳が見えていないし舟窪岳へはぐるっと回り込まなければならないのだ。
この時点ではまだそれらに気付いていない幸せなひと時だったのじゃ。
やっぱり栃木や群馬の山とは違うね~。 能天気な独り言が続く。
リンドウにチングルマだ。 秋空を入れて超ローアングルで。
こっちにもリンドウが、こんどは北葛岳と蓮華岳を入れて。
チングルマもついでに
この先、苦難が待っていることも知らずに、こんな感じでのんびり写真を撮りながら歩いてしまった。
天狗の庭から1時間以上かけて舟窪小屋へ到着。
腰を下ろしての大休止、お茶を頂き、スタッフの皆さんと記念撮影。
で、足元から舟窪岳、不動岳へと続く尾根を見て唖然としたのじゃ。
想像よりもはるかに遠く、おまけにアップダウン有できつそうだ。 ちょいとのんびりしすぎたことを悔いた。
で、七倉岳山頂はパス
舟窪乗越への途中、南側が崩落が酷いね。谷側へ滑落しないように気を付けないとね。
乗越付近からみた針ノ木岳。
蓮華岳も大きく見える。
右、不動岳から野口五郎、槍へ
蓮華岳方面に雲が湧き出してきたぞ。
舟窪第二ピークへの途中のこと
いきなり大きな雷鳴が轟いた。いっしゅん雷が来たかとひるんだが、音の主はすぐに分かった。
爆音を轟かせ姿を現したのはF2戦闘機ではないか! こんなところにだ。
眼前のダム湖の下流、高瀬川の谷低くを東から西へと飛んできた。この位置からはコックピットがはっきりと見えた。
自分の目の前で北西へ僅かに向きを変え、高度を幾分上げて山陰に消えていった。
舟窪第二ピークと不動岳との中間尾根を飛び越えていったのだ。
向きを変えたときにコックピト下にあるエアーインテークがはっきりと見えた。
ブルー系のカラーリングであることからして、米軍のF16ではなく航空自衛隊のF2であることがわかる。
さてさて舟窪第二ピークへ着いた。 でんさんも遅れて到着、だいぶお疲れのようだ。寝ていないのだ無理もない。
しばし休憩の後に不動岳へ向かうが・・・ 遠いな 高いな
舟窪第二ピークと不動岳の最低コル付近、
すごいところにマツムシソウが咲いていた。
不動岳への登り標高差400mは休まずにゆっくりと、写真ときのこをとりながら。
きのこはりっぱなショウゲンジとオオツガタケの幼菌をを採ったのら。 持ち帰って調べただけ、食べませんでした。
それと採ることはしなかったが、シロカノシタ、カヤタケがちらほら、それにイグチの仲間がたくさんあった。
ハイマツ帯になれば山頂までもう少しだ。
後ろを振り返り振り返り進むが、でんさんの姿は見えない。
久しぶりに見るトウヤクリンドウ、日光白根以来 20年ぶりくらいか? 高い山に登らんもなぁ。
赤く紅葉したウラシマツツジと・・・ 烏帽子岳の手前にデカいピークがあるぞ? それにコルも!
はて? 地図で確認するも、やはりあの山を越えなければ下山できない。 朝一の読みが甘かったぜ。
ここまでくれば屁の河童と思っていたのにだ。 でんさんが心配だ。
遠くから見えていた山頂の一角にある岩峰。
周りにガスがかかってきた。 しばらくトウヤクリンドウを撮ったりしながらでんさんを待つ。
登山者が前方から一人やって来た。 彼に後からやって来るでんさんに声をかけてくれるようお願いした。
ここにはたくさんのコマクサが咲いている。なかには紅葉しているのに咲いているものもある。
でんさんを待つついでに、ここでも時間つぶしにコマクサを撮ることにした。
と、でんさんの姿が確認できた。しばらく目で追っていると、先程の登山者とお話しているのが分かる。
さてこれで安心だ。体はすかっり冷え切ってしまっている。山頂に立って40分以上が過ぎた。先へ進もう。
不動岳からはいったん南沢乗越へ200mくらい下らなくてはならない。
そこから250mの登りが待っている。これが本日最後の大登になる。
南沢乗越、ここも風化による花崗岩の崩落が激しいね。
山頂かと思ったところは山頂手前のロックガーデンだった。
山頂まではあとわずか、周りのガスも晴れてきているし、ここでしばし花や風景を撮影しながらでんさんを待つことにする。
ミヤマコゴメグサとイワギキョウ?
何とも気持ちの良いところだ。 もっと早く辿り着きたかった。
ここから南沢乗越付近を見ていた。白い帽子を被った登山者を2人確認できた。が、でんさんではない。
登山者が後を追ってきているので、幾分不安は落ち着いた。
自分は南沢岳のピークへ向かうことにした。
南沢岳山頂、
際立ったピークがあるわけだは無く、だだっ広く長い花崗岩の砂礫の尾根が続いている。
ここはまるで天国だよ。 辺りにはこれまたコマクサがたくさん花を咲かせている。
ずっとこのまま風に吹かれていられればなぁ~
コマクサを撮りながらでんさんを待っていたが、なかなか姿を現してはくれない。
黒部湖が見えてきた。 立山にかかっていたガスも幾分薄くなってきている。
先へ進むことにする。
次はいよいよ烏帽子岳の裾に広がる池塘群だ。 これまた美しい。午後の光の具合もいい。
美しいロックガーデンは続く。
遠くには赤牛岳、その向こうは雲をかぶった薬師岳が見える。
手前の砂礫の斜面にはコマクサがたくさん咲いている。
ここを過ぎればいよいよ池塘群を有する草原になる。
期待通りの美しさだ。 欲を言えばもう少し早い時間に来れればよかった。
足元にはこんな花が、 イワギキョウだべかそれともチシマギキョウだべか?
南沢岳の手前辺りからちらほらとは見かけていたが、ここの花は紺色に近い。
大きな池塘の縁に着いた。 烏帽子は完全に逆光になってしまったためシルエットになっている。
のんびりしたいな。 ここでしばらくでんさんを待つことにする。
あっちをうろうろ、こちっをうろうろと。
あ~ 秋だねぇ~
向こうに見える南沢岳に目を向けながらの撮影だ。 もしかしたらでんさんを確認できるかもしれない。
早く下山路にたどり着きたい理由がある。
朝の登りで、ヘッドランプの電池が心もとなくなっていることに気付いた。
たしか先日充電したはずだが・・・・ 充電したのはランプの電池ではなくラジオのものだった。おやおやだ。
稜線上での夕日の撮影は諦めるとして、ランプの電池はあとどのくらい持つだろうか、目の利くうちに少しでも下っておきたい思いがある。
さてさて、ここまでくれば烏帽子岳は割愛するとして、残るは前烏帽子のみだ。
先へ進んで、展望の利くところででんさんを待つことにしよう。
トリカブトだらけ
あとはあの前烏帽子を登るのみだ。 右側、烏帽子岳の方角から人の声が聞こえてくる。
何人かの登山者が見える。 烏帽子は完全に逆光となった。
ガスと光の具合で烏帽子山頂に興味がわかない。 それとも疲労のためか?
この辺りで30分ほどでんさんを待った。さらに、少しは展望の利くうちに前烏帽子へ登って、そこででんさんを待つことにする。
目を凝らし辿ってきた道を追ってみるが、ちょっとしたものが動いている人に見えてしまう。
レンズを望遠にかえて追ってみた。あれっと思うものを撮影しては拡大してみると・・・ でんさんだ!池塘群の中を歩いている。やっと見つけた。
前烏帽子山頂まで登って、もう一度同じことをやってみる。 間違いない、なぜかほっとした。
ガスがかかると同時にぽつぽつと雨も落ちてきた。さらに20分ほど待ったが、眼下に見える登山道になかなか姿を現してくれない。
来た道を引き返し、でんさを迎えに戻った。奇声を上げてみると返ってきた。
17時過ぎ、半日ぶり やっと再開だ。
再び前烏帽子を登り返して、目指す烏帽子小屋に着いたのは18時近くになっていた。
18時前、小屋の裏手からブナ立尾根の下山にかかった。途中からヘッドランプを点け、どうにか2時間で濁沢の河原にでた。
でんさんが辿り着く前に対岸へ渡る橋を見つけておきたかった。
真っ白な花崗岩の砂浜、まるで雪原にいるかのようだ。踏み出した足元では石英の砂がきゅきゅと鳴る。まるで新雪を踏んでいるかのように。
こう暗くてはどこが登山道なのかよくわからない。しばらく上流側を探すも見つからず、下流側へ行ってみると橋は簡単に見つけることができた。
橋へ誘導するために花崗岩が一列に置かれている。 そのうちの一つに腰を下ろし、でんさんを待つことにした。
周りには人工灯火もなく真っ暗だ。もちろん満天の星空、といいたいところだが、確かに暗くてたくさん星は見えている。
が、自分が星好きの小学生だった頃に比べれば、この星空は見劣りがしてしまう。
確かにもっと暗く、天の川もはっきり分かるくらい美しい星空だったのだ。
じっとしていると、汗ばんだ体も恐ろしいくらい寒さを感じるようになった。
上半分だけ雨具を着てみるが、やはり寒い。 仕方ない、これの他に防寒具がないのだから。
体をいっぱい震わせてみる。 気休め程度だが、少しは暖かさも戻るのが感じられる。
さて、この星空を前にしてじっとしているのはモッタイナイ。
三脚を持ってかなかったので、座っている花崗岩にレンズを上に向けてカメラを置いてみる。
これならばいけそうだぞ、とISO5000にしてF4.5で20秒ほどシャッターを開けてみた。
まずまずに撮れる。真っ暗な中で明るいモニターを確認してみると、立派に撮れている。
2、3カット撮影して終了とした。 アングルが一方向しか決められないからだ。
天の川がわかる
そうこうしているうちに、だんだんと星が消えていく。 月が出たのだ。
しばらくすると東の山の端がなんとなく明るくなってきた。
時間は21時を回ったところだ。ここに来てすでに1時間近くが過ぎた。不安になってきた。
砂の浜からすこし森に入ったところで再び奇声をあげてみると、2度目で返ってきた。
21時20分、本日2度目、再びの再開だ。
その後は2人そろって濁沢を渡り、不動沢の吊り橋を渡った。
長いトンネルを抜けると高瀬ダムに出た。
ここからが長い、ロックフィルダムにつけられたジグザグ道を歩きダムの下まで行き、
さらに高瀬川沿いにつけられたトンネルだらけの真っ暗な道をひたすら七倉を目指して歩いた。
七倉にたどり着いたときには23時近くになっていた。疲れた・・・・ こういう山歩きは嫌いではない。