さてさて、それではいよいよ越後沢山へ向けて笹薮を進みます。
記憶ではさほどひどい藪漕ぎはなかったはずだが・・・ 見ての通り、まったく踏み跡らしきものは無し。
越後沢左俣、中俣そして右俣と、越後沢の源頭部を間近に見ながらのんびりと進みます。
なるべく東側の笹の薄いところを歩くようにはするが、ひどい藪だ。
ほとんどが腰から胸の高さくらいの笹が続く。
越後沢山との間にある最低鞍部への下り。ここを下れば楽園になる。
左(西)側に踏み跡らしきものがあるのだが、それを行くとやがて道形となるが、背丈をも超えるひどい藪になってしまう。
過去2回はそっちへ行ってしまった。ここはなるべく東側を、3回目と同じように下って行けばいい。
楽園に到着、 水場はないが、縦走路中の数少ない幕営地になる。
ここからの登りがひどい藪漕ぎだったと記憶している。
岩峰の右斜め下に踏み跡らしきものがある。 過去にはこの踏み跡を忠実に辿れたが、もっとはっきりとした踏み跡だったはずだが・・・
けっきょくここの登りは、草付の上部から踏み跡の残骸目指して笹に取付いてみたが、全く寄せ付けてもらえない。過去3回はどうにか辿っていけるくらいの踏み跡があったのにだ。
しょうがない、ここは東側の笹の丈の低そうなところから登ってみることにする。
と、ここで、楽園から下ってきた斜面を振り返る。
上部に道形のようなものが見えるが、それがトラップだ。
さて、岩峰基部までひどい藪漕ぎだったがどうにか登れた。 もっとすんなり登れると思ていたが甘かった。
ここを過ぎてしまえば越後沢山までは尾根も痩せ、ひどい藪漕ぎからは解放されるはず、と記憶しているが・・・
たいした藪ではないように見えるが、笹に混じって灌木も茂っているため、見た目ほど楽ではない。
枯れ草の中にひっそりとマツムシソウが一輪だけ咲いていた。 なぜか ほっとするね。
灌木が多くなってきた。 進むのにさらに難儀する。
東側の草付も歩けなくはないが、尾根は痩せ、スリップしたらば東京都民の飲み水になる恐れがある。
ここは稜線の藪を忠実に辿ったほうが安全だ。
こんなところも部分的にはあるので利用する。
この辺りから越後沢の右俣上部が見えだしてくる。
すごい迫力だ。 対岸の大きな山は平ヶ岳、 でその右奥が燧ケ岳。
本谷山を振り返る。 手前の小さな岸壁に見覚えがある。ここだここだ~
目指す山頂はすぐそこに見えるのに、藪がひどくすんなりとは山頂を踏ましてはくれない。
これで腰程度の丈の藪だ。
越後沢右俣の大雪渓が見えてきた。 手前のコブまで行けばもっと間近に見ることができるだろう。
これだ! これが見たかったのだ。 この下、雪渓上部が右俣の奥壁だね、たぶん。
ここは8月に一度、6月に2度見ているが、この時期は初めてだ。
6月の時は谷全体が雪で埋まっていた。8月のそれは大きくS字を描き、まるで氷河のように見えた。
辿ってきた稜線と奥利根側を見る。
遠く日光白根、錫ヶ岳、至仏山、上州武尊、手前に来て大白沢山に赤倉山、水長沢山。
奥利根を囲む山々に越後沢の右俣と中俣、
山頂までもうちょっと
振り返り上越国境稜線、遠くは巻機山、その左奥は・・・ 妙高?・・・か それにしても藪が濃い。
越後沢の源頭部は美しいね。
やっと水平になった。 三角点はあっちのピークにある。
もうここからの藪はひどくない。
ナナカマドも赤い実を僅かに残すのみとなった。
三角点に到着、 絶景を見ながらしばし休憩。 10時半、本谷からここまでおおよそ1時間半。
深い藪を漕いで再び来たルートを引き返すのか・・・ どうする。
しばらく迷っていたが意を決して丹後山へ向かうことにし、 今しばらくこの景色を撮ることにする。
同じような絵が続きますが・・・ めった見られない貴重な絵ですぜ。
左下は裏越後沢になる。その昔に対岸の国境尾根からこの裏越後沢を見たことがある。
暖冬の影響で8月になったばかりなのに、大水上から越後沢山の稜線に全く残雪がなかった。
それでもこの裏越後沢には見事にたくさんの残雪がつまっていた。
レンズを望遠に変え、先のコブまで行ってみる。
越後沢中俣尾根の紅葉が美しい。
足元から続く険しい尾根は越後沢右俣の左岸尾根だ。
広角レンズを三角点のところへ置いてきてしまった。 もう一度レンズを取りに戻る気にもならなかったので写真は無しだ。
なかなかこの条件で行けるところではないのに、もったいないことをした。 すごく後悔している。
11時まであと15分をきったぞ。
さてさてのんびりはしていられない。
目指すは遥か彼方の丹後山、越後沢山の山頂を後にして藪のなかへもぐっていきますぞ。
この辺りから潜水開始となる。 よってカメラはザックに仕舞い。
目指すは前方の鞍部。
笹の丈は自分よりもはるかに高く、どの方角に進んでいるのはわからなくなってくる。
下りなのに先へ進めないほどの根曲がり竹の密藪に嫌気が差してくる。
山頂からたかだか500mほどの鞍部までの下りに、1時間ほどかかっている。
鞍部の先にある小さなピークへ登り返すのだが、灌木混じりの密藪ににっちもさっちもいかなくなる。
もういい加減嫌になってきた。 このまま帰れなくなるのかな?おれ・・・
さて、どうにかこうにかピークに出てみたが、その先に広がる台地が確か最も藪が酷くなるところだったと記憶する。
ピークからいったん沢形のように横切る溝に下り、そこから台地へ登り返すのだが、こんなことやっていたのでは永遠に丹後山にはたどり着けそうもない。
ここは仕方がない、チョンボしよう!
溝を東側へ向かって尾根の東に広がる草地に出て、そこを歩くことにする。
で、半分ルンルン気分で中間地点まで来ると小さな楽園があった。 過去に3度通過しているが全く記憶にない。
その時は台地をまじめに藪漕ぎしていたからかもしれない。
前方に見えるあの丘を越えれば丹後山はすぐそこだ。
持参した水はまだ1Lくらい残っているが、もし可能であれば補充したいがどうだろう?
一見きれいそうに見えるが・・・ 止めとこう。
最後の丘の中腹から辿ってきた尾根を振り返る。
すでに膝の皿から脛にかけてアザだらけになっている。藪を漕いでいるとめちゃくちゃ痛い。
おまけに、予定外の藪漕ぎにそれ用の長袖シャツの持参も無く、腕は引っかき傷だらけだ。
最後の丘からは尾根筋を進むしかなくなる。笹の丈は胸のあたりまである。
下りは良いが、最後の登りがなかなか前へ進めないし、無理やり進めばアザが痛い。あと50mくらいで丹後山の登山道に出るのにだ。
以前はまっすぐ進むことも出来たが、やはりここも踏み跡は完全なくなっている。
仕方ないが、ジグザグに最後の50mを進み、ほうほうの体で登山道に出た。時に2時少し前だ。
越後沢山からここまで3時間ちょいのアルバイトとなった。
丹後山の登山道から最後の丘を見る。丘の右奥が越後沢山、その右が本谷山。
見た感じでは美しい笹原だが、丈は胸を越えるくらいあり、見た目ほど簡単には歩かせてはくれない。
丹後の山頂へ向かおうかどうしようか・・・ せっかくだから、とりあえずは山頂を踏んでおくことにする。
山頂への分岐でしばし腰を下ろしての休憩の後、山頂へ向かう。この時間では誰もいない。
小屋を過ぎたあたりで、前方遠くに大水上方面から登山者が一人歩いてくるのが見える。
ちょうどその登山者とは丹後山山頂でかち合った。なんとその登山者は山友のでんさんではないか!
なんとなくここへ来ているような予感がしていたが、 こんな事もあるのだなぁ。
こんなところでそしてこのタイミングで会うなんて、なんだか嬉しくなっちまった。
で、平ヶ岳をバックに「疲労困憊の図」でちょいとおどけてみた。
朝方にはあれほど長かった足も、藪漕ぎの所為でほれこの通り こんなに短くなっちまった。
あとは二人でのんびりと下山。
まだまだ日も高いし、中腹の紅葉を楽しみながら。
2年前のこの時期に歩いた中ノ岳から兎岳への尾根、今日はでんさんがそこを歩いている。
途中のぶなの木に葉っぱはもう枯れ始めてしまっている。
まだまだ美しい
遠く国境稜線へ突き上げる西日差す中尾ツルネから本谷山そして越後沢山を見る。
午後4時過ぎに登山口に下りた。沢沿の空気は体の芯まで震わすほど冷たい。
歩いた距離と高低差はさほどでもないが、久々の藪漕に上半身が疲れ果ててしまった。
このあと二人で麓の温泉につかり、それぞれが家路についた。
30年ほどの昔、山歩きの始まりがこのあたりだったこともあり、自分にとってはとても懐かしい山々だ。
Nikon D700 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR Ai Micro NIKKOR 105mm f/2.8S