◎洗礼者ヨハネ、聖アウグスチヌス、トレンティノの聖ニコラの出迎え
聖女リタ(1371-1457)は、イタリアに生まれ、ウンブリアの宝石とも呼ばれる。聖女リタは、カトリックの信者から最も人気のある聖者で、絶望的な案件や不可能な案件に効能がある聖者であるという。
修道女はイエスと結婚するのだから、処女で修道院に入る例が多いが、聖女リタは、なんと結婚して、DV夫を改心させ、その夫を看取り、二人の息子を育て上げたが、三人とも亡くなったので、修道院に無理を言って例外的に修道女になることができた。
ある真夜中、外から「リタ、リタ」と呼ぶ声がするので、窓を開けて見ると、誰もいない。しばらくして「リタ、リタ」とまた呼ぶ声がするので、今度は家の扉を開けてみると、洗礼者ヨハネ、聖アウグスチヌス、トレンティノの聖ニコラだった。三人の聖者は彼女について来るように言い、ついていくと修道院の前に着き、重い扉がひとりでに開き、リタが中に入ると、三人の聖者は去って行った。
カスシア修道院は、既にリタが修道院の中に入っていることで驚き、三聖者の奇蹟を聞き、修道院受け入れを決めた。
カスシア修道院で1443年の復活祭の前の40日間、ヤコブ・デラ・マルカという有名説教師によるイエスの受難の物語を聞いてリタは感動した。その足でチャペルの十字架のイエス像の前で、「その痛みを私にもお分け下さい」と懸命に祈ったところ、イエスの頭の茨の冠から刺が飛び出して、リタの額に傷ができ、それは生涯治らなかった。この聖痕は腫れあがり腐臭をはなったことから、彼女は独房で8年間を過ごすことになった。
彼女には、その他にも奇蹟譚があるが、気になったのはこの二つ。
三人の聖者が彼女を迎えにきて、修道院に送り届けたのは、彼女の大悟のシーン。2、3柱の高級神霊がお迎えするのは、大悟時の定番。
聖痕が額にできた件は、でき方が珍しいが、そこにあまりこだわらなくてもよいのではないだろうか。イエスの一生の観想法を繰り返す中で、イエスとの一体化が聖痕という形で成ったのだ。古代チベットでは、額の中央のある位置に器具で穴をあける技法があったというが、それですべて問題がなくなったわけでもないのだろうと思う。