◎石を羊に変容させる
(2010-10-15)
黄初平は、神仙伝に出てくる仙人。15歳の時に羊飼いとなった。ある道士がその実直なのを見込んで浙江省の金華山に連れて行き、その石室で40年以上修行に入った。
その兄の初起が山で何年も初平を捜したが出会うことはなかった。後に市中で初平を知る道士に出会い、その道士の案内で、山にいた初平に出会うことができた。
初起が初平に、40年前の羊をどこへやったと問うと、山の東にいるという。初起が山の東を見たが、一頭の羊もいなかった。すると初平は、「いや、いますよ。お兄さんには見えなかっただけですよ。」と答え、「羊よ、立て。」と叱ると、山中の数万の白い石は、ことごとく羊に変じた。
この逸話では、現実は思うがままに変ずることができるものだと思わせるが、その我が思いこそが曲者として、その修行の前途に立ちはだかる。その我が思いは、引き寄せの法則とか、安直な願望実現プログラムをいくらやったとしても、清浄になるわけではない。
我が思いの純粋なところがどこにあるかは、確かに何回もの人生の繰り返しの後に直観できるものだろうが、それは迂遠でもある。日々それを持って生きるのには、日々の冥想という習慣は要るのではないか。
画像は、黄初平のその様子で、雪舟が、南宋時代の画家梁楷の作を模写したもの。