熊野古道を歩くと峠越えが何か所もあります。
険しい峠もあれば緩やかな峠もあります。いずれの峠も山の上りと下りの境が「とうげ」であり、正しく漢字の「峠」の字の通りです。
この「峠」という字は日本で出来た漢字で、「和製漢字」と言います。
そこで、今日はこれらの「和製漢字」について調べました。
和製漢字とは、漢字の起源の中国ではなく、日本で作られた漢字体の文字の事を言います。
通常、国字と呼ばれることが多いですが、国字と云う語には3~4種類の語義があるため、そのうちで日本製の漢字体の字を特定して言っているようです。
例えば、「峠」、「辻」、「笹」、「榊」、「栃」、「畑」、「匂」、「躾」、「枠」などが日本製の漢字体、即ち国字で、和製漢字辞典には2700字を超える国字、国字説のある漢字が掲載されているそうです。
今日はこれらの和製漢字の内「峠」と「躾」についてその成り立ちをご紹介します。
「峠」
「峠」とは、山の坂道を登りつめた最も高いところで、山道の上りと下りの境のために【山+上+下】を組み合わせてできた漢字で、「とうげ」という言葉は『手向(たむ)け』が変化したといわれています。
古くは、峠は国と国の境にあり、災いがその土地に入ってくるのを防ぐのと、旅の安全を祈るのとで、その場所には道祖神が奉られ、旅人たちが『手向(たむ)け』をしたのが由来だそうです。
・熊野古道の「糸我峠(いとがとうげ)」です。
「躾(しつけ)」
「しつけ」という言葉は元々「仕付」と書き、何かを仕立てたり、組み立てたりして動じないものにすることをいいます。
室町時代になると、武家社会で礼儀作法が重んじられるようになり、身につけるということで、こちらも「しつけ」と呼ぶようになりました。
武家の礼儀作法は、心で相手を大切に思い、その思いから自然なふるまいをすることが大切なのだそうです。
そして、それは、身を美しくふるまうことにつながるということで、【身+美】で「躾」という漢字を作りだし「躾(しつけ)」としたようです。
和製漢字は日本人の感受性や生活様式に直結して生まれたものなのですね。
漢字は全て中国から伝わったものと思っていましたが、このような和製漢字が2700字もあるとは、なんだか嬉しい気もしますが・・・。