話の触り
文化庁の国語に関する世論調査からご紹介します。
文化庁が平成19年度に行った国語に関する調査で、「さわり」と言う言葉の本来の意味を尋ねたところ次のような結果だったそうです。
例文:「話のさわりだけ聞かせる。」の本来の意味はどれか?
(ア) 話などの要点のこと 35.1%
(イ) 話などの最初の部分のこと 55.0%
(ア)と(イ)の両方 2.7%
分からない 7.0%
調査の結果、全体では本来の意味である(ア)の「話しなどの要点のこと」と答えた人の割合が3割台半ば、本来の意味ではない(イ)の「話などの最初の部分のこと」と答えた人の割合が5割台半ばだったようです。
平成15年度の調査と比べると、本来の意味である(ア)を選んだ人の割合は4ポイント増え、反対に本来の意味ではない(イ)を選んだ人の割合は4ポイント減少しています。
これを年齢別に見てみると、どの年代でも本来の意味である(ア)の「話などの要点のこと」よりも(イ)の「話などの最初の部分のこと」を選んだ人の方が多くなっています。
中でも、16~19歳、20代、30代、40代、50代では約6割から7割弱の人が (イ)を選んでいますが、60歳以上では (ア)と(イ)の割合が共に4割強とほぼ拮抗していました。
この理由は、「さわり」を漢字で書くと「触り」なので、触れるという語感から「深く突っ込むのではなく、最初の部分だけさらっと触れる」と捉えられる人が多いのではないかと考えられるということです。
「さわり(触り)」は元々浄瑠璃用語で、広辞苑には、 ② ア.義太夫節の中に他の恩曲の旋律を取り入れた個所。曲中で目立つ個所になる。
イ.転じて、方角の各曲中の最大の聞かせ所。「くどき」の部分を指すことが多い。
ウ.更に転じて、一般的に話や物語などの要点、又は最も興味を引く部分。「-だけ聞かせる」
と説明しています。
つまり、別の曲節の優れた部分を義太夫節に取り入れているもので、音楽でいえば曲のイントロではなくサビの部分が「さわり」であるというわけです。
このように「さわり」とは話の聞かせどころ、映画演劇では名場面の見どころという意味であり、要点や最も興味をひく部分を指す言葉です。
なので、「話のさわり」とは導入部分ではなく、メインとなる一番盛り上がるところを指します。
使用する時は気をつけたいですね。