私の故郷、岡山県の南西に位置する笠岡地方には「あんごう」という方言があります。
「暗号」のことではありません。
「あんごう」とは、「馬鹿とか阿呆」という意味であり、「あんごくさぁ(馬鹿くさい)」、「あんごたれ(馬鹿もん)」等のように使用されます。
この「あんごう」と言う言葉は、実は、鮟鱇(アンコウ)が語源のようです。
先日、この方言の語源に関する記事が新聞に載っていました。
故里を離れて半世紀以上経ちますが、子供の頃に使用していた言葉は未だに忘れることはなく、見たり聞いたりすると懐かしくなり、ご紹介することにしました。
その記事では、千葉県の南房総では「蛙」の事を「あんご」と言い、「あんごう」とも言うと書かれていました。
特に「ひきがえる」を指すところもあり、江戸時代の方言集『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』の「ひきがえる」の項に「あんがう」の記述があると言うことです。
蛙が何故「あんがう」なのか?
語源は鍋や鮟肝(あんきも:アンコウの肝臓)でお馴染みの「鮟鱇(アンコウ)」だそうで、室町時代の辞書では「アンコウ」を『足のある魚也」と記しており、当時はサンショウウオの事を指していたようだと言うことです。
そのサンショウウオの顔と酷似していることと両生類と言う共通点から「蛙」の呼び名に転用されたようだということです。
また、同じ時期に「あんごう」が「ぼんやりしている者」「愚か者」の意味も表していたようですが、これはアンコウやサンショウウオの動作の鈍さに例えたということです。
今では三重県、岡山県等に「馬鹿」を表す方言として残っていると記されていました。
驚きました。
岡山県と三重県と言えば数百キロメートルも離れている中国地方と中部地方に属する地域ですが、同じ言葉が同じ意味で方言として残っているようです。
しかし、この両県の中間に位置する近畿地方にはこの方言はありません。
不思議ですね。
私は子供の頃、長兄からよく「あんごう!」と怒られていましたが、この言葉を聞くと、その頃のことが思い出されます。