嘗て流行語として一世を風靡したものの、時代の流れとともに衰退し、いつしか「死語」と言われるようになった言葉はたくさんあります。
今日はそんな言葉の中から「社会の窓」と「理科の窓」を取り上げたいと思います。
何だか、学校の教室の窓のような言葉ですが、そうではありません。年配の方ならよくご存知だと思います。
知人や友人と話している時、或いは会合などで集まった時、突然、「社会の窓が開いているよ」と、指摘されて恥ずかしい思いをされた方もおられるのではないでしょうか?
その時、言われた方はすぐに自分のズボンのファスナーを確認したと思います。
このように、「社会の窓」とは、ズボンのファスナーが開いている事を言い、男性に対してのみ使用される言葉で、「社会の窓」に例えて表現する隠喩(いんゆ)法という表現なのです。
でも、そもそも、ズボンのファスターのことを、何故「社会の窓」と呼んだのでしょう?
調べてみると、この「社会の窓」というのは、1948年(昭和23年)から1960年(昭和35年)まで放送された、NHKラジオ番組「インフォメーションアワー・社会の窓」に由来しているのだそうです。
「インフォメーションアワー・社会の窓」は、さまざまなテーマを取り上げて、その裏側をレポートする社会派の番組だったのですが、”本来は隠れている部分を覗(のぞ)くと、その人間の大切なものが見える”という意味から、ズボンのファスナーをそのように呼ぶようになったということです。
そこから、男性のズボンのファスナーが開いている事を称して「社会の窓が開いている」と言うようになりました。
この「社会の窓」は男性に対してのみ使われる言葉で、女性には使われません。
では、女性の場合にもこのような言葉があったのでしょうか?
当時はありました。
女性の場合は男性の「社会」の科目名に引っ掛けて「理科の窓」と言われました。
しかし、こちらはほとんど普及しないまま消えてしまい、言葉自体を知らなかった人も多かったようです。
超高齢化社会になった現在、高齢者の中に「社会の窓」が開いている方をたまに見かけることがあります。
「社会の窓」や「理科の窓」、現在では死語となっている言葉ですが、どちらも開かないように十分注意したいものですね。