小説はあまり読みません。
理由は自分でもはっきりわかりませんが、映画も、
「ファンタジーもの」は苦手ということと何か関係があるのかもしれません。
面白いから読んでみたら?と貸して頂いたので読んでみました。
浅田次郎著 「王妃の館」。
王妃の館〈上〉 |
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王妃の館〈下〉 集英社 このアイテムの詳細を見る |
初浅田作品でした。
ストーリーは、フランスの高級ホテルを使用時間を分けて
それぞれ2組のツアー客に提供するというドタバタ劇。
物語の終盤。
元定時制高校教師が事業の失敗を苦に自殺を企んでいた老夫婦に、
終戦直前、自己の意思に反し国のために命を落とした
海軍飛行予科練習生の戦友を思いながらこう語りかける。
「人の命はおもちゃじゃない。
だからどんな事情があっても自分の命をおもちゃにするな。
もっとジタバタしろ。迷惑をかけろ。
卑怯者でいいじゃないか。腰抜けでもいいじゃないか。
人間は木石ではない。生き物だ。
だから呼吸をしてこそ値打ちがある。
死んだ英雄よりも生きている乞食の方がましだよ。
私たちは人間という生き物なんだからね。
生きようとしなければいけないんだ。」
ともすると陳腐になりがちなこんなセリフも、浅田マジックにかかると、
涙なしで読むことのできない感動の一言として渋く輝きます。
これが噂の、『晩成苦労人・人情作家』浅田次郎の醍醐味か。
笑い、泣きました。
今日の1曲: Everyday I Write the Book BY Elvis Costello
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Punch the Clock Elvis Costello & the Attractions Rykodisc このアイテムの詳細を見る |