きのうの続きの川越の商家・大沢さん家です。
小江戸といわれるだけあって、啖呵のいいご主人でしたが
独特の言い回しの端々に、この家への愛着が感じられました。
で、説明していただいてびっくりしたのが
写真に収めた「からくりシャッター」。
商家建築として大きな開口部を取って、通り正面に対して開かれているので、
防犯や防火の意味からも、今も昔も「シャッター」的な装置は欲しい。
でもシャッターって、薄手の金属加工と巻き上げ機械など、
近代工業品であることは明らかであり、
この手の装置の普及も、日本の近代化以降にあらわれたものと思っていました。
しかし、精巧な木工技術の粋の国ニッポン。
やはりそういう工夫はあったようなのですね。
駆け足での聞き取りで、本格的に取材という形ではなかったため(笑)
写真は、そういう説明としては不十分なのですが、
鎧戸のような木製の頑丈な上下建具を、上に向かって収納させて
昼間は開けておき、閉店時には降ろして使っていたようなのです。
重量物とはいえ、それを保持させておく仕掛けも木製品で工夫されていました。
建築の側では、そういう鎧戸を収納させるために
太い梁で枠を構成させていました。
まぁ、重いので若干は苦労したでしょうが、
江戸期の男性はキン肉マン系の男が多かったということ(笑)なので、
それほど問題にはならなかったのでしょうね。
ちなみに、江戸期にほっそりとしたなよなよしい男性、
歌舞伎の女形のような男性が美男子とされたのは、
ないものねだりの心理だったということだそうです(笑)。
柱の太いケヤキに一部タテの欠き込みがあるのは、
そのスライドレール的な役割だったようです。
江戸らしく、構造は総ケヤキ造りということで、頑丈な蔵建築を支えています。
床面にはこの鎧戸を受けるように石材が敷き込まれています。
伊豆のほうから運ばれてきた石、というお話しだったように記憶しています。
大名庭園などで、全国各地から運ばれてきた石材を
まるで石の博覧会のように見ることができます。
ああいうのって、江戸城の普請工事のような活発な公共事業で
産業が刺激され、こういう町家建築でもさまざまに活用されたようですね。
全国の石材の生産地ごとにその性能などを比較対照するような
そういう類の性能的審美眼を育てたのは
きわめて日本的な現象だったのではないかと推測します。
ひとつの建築から、いろいろな事が見えてきて
大変に勉強になります。
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