三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

東京世田谷住居、今昔。

2015年12月18日 06時40分31秒 | Weblog


わたしは住宅雑誌を、北海道東北で発行しています。
そのことは必然的に、現代という時代の中で、
人々がシアワセを求めた具体的な形に接するということになります。
家というのは、暮らしの生々しいありようを表現している。
東京で住宅を取材する機会は少ないのですが、
たまたま先日の東京出張ではたくさんの住宅を一度に見られた。
北海道のような積雪寒冷という条件下では、
なによりも住まいは、生存を担保する装置という側面が基本であり、
そういう地域の気候的与条件への対応というのが基本。
一方で東京という「文化」先進地域での住まいは、という興味もある。
ほかの生活文化領域では、田舎に対して都の方が先進性を示すのが普通。
「近頃,都に流行るもの」が、日本人の憧れであるのは、
歴史時間を超えて、わたしたちに普遍的な感覚だと思います。
まぁ当たり前ですが、見ていて気候条件以上に
「社会的な過密集住」という条件の方がはるかに優先しているのが現実。
上の2枚の写真は、同じ世田谷区での住宅の形の象徴的変遷。
言うまでもなく、都市集住が進行したのは人口爆発した
戦後以降の社会的要因ですから、それ以前の気候対応型の
古民家は、温暖地域らしい「夏を旨とした」住まいであります。



こんなインテリア写真を撮影してみると
まことに周辺環境の豊かさが伝わってくる。
通風重視の、ほぼ壁のない空間が大きな屋根の下に展開している。
屋根は重厚な茅葺きで、夏のはじめの梅雨期の湿気を溜め込み
蒸暑の夏に気化熱を発生させて、温度差で通風を狙っている。
こんなほっそりとした柱で構造はやや不安ですが、
屋根が作る涼やかさを第一に考えているということが伝わってきます。
冬場でも南面するこの空間にはたっぷりと陽射しが入って、
建具が板戸に変わるくらいで過ごしてきたに違いありません。
冬の寒さ対応は、この写真の右手に板戸の間仕切り、
土間空間と連続する囲炉裏を囲む空間があって、
「籠もる暮らし」の装置でしのいできたのだと思います。
まことに気候対応という素の表情がわかりやすく伝わってくる。
そういう意味では、下の写真の現代長屋風の3階建て住居も
きわめてわかりやすく現代的集住状況を伝えている。
こういう「対応」というのはあり得べきことなのですが、
しかし生活デザイン的に、美的であるかどうかは、
古民家と較べても、工夫開発の余地があるのかも知れませんね。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする