三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

隈研吾「メーム」再訪

2015年12月06日 05時11分53秒 | Weblog


先日の十勝大樹での学生コンペ取材の際に
このLIXILによる研究施設の基本建築となった
隈研吾さんの「メーム」を再度、訪れて参りました。
この建物の取材的な報告については、
わたしのこのブログの、2012年6月15日と16日版で詳報しています。
http://www.replan.ne.jp/blog2/?p=6910
http://www.replan.ne.jp/blog2/?p=6900
興味のおありの方は、そちらもごらんください。

で、3年半後の再訪であります。正直に言って
「もう一回、行って見たい」
と思える住宅建築っていうのは、そんなにはありません。
個人的にはほとんど数えるほどであります。
そういうなかに、この「メーム」は入っておりました。
この建物は石油化学製品の皮膜や断熱材で構成されています。
20世紀になって生み出された建材です。
人類が産業革命というプロセスを経て、
化石エネルギーを自由に操って社会を作るようになって
石油という資源によって現代という時代を作ってきた。
こういうことに否定的であるという意見はあるでしょうが、
しかし、もはやわたしたちは間違っても
エネルギーを使わないで済む状況に至ることはないでしょう。
再生可能エネルギーにしろ、原子力にしろ、
それらを合理的に使って、
次世代へのバトンタッチを考えていかなければならない。
一方でわたしたちは、人類進化という時間記憶の中にいる。
その間に生み出されてきた住宅デザインの素器のような
そんな記憶も積層している。
こうしたふたつの根源的な思いのようなものが、
この建物を見たり、触れたりすると感受される。
半透明皮膜によるテントの建築に、
シンプルな人類のくらしのイレモノという初源が想起される。


<写真は、右が隈さんで左が東大副学長の野城さん>

この住宅建築を建ててから、
以降、隈研吾さんと主催者LIXILは、この周辺に学生コンペによる
実験住宅群を実作するという企画を推進してきた。
東日本大震災から1年後に建てられたこの建築から
次世代に向かって、住宅建築がどこに向かうのか、
そんな思惟の旅を展開させようとしているように感じる。
いま、この「メーム」に再度行って見たら、
どうやら前日にでも宿泊した人がいたような
排煙装置付きの囲炉裏への使用痕跡と、やわらかな暖房余熱が
感じられていました。
また、2重皮膜の化成素材越しの半透明の壁天井は
なんとも魅力的な室内を構成していました。
これも化成品であると想像されるテントの骨は、
ちょうど古民家の木材のような力感をもたらせている。
また人間の皮膚に触れる足下には、
大きめの自然繊維素材による畳の表皮が敷き込まれています。
「いごこちのいい家」であることは、間違いがありません。








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