三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【仕立てが良い、と多くの人が感じる家】

2016年09月10日 07時47分33秒 | Weblog
世界の多くではデベロッパーが開発する「住宅地」に建てられた住宅を
現物として確認し、さらに買い主の立場に立つアドバイザーを使って交渉させて
ユーザーは、いわば「建て売り」住宅を購入するのが一般的。
その間で住宅は「資産」としての限りなく透明な価値判断を市場で見定められ
その上で流通するようになっている。
だから「資産価値」が維持された市場が形成されている。
それに対して日本の住宅は世界の「ふつう」とは違って、
戸建て注文住宅という形式が主流になっている。
ご存知のように、買った途端に大きくその価値が減衰することを
なかばは認識した上で、それでもユーザーは住宅を手に入れている。
そうではあるけれど、その「市場」のなかでの「価値」について、
ユーザーはやはり、相当に「厳しい目」を持って選別しているのだと思う。
そういった厳しい「価値尺度」ってなんだろう、ということは、
当然多くの関係者は、それこそ血まなこになって探し、競争している。



そんな「競争」に、地域工務店たちが積極的に打って出たのが
神戸の郊外で展開している「里山住宅博」という企画。
新興住宅地でのデベロップメントは、地域工務店のような小資本では
なかなか自力では成しがたく、大手デベロッパーは安全策優先で
住宅企業としては販売力のある大手ハウスメーカーと組むのが一般的。
そういうなかで、地域工務店と地域の企画会社が取り組んでいる
ユニークな土地+住宅販売の試みであります。
以前から興味を持っていたので、先日の関西行きのときに、
時間を作って見学して来た次第です。
ただ、今現在でも20棟以上が建設されているようで
すべてを見学することは出来ないので、センターハウス的な住宅と、
「もうすでに売れた」という住宅の2軒に絞って見学しました。





で、この住宅が「売れた」フクダロングライフさんのモデルハウス。
なぜこの家を見たかというと、この住宅地の作り手たちに
「いちばん面白そうな家は?」と聞いて、すぐに名前が出た家だったから。
で、それは一般ユーザーの評価としても「すぐに売れた」という結果に繋がった。
どうしてなんだろう、という興味ですね。
外観や配置計画などでは目を引くほどの個性は感じない。
でも、道路側に気になる屋根の掛かった部分が。
玄関に向かっていって振り返ると、どうもあいまいな中間領域。
屋根は掛かっているけれど、床は土間まんま。
聞いてみたら、近隣公共機関駅からの距離があって、駐輪スペースが不可欠で
それをきちんとデザインしてあったという次第。
目を引かせる外観印象よりも暮らし方の方を重視と思わされる。
一番最初の写真は、ダイニングの様子ですが、
食卓の窓辺に、腰掛けスペースが装置されていた。
いろいろな収納としても機能しているけれど、主用途は「まどろみ」。
こっちは南面していて、冬の日だまりの気持ちよさを楽しむ居場所とのこと。
聞いたら、住宅性能としても熱損失計数(Q値)で1.5と、北海道の基準並み。
暖房も、床下エアコンを装置するなど、細やかな気配りが感じられる。
というようなことから、段々と「仕立ての良さ」というフレーズが浮かんできた。
メインの居間からは北面して里山の眺望が得られる。
窓はもちろん3重ガラス入りの断熱樹脂サッシがしつらえられている。
その居間にはデッキが連続していて、ごらんのような眺望。
ユーザーの顔の見えない「建て売り」で、初対面のユーザーに、
「仕立ての良い暮らし」がまっすぐに伝わったのではと思った次第です。
コメント
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