さてきのうは、表題のようなシンポジウムが開かれました。
一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)から刊行された
「住宅用機械換気設備の計画と性能評価」と題された「ブックレット」を題材に
その内容まとめ、執筆作業に中心的に関わられた、
国交省国土技術政策総合研究所(国総研)・澤地孝男建築研究部長
高知工科大学准教授・田島昌樹先生をお迎えして、
これまでもこの換気のテーマで多くの実績を残されてきた
国立保健医療学院建築施設管理研究分野・総括研究員の林基哉先生と
北海道の立場から、福島明北海道科学大学教授とでのシンポジウムです。
林先生も、北大荒谷先生門下で福島先生とも同窓という経緯もあり、
北と南の研究者が換気というテーマで率直に語り合ったかたちでした。
反響は大きかったようで、日本全国からたくさんのみなさんが集まっていました。
換気のテーマは人体の健康維持の基本要件でありながら、
寒冷地においては同時に、暖房による熱が失われていく要素であり、
そのアンビバレンツな要素の「最適解」をさがすことでもある。
このことは澤地先生の発言でも、非常に重要なこととして語られていました。
換気はたくさんすればいいというものではなく、
まさに「最適」な領域で確保し、建物の長期的維持を可能にするものという
基本的な追求テーマだとされていました。
田島先生からも、機器のメンテナンス維持の具体的指摘もあって、
この換気が、住宅性能の縁の下の力持ち的な役割を果たしていることを
わかりやすく明示的に知らされたと思います。
さらに澤地先生からは、日本国家がCO2削減について
2013年基準年に対して2030年では40%削減を国際公約していること。
その半分20%相当は「電力の低炭素化」が基軸的に取り組まれ、
もう半分を住宅を主戦場にして削減する目標開示がありました。
たしかに換気もそういった大きなテーマの一環だと思います。
林先生は北海道独自の「換気」手法としての内外温度差換気、
パッシブ換気とその発展形である「ハイブリッド換気」に触れられていました。
これは寒冷地では効率が高いけれど温暖地では効率が得られにくいことに
配慮した、自然換気と機械換気の併用的なプラン。
注目に値する発表だと思われました。
北海道側の立場として福島さんからは、討論会の冒頭で、現状の0.5回の
換気回数指標について、事実上「気密」が省エネ基準から消えた現実の中で、
経験的には0.1回程度に相当する「コントロールできない換気」を
考慮に入れるべきとの重要な指摘もありました。
わかりやすいデータとして一番上の図のように、「気密測定」時には
建物の「隙間」を目張りして測定するのですが、目張りしない、
いわば建物が実際に利用されている状況では、気密化されていない建物ほど
この「コントロールできない換気」割合が高くなっているデータも示された。
その他、このような換気論議のベースとして
繰り返し1次エネルギー計算プログラムが論及されることについて
その「暖房設備」選択が事実上、「部分間歇暖房」しか選択できないことが
会場有志から鋭く指摘されていました。
このプログラムが持っている問題点は、寒冷地の「全館暖房」の常識とは
かなりの乖離があって、想像力が働きにくくなっている。
また、室内の空気を「回収」してきて汚染空気を「排気」させる1種換気の場合、
部分間歇暖房で部屋間で温湿度に違いがあるということでは
はたして問題無く制御環境を形成するのか、とか
そういった疑問、良く整理できない部分も印象として浮かび上がっていました。
やや専門的すぎて一般人的には明確な把握の難しい「換気」ですが、
家庭でのエネルギーコントロールには欠かせない領域なので、
今後とも、大いに知見の進展を期待したいと思いました。