ブログ開設3周年企画
⑥サラダ記念日がカレー味の唐揚げ
★★2018年4月29日★★
平成28年8月に毎日新聞高野山夏期大学で俵万智さんの講演を聞く機会をえました。その時に『サラダ記念日』のサラダは実は彼のお弁当に入れたカレー味の唐揚げだったと驚きの打ち明け話、実際に彼が美味しいと言ったのはカレー味の唐揚げの方ですが、唐揚げでは短歌にならないので一緒に入れたサラダに変えたそうです。
その講演を随想に纏めましたので、紹介します。
サラダ記念日 (平成28年8月の講演です。)
「この味がいいね」と君が言ったから7月6日はサラダ記念日
『サラダ記念日』
24歳だった俵万智さんは誰にでも解り易い画期的な口語短歌の歌集『サラダ記念日』で、鮮烈な歌壇デビューを果されました。「この味がいいね」と言う「サラダ記念日」の歌について、2人の高名な学者の方から「万智さんは教養が有りますね」と言われたそうです。
一人の方は、芭蕉の「文月の句」を踏まえていると言い、他の一人は、「サラダ」という言葉は、シェイクスピアに出てくる台詞だと言うのです。
万智さんは何の事か解らなかったそうです。
芭蕉の句? シェイクスピア? リコはそれがとても気になりましたので調べてみました。
《7月6日》に付いて、
文月や六日も常の夜には似ず 芭蕉
明日は七夕だと思うと七月六日の夜もいつもの夜とは違っているように思われる。
《サラダ》に付いて、
シェイクスピアの史劇『アントニーとクレオパトラ』で女王クレオパトラの台詞にサラダ デイズが出てきます。サラダ デイズ・・・サラダの日々とは未熟な青年時代の意味です。
何気なく使った言葉が東西の天才の句に相応していたとは、彼女の短歌の才が光ります。
さて「サラダ」の歌の生まれた背景に付いての裏話。日付については、7月7日は、七夕と重なり記念日としてのインパクトに欠けると考え、普通の日、つまり1日前の6日を選んで歌にしたそうです。
「この味がいいね」と彼が言ったのは、実際は、カレー味のから揚げだったのです。しかし万智さんがいつも作っていたから揚げを、その日はカレー味で作ってみたら、彼が大変喜んでくれて嬉しかったそうです。
歌を推敲する段になって、から揚げをサラダに変えられました。皿に盛られたサラダが美しく「さ音」で響きも良かったそうです。
恋愛の歌は「事実(から揚げ)」をそのまま作っては駄目な場合が多く、「真実(嬉しい)」を詠うために色々と工夫をするそうです。何とも奇抜な推敲の仕方でリコは大変に驚きました。
一方で、子供は日々成長していくので、子育ての歌は刺身のように鮮度のある内に歌にするそうです。
平成15年に万智さんは男児を出産されました。愛称をたくみん君といいます。
バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ
そうだバンザイ生まれてバンザイ 『生まれてバンザイ』
息子さんの幼稚園入学を機に東京から仙台に引っ越しをしましたが、平成23年3月11日の東日本大震災に遭遇し、西へと避難してついに沖縄の石垣島に辿り着きました。
子を連れて西へ西へと逃げていく
愚かな母と言うならば言え
『オレがマリオ』
石垣島が気に入って5年も住む事に成りましたが、今春、息子さんの中学入学を機に宮崎に転居されました。正に孟母三遷ですね。
何よりも大事なことと思うなり
この子の今日に笑みがあること 『風が笑えば』
54歳の万智さんは、中学生の息子さんと高野山に来ておられました。
私は、感性に富む息子さんの成長を楽しみにしています。