リコの文芸サロン

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宮中歌会始の儀②

2021-12-27 | 短歌
令和3年の入選者の東京の川坂浩代さんの他にリコの属している「あけび歌会」の会員さんの京都市の大石悦子さんも平成24年(2012年)の歌会始の儀で入選されました。

お題「岸」
とび石の亀の甲羅を踏みわたる対岸にながく夫を待たせて

京阪電車の終点の出町柳駅の、前の鴨川の中に置いてある飛び石のことです。







リコはまだこの時はあけび歌会に入会してなかったので入選時の会員さんの歓の様子は知りませんでした。

大石悦子さんが
「歌会始体験記」を月刊のあけび誌に書かれました。

平成24年3月号から抜粋します。
❴今年の歌会始の儀は1月12日、正殿松の間において、「岸」のお題で執り行われました。この「岸」のお題は図らずも東日本大震災の情景と重なって、感慨深いものとなりました。思いもかけず予選者として出席することになった体験を、今一度辿ってみたいと思います。

昨年12月6日に、宮内庁から最終候補に残っていると報告があり、12月12日に預選者決定通知を受けました。そして、マスコミ発表は12月26日になされました。
その期間は怒涛のような日々で、喜びよりも戸惑いの方が強かったと思います。
歌会始はかなりの重圧でした。
マスコミの電話取材、自宅でのインタビューや撮影と、馴れないことの連続で、神経を使う事が多かったからです。想うことを伝える難しさも、また学びました。ただ、記者の方々には、根気良く話を引き出して頂き、有り難く思っています。
(中略)
天皇、皇后両陛下には、自己紹介の後、歌の背景や想いをお伝えしました。鴨川には、対岸に渡る亀の飛び石があること。先に渡った夫の姿を見て、待っていてくれる人がいる幸せと同時に、対岸で待つ行為に、死者と生者の関係性も重なり、しみじみとした感情が湧いたと申し上げると、大変共感して頂きました。
 選者懇談会では、亀の「甲羅」まで詠んだ具体性が良い、対岸の扱い方が個性的である、下の句の表現がなかなか手足れであるとの、評を受けました。
(後略)❵

★リコの補足説明
 あけび歌会関係者からは召人として三師が皇居に参内されました。 
☆昭和39年「紙」あけび歌会創始者の花田比露思•主幹。
ふるさとの清き流れに今もかも翁はひとり紙漉(す)くらむか

☆昭和41年「声」、清水比庵
ほのぼのとむらさきにほふ朝ぼらけうぐひすの声山よりきこゆ
 
☆平成19「月」、大津留温•主幹
天の原かがやき渡るこの月を異郷にひとり君見つらむか

会員さんは3名が入選しています。
☆昭和61年「水」、横山隆
源へ黄河辿りし調査隊水誕生の青きを捉ふ

☆平成24年「岸」、大石悦子
とび石の亀の甲羅を踏みわたる対岸にながく夫を待たせて

 この年の歌会始の儀の平成24年は(2012年)2011年3月11日の東日本大震災の翌年になります。
大石さんは川岸で対岸のご主人と向き会われた時に震災の犠牲者に思いを馳せられたのでしょう。

☆令和4年「窓」、川坂浩代
来年、1月18日の皇居の歌会始の儀で披講されます。

大石悦子さんの「岸」の詠進歌にはこんなに深い思いがあったとは知りませんでした。
つくづく良い歌を私も詠みたいと思います。



コメント (9)
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