エッセイ集『花幻想』(未来社刊)の、呉 美代(くれ みよ)さんの感性に惹かれ、詩集(日本現代詩文庫)を買った。
一輪ぼったりと落ちた
そのときつばきは
自分の行為の重さにはっと気づいた
ふと投げた私のひと言が
あなたの沈黙の池の風景を
こわしてしまった時のように
(「つばき」)
呉さんの詩は初めて読んだ。詩は、エッセイよりもさらに鋭角的な感性の発露。四方への表面張力のみなぎったものであった。
つばき ガラスの壺 玉ねぎ などが好きだ。
人はみな心の中に
ガラスの壺をもっている
そして それがいつ割れたかも
どこへ破片が飛び散ったかも
気づかないのだ
(「ガラスの壺」 一部抜粋)
自らの中で、知らない間に割れてしまったガラスの壺。その破片の行方に不安を募らせ、傷つく心。そんなときは誰にでもあるのだが。
私の中のその破片は、何重にもコーティングされ、ある時ポーンと何処かへはじかれて飛んでいった。どうでも良くなったのだ。