癌春(がんばる)日記 by 花sakag

2008年と2011年の2回の大腸癌手術
   ・・・克服の先に広がる新たな春を生きがいに・・・

健八流(松前)の二十三夜塔へのご案内

2020年10月18日 | 登山・旅行

 松前町の江良地区に河口を持つ大鴨津川上流に、珍しい名前の健八流(けんぱちながれ)(539m)という山がある。2回登っているが、その山頂手前の516ピークに「廿三夜」と彫られた月待信仰のものと思われる、慶応元年の石塔とその近くまでの昔の道の跡を見つけている。

 この「月待ち信仰」とは、江戸時代初期から末期に掛けて全国的に広まっていた民間信仰であり、「講中」仲間が特定の月齢の夜に集まり、飲食を共にし、月の出を待ち、お経を唱えながら悪霊を追い払うなどの月待ち行事を行ったものである。月待塔はその記念として造立した塔である。

 月待信仰は、地域によっていろいろあるが、二十三夜が最も盛んで、全国に広まっている。実際、本州の旧街道歩きでも、「二十三夜」と彫られた石塔をあちこちで眼にしている。

健八流登山1回目 http://sakag.web.fc2.com/kenpatii.htm

健八流登山2回目 https://blog.goo.ne.jp/sakag8/d/20191222

 8月末に、上記のページを目にしたという松前町の佐藤学芸員から、「町内にこのような月待信仰やその石塔があることは初めて知りました。現地へ行って、ぜひともそれを見たいのですが、自分のような山の素人でも行けるでしょうか?」というメールが入った。自分的にも興味もあったし、「お役に立てるのであれば、ご案内いたします」ということで、10月の案内を引き受けていた。向こうからも「それまでに、町内の二十三夜講のことについて、調べておきます」とのことだった。

 それが、今日のご案内となった。向こうの都合で、9:30に松前の道の駅で待ち合わせて、現地へ向かった。

 車の中で、佐藤学芸員から、これまでの調査結果をいろいろ詳しく聞くことができた。さすが、学芸員である。

・健八流はかつて三夜山と呼ばれていた。
・現在でも旧暦九月二十三日(今年は11月8日の予定)に二十三夜講をする集落(茂草地区)がある。朝日地区には、二十六夜講が残っている。
・しかし、茂草地区の人も朝日地区の人も、この二十三夜塔のことは知らない。
・江良地区には月待信仰の歴史はない。この石塔のことを知っている人もいない。
・松前城下には、この月待信仰の歴史は見当たらない。
◎大正7年の記録に、今日車を停めた辺りに、七番山という字名があり、6戸の集落があった。炭焼きを生業としていたようだ。その手前に江戸時代に建立の山神神社があったという記録もある。
※この集落の二十三夜講の可能性大である。この集落が江戸時代からあったと考えられる。
 
 
 <登り>10:15入山口~11:25 516ピーク(1時間10分)。周りの笹刈り・拓本作成作業50分。
 <下り>12:15 516ピーク~13:10入山口
 
 
昔のこの二十三夜講の参拝道と思われる踏み跡を辿る。
 
拓本採取作業を初めて見させていただいた。
たわしで汚れを落す→紙を貼る
霧吹きで紙を濡らす→固く絞った棒状のタオルでなぞってピッタリ張り付ける。
 
拓墨をタンポンに付けて、丁寧に上からなぞる。
 
完成→これを剥がして持ち帰って、低温でアイロンをかけるらしい。
 
この二十三夜等に刻まれた文字
廿三夜
慶應元年丑五月二十三日(旧暦)
講中拾人(10人の講中)
甚吉(多分これを作成した石工ではないかとのこと)
正五九(正月、五月、九月→講を行う月)
 
 石塔に使われている石は、松前城の石垣と同じ緑色凝灰岩。それも質の良いものとのこと。産出は松前本町の裏にある石切り場。
 
 台座の石は、モルタルが使われているので、上磯セメント工場ができたあとのものである。
 すなわち、慶應元年に石塔は造られてここに設置されたが、台座はのちの明治~大正年間に持ち込まれたものであろう。
 
 この場所から大鴨津川を挟んで、東の方向に大千軒岳と前千軒岳の連なりがはっきりと見えた(撮ったつもりが写っていなかった)。その方向の展望が開けているので、そちらから昇る月を眺めたものと思われる。
 

 記念撮影をして下山開始。

この山は3回目だが、いろいろな疑問が解明され、拓本採取作業も見学できて、学びの多い山だった。



4 コメント

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Unknown (ken-ayumomo)
2020-10-19 20:02:04
『月待信仰』初めて知りました😅
勉強なります😄
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ken-ayumomoさんへ (sakag)
2020-10-20 06:41:31
私もこの山でこれを目にするまでは知りませんでした。
さすが、歴史の古い松前ならではですね。
北海道にはほとんど入っていないものと思われます。
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石碑は残るものですね (sawtto)
2020-10-20 08:58:28
sawttoです。
150年以上前の石碑ですね。
石に彫られたものというのは年月がたっても残るものなんですね。
いいものを見させていただきました。ありがとうございます。
一度機会をみて訪れてみます。
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sawttoさんへ (sakag)
2020-10-20 16:22:53
質の良い石を使っているのと、周りが樹木で覆われているので、風雨から守られたこともあると思います。
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