
(寝室には30㍗のサークライン一本の器具、それを見たばっかりに)
『こんにちわ~、ありがとうございます。さっそくお持ちしましたよ』と声を掛け掛け上がります。
Sさんちへ、照明器具を一台届けに訪ねます。
『Sさ~ん、ここんところえらい暑い毎日ですね。秋なのにちっとも涼しくになりませんね。いつまでも夏服を着てます。今日はなんちゅう蒸し暑いことですか、暑いので上着を脱がせてもらいますよ』と、上着を工具箱の上に置きますね。
Sさんちはお年寄りです二人して、仲好く仕事はカバンの作業、ミシンでカバンを縫いますね。
そのカバンの仕事も、ご主人が体を悪くして少し前からお休みですね。それでも、いつも仲良く仕事場で、二人でゆっくりされてます。
『Sさん、カバンの仕事がなくってもいつも仕事場ですね』と尋ねると、「落ち着くんだわ、母屋の中より仕事場の方が涼しいし、周りは雑然と散らかっているけれど、妙に落ち着くんだわ、居心地が好いんだわ」とおっしゃいますね。
『仏間の電気、時々なんだけど点かん時があるそうですね。一台張り込むって電話をいただきお持ちしましたよ』と、和風でスリム環の蛍光灯を箱から出して話します。
隣の寝室をチラッと見ました。えらい古いタイプの器具が吊り下がっています。
『ありゃ~、この器具珍しいですね。30㍗のサークラインが一本だけです。30㍗2本の器具なんてもう遠い昔になくなって、今では30㍗と32㍗の2本組が普通なのに、30㍗一本だけは珍しいですね』と話します。
「アトムさん、今日買った器具は仏間に付けてちょうだい。もうしばらく使うから、外した器具は隣の和室に付け直しておくれ。和室の器具はね、寝室へ付け直してよ」、「それからこの一本の器具はね、2階の物置に付け直してもらえるかな、いろいろ云ってすまんね~、一つ買ったばかりにようけ頼んで」と申し訳なさそうに云いながら、トコロテン式のように照明器具の引っ越し作業を頼みます。
『ハイ分かりました。Sさんちは古い配線です。部屋によっては、引っ掛けシーリングの付け直しもしなくてはなりません』と説明しながら取り付け作業、一台だけ容易(たやす)く終わると思っていたのが、4台の照明器具の引っ越し作業となります。本日は、思わぬ天井向いての作業で、汗だくだくの暑さです。
「スマンことでしたね、いろいろ頼んで。お金を払わせてもらいます」とテーブルで、
『ハイ、暑いですね、お金をいただく前に、前の扇風機を点けてもいいですか』と断って、スイッチを入れます涼みます。
『ありがとうございます。〇〇円です。電話で云った通り、器具の値段だけにしておきます。器具の引っ越しはオマケです』、
帰り際、トラックの中から奥さんに、『あっ、忘れていました。さっきこれも取り替えてよと云われた、二つのナツメ球、この代金は暑さでうっかり忘れてました。もういいですわ、これもオマケにしておきますよ』と、ニコニコ笑顔で帰ります。
《暑すぎて 金の計算 できません》