ブクログより
関寛斎という実在の人物の妻「あい」に焦点を当てた物語。
関寛斎は一介の百姓のせがれから、苦労を重ねて医者となり、徳島藩の藩主の侍医となり、武士の身分を手に入れるまでになった。
そんな寛斎を、陰に日向にただひたむきに支え続けるあいは、江戸時代の女性にしては珍しく、ただ夫に黙って使えるだけではなくて、進路に悩んだり、ためらったりする夫に、きっちりと自分の意見を述べる強い女性。
苦難の末、人々の厚い信頼を得て、士族の身分まで手に入れて、子供たちも立派に育て終えて、ゆっくりするのかと思えば、なんと蝦夷地の開拓に行くという寛斎。
無医村に医者として行くというのならわかるが、その老体で、いまさらなぜ鍬を振るわなくてはならないのか・・・
それでも、あいはその考えに賛同して、ついて行くのだ。
二人の、清すぎるそして真っ直ぐすぎる生き方に、私は少し息苦しさを感じた。
人間臭いところがないのだ。疲れた~と言ってちょっと腕枕で身を横たえる、そんなふうな息抜きもなさそう。
今回はあいの目線で書かれた物語なので、寛斎の思いが今一つ掘り下げられていないが、寛斎については、徳富蘆花や司馬遼太郎が書いているらしいので、機会があればそちらも読んでみたい。
わたしには寛斎さんの妻は務まりません。言うまでもないことですが・・・
あい / 高田郁
★★★☆☆