できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「外部委員」自身の責任・呼んだ側の責任

2006-12-09 13:23:09 | 国際・政治

もうひとつ。市立青少年会館の問題に限らず、大阪市の行財政改革のあり方そのものについて、今、どうしても言っておきたいことがある。

今、「市政改革本部」や「市政改革推進会議」など、大阪市の行財政改革の基本構想をつくるところに、経営学や都市政策、財政学などの研究者が「外部委員」としてたくさんかかわっている。こういった人々と、その人々を呼んできた大阪市長以下、市政の上層部にあえて、私は言っておきたい。

まず、今、実行に移そうとしている行財政改革の計画によって、明らかに不利益をこうむる市民層がいた場合、その市民層の「痛み」に、あなたたちはどのように向き合うのか。「痛み」をこうむった側からの抗議の声、苦しみの声などから、あなたたちは「逃げる」ような卑怯なマネはしてほしくない。

本当にどうしてもこの計画を実施することが必要で、そのためにはどうしてもある特定の人々のところにしわよせが及ぶのであれば、市政上層部及びプラン作りにかかわった外部委員自らが、まずはその人々のところに行き、事情をていねいに説明するべきである。

そして、その場でわびるものはわび、罵声を浴びせられ、怒鳴られ、非難・批判を受けることに、あたたたち自身がまずは耐えてほしい。それが本当に「誠意ある対応」であろう。

逆にいえば、そういうことがイヤなのであれば、さっさと外部委員など辞任すべきであろうし、外部委員にそこまで迷惑をかけてはいけないと思うのであれば、市長以下、市政上層部が率先してこの「泥をかぶる」ような役割を引き受けなければならない。そうでなければ、本当の意味で、行政が「説明責任」をはたしたなどとはいえないのではなかろうか。

本気で行財政改革に取り組みたければ、あるいは、自分たちがやろうとしている行財政改革プランが大事だと思うのであれば、市政上層部及び外部委員として、ここまで「泥をかぶれよ」といいたい。安全地帯で守られて、書類だけ見てモノを言うようなこと、するなよといいたい。そして、そういう場面で、あなたがたの人間としての良心、研究者として、あるいは行政の責任者としての倫理性・道義性などが問われているのだ、とここで言いたいのである。

少なくとも、私は今はこういった人々に反対する立場であるが、今まで青少年施策を作ってきた側の研究者として、現場職員やNPO関係者、子どもや保護者、地域住民などとともに、「泥をかぶる」仕事をしている。それは、いくら苦しい状況にあっても、最低限、こういった人々とこの数年間作り上げてきた信頼関係を守りたい、「仁義」を通したいという、その一心からである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

もっと研究者から声を挙げる必要性

2006-12-09 13:04:07 | 国際・政治

さっそくだが、いきなり本題から書き出す。

大阪市の行政には、例えば、青少年施策の分野には私など教育や臨床心理などの研究者が、行財政改革のプラン作りには都市政策や経営学、財政学系の研究者が、人権施策にはこれまた人権関係の研究を続けてきた研究者が、それぞれ「専門家」としてかかわっている。

こういった人々は、みんなそれぞれ、いったい、いままで、あるいは今も、自分がどういう立場として、どんな考えを持って大阪市の行政改革にかかわっているのか。きちんと意見を述べる必要があるのではないかと思っている。

例えば、私はどこかで書いたとおり、これまで大阪市立青少年会館12館の「ほっとスペース事業」の運営協議会の委員としての仕事などを通じて、大阪市の社会教育のあり方、青少年施策のあり方に対して、社会教育行政や各館の職員・NPO関係者・地域住民・他の研究者や法律や臨床心理などの専門家、そして子ども・若者やその保護者、ボランティアなどと、いろんな関係を取り結んできた。

また、こういった人たちと、この数年間、青少年会館の現場を少しでもいい形に変えていこうと、みんなでいっしょに努力してきたという思いがある。そして、みんなの努力があって、ようやく、「課題を抱える青少年の居場所づくり」や「放課後の子ども・若者支援」など、行政と民間のパートナーシップのもと、多様な青少年社会教育の実践が展開できる場所としての青少年会館ができてきた、という自負もある。

だからこそ、今年8月の「地対財特法期限後の調査・監理委員会」が出した「まとめ」にも到底納得がいかないし、10月の市長方針案も監理委員会の「まとめ」を若干手直ししただけであるとしか思わなかった。そして、11月末にあらためて出した市長の案も、この3ヶ月間なにも変わっていないから、やはり、8月末以来、「こんな案、基本的にはダメだ」という思いは、こちら側としてもぜんぜんかわらない。

そういう風に、私は個人的に、これまでの研究や実践活動をふまえて自分の立場をはっきりと示し、「おかしいものはおかしい」といってきた。しかし、一応、自分の原則的な立場をきちんと示した上で、今後「現実的」に、いろんな事情を考えるとこうせざるをえないのでまずは妥協した上で、そこからさらに次の手を考える、ということは、当然ありうると思っている。

しかし、今まで研究者の立場から、大阪市の青少年施策や人権施策に関わってきた人々はたくさんいると思うのだが、その人たちは今、どこで何をしているのか。例えば「市民の会」の活動に協力している研究者も少数だし、署名の呼びかけ人になった人も少数。

「いったい、あなたたちは今、どこで何をしているの?」

「あなたたちが一生懸命作ろうとしてきた、大阪市の青少年施策や人権施策は、いったいなんだったの?」

「あなたたちの考えを手がかりにして、現場でいろんな活動をしてきたNPOやボランティアの人々、地域住民の人々、子どもや保護者、そして行政職員などが今、苦しい状況を打開しようと一生懸命動いているときに、あなたは今、どこにいて、何をしているの?」

私ははっきりと、そう問いかけたい気持ちでいっぱいである。今こそ、これまで大阪市の青少年施策や人権施策、社会教育・生涯学習、児童福祉といった行政のいろんな分野で、プラン作りにかかわってきた、あるいは現場での諸実践にかかわってきた研究者は、何か、自らの立場をふまえて発言をしなければいけないのではないのか。

あるいは、もしも公に発言できないのであれば、せめて、「あなたたちが今まで何をしてきたのか?」ということを、本来の仕事である研究の分野で、きっちり総括しなければいけないのではないか。でなければ、私としては、研究者としての現場職員、NPO、地域住民、子どもたちなど関係者への「仁義」が守れないと思うのだが。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

だいぶん間が空きましたが。

2006-12-09 09:59:21 | 私の「仲間」たちへ

この間、例年よりも1ヶ月以上早まった学生の卒論提出期限のため、ゼミ学生の指導に追われて、約2週間近くブログの更新ができませんでした。

本当はこの間に、例えば11月末、大阪市長が10月の方針案をそのまま実行するような、そんな方針をあらためて出してきたので、それについていろいろ言いたいこともあったのですが、卒業がかかっている4回生のゼミ学生を前にして、それはなかなかできませんでした。仲間のみなさんには、大変申し訳なく思っています。

しかし、その間にも、「市民の会」のみなさんは着々と大阪市の青少年施策に関する署名を集め、市民からの要望書とともに、大阪市長・市議会議長宛てに提出できるよう準備をすすめていると聞いています。私は署名を集めただけで、市長・議長宛に持っていくところまでまでまだ手が回りませんが、よろしくお願いします。うまくいくことを期待しています。

一方、私も、「市民の会」のメンバーがかかわっているある団体の機関誌の12月号に、8月末の「地対財特法期限後の調査・監理委員会」が「まとめ」を出してから10月末の時点までの大阪市長側の動き、反対・抗議の意志表示をした人たちの動きなど、一連の経過をまとめ、市長方針案の問題点などを指摘した文章を掲載させていただきました。これは主な内容としてみたら、先月の「市民の会」での講演内容とほぼ同じものです。

また、今後も継続して、同様の原稿掲載依頼があった場合は、受けるつもりでおります。こうやって、この間の市長側の動き、抗議・反対の意志表示の動きを、すべて「歴史的」な資料として「残す」作業を続けていこうか、ということも考えております。特に、国立国会図書館に所蔵されるような学術雑誌に論文の形で、この間の経過も残せたらいいなぁ、ということを考えております。そうすると、この間の市長側の動き、抗議・反対の意志表示の動き、その両者に対する私のコメント、これらはすべて、歴史的に後々まで残りますので(もちろん、歴史的に残った文書を、あとの世代にどういう風に読んでもらうか、という課題はありますし、私らの願う方向で読んでもらえるとは限らないのでが。しかし、今まで青少年会館の事業とか、大阪市の社会教育にかかわってきた研究者なら、「他で動けないなら、せめてこのくらい、やれよ~!!」と言いたいところです)。

さらに、今までやりかけて途中で止まっていますが、大阪市議会における青少年会館関連の議事を、今年度だけに限らず、過去にさかのぼってふりかえり、「誰が、いつ、どういうことを言っていたのか」ということを、きちっと検討する作業もしていきたい、と思っております。

私は個人的に、市議会各会派の意向よりも、議員個人の意向に注目したいと思っていますので、「こういう議員が青少年施策に理解がある」「こういう議員は子どもの人権に理解が深い」「こういう議員は子どもの問題に熱心だ」という形で、できるだけ「いいことやってる・いいこと言ってる議員」を中心に、調べたことは何らかの形で紹介していきたいですね。

もちろん、これからも大阪市役所・市教委側から、青少年施策に関連して次々に方針等が発表されることですし、これに関連してマスコミの報道もあるでしょうから、それに対するコメントも出していきたいと思います。

そして、市長側は今までの経過のなかでの市民・利用者向けの説明不十分な点、理解を得る努力の足りなかった点を認めるコメントを先月末に出しております。また、今後、10月の市長方針案を実施すべく、市内12地区の青少年会館の利用者や地域住民に向けて、説明会を開催するようなことも行われると思います。そこで、市内各地区で行われる説明会でどういう風に市長方針案に対して批判し、どういう要望を出していくのか。この点についても、何かお手伝いできることがあればさせていただきたい、と思います。

ということで、これから活動を再開しますので、どうぞよろしく。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする