◎下記の内容はもうひとつのブログにも書いたことですが、とても重要な話なので、あえて転載しておきます。また、下記の内容は、これからの大阪市の社会教育・生涯学習のあり方や、学校内外での人権教育・啓発のあり方、さらには青少年施策のあり方にも深くかかわる論点を含んでいると思っています。そのつもりで読んでください。
今日はちょっと、政治的な問題と教育の問題を関連させて論じます。といっても、例の「教育再生会議」に直接関係するわけではありませんが、あの会議が忘れている大事な論点について書くつもりです。
このブログを見ているみなさんもテレビのニュース等でご存知のとおり、国会のすったもんだの審議を経て、「国民投票法」案が可決しました。ということは、いくつかの付帯決議のついた部分についての修正があるにせよ、今後、何年か先には国会で現行憲法改正の発議を行い、国民投票を行うための手続きが、一応、なんだかんだといいつつ整ったことになります。
で、ここからが問題。一応、日本という国家は国民主権と代議制民主主義、立憲主義の建前をとる国ですから、今後、新憲法制定や憲法改正に関する国民投票に際しては、有権者が現行憲法の内容とその問題点、新憲法や憲法改正案などの内容とその問題点について、よく熟知して投票に臨むことができる体制の整備が急務、ということになります。
つまり、まず子どもたちについては、たとえば「憲法とは何か」という次元からはじまり、今の日本国憲法の内容やこれに関する重要な論点、各政党から出される改正案の内容と問題点などについて、きちんと知識的に理解を深め、自らの選択を決めることができるようになるための、「ほんものの公民教育」や「主権者教育」が重要になってきます。
あるいは、すでに有権者であるおとな世代についても、同様の点について、「ほんものの主権者になるための学習」機会の整備ということが必要になってきます。
しかしながら、これは「公民科教育法」といううちの大学の教職課程の授業で語っていますが、最低限「現代社会」2単位を履修すればOKというような、そんな今の高校学習指導要領の内容で、はたしてこういった「主権者教育」あるいは「ほんものの公民教育」ができるのでしょうか。あるいは、高校に行かない人々のことを考えると、小学校・中学校段階の義務教育だけで、こういった「主権者教育」ができるのでしょうか。さらに、社会教育・生涯学習施設の多くを財政難などを理由に統廃合をすすめたり、次々に民間委託などを行っている状況で、はたしておとなたちが「ほんものの主権者になるための学習」機会の整備など、できていくのでしょうか。
本気でこの国のあり方を考え、憲法改正という重要な問題について、ひとりひとりの主権者の意思決定を大事にしたいと思うのであれば、今、真っ先に行うべき教育改革は、教育再生会議のいうような「親学」でも「徳育」でもなく、「公民教育」あるいは「主権者になるための学習」の充実ではないでしょうか。まったくもって、今、すすめられようとしている教育改革の方向性は、こうした国政レベルでの大きな課題に対して、ちぐはぐであると言うしかありません。
と同時に、このままではおそらく、子どもたちだけでなく、おとなたちもまた、現行憲法の内容や問題点、改正案の内容や問題点などについてよく知らないまま、憲法改正に向けての国民投票の場に立つことにもなりかねません。そこで私としては、「ありとあらゆる機会を通じての憲法学習の充実」ということを、この場を借りてあらためて提案したいと思います。