このところブログを書くことのできるような時間がなかなか取れない反面、電車の中などで、ツイッターで何かつぶやいていることが多くなりました。たった140字しか書けないという制約はあるものの、うまく活用すればいろんな人たちと意見交換をすることもできますので、ツイッターにはブログにはないよさも感じています。今日、ここで書くことも、そのツイッターでつぶやいているなかで気づいたことです。
さて、このところ大学で授業をしていて気づいたのですが、<あくまでも私の授業科目を受講している学生たちに限定して>という言い方をしますが、たとえば子どもの権利条約その他の国際的な人権条約の内容だとか、日本国憲法に定める基本的人権に関する内容などについて、あまり学生たちは詳しいことを知りません。「そういうことが書いてあるなぁ」ということくらいは知っていても、「それが自分たちの暮らしとどうつながるのか?」ということまで、イメージを膨らませることが難しいようです。
あるいは、高校の「現代社会」の教科書などを見れば、たとえば年金制度や生活保護、健康保険などのいわゆる「社会保障」について、一定の記述はあります。ですが、まるで「教科書の太字部分をひとまず言葉だけ聴いて、テスト前に覚えておく」だけで済むような学習のなかで、「社会保障」と日本国憲法に定める生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)との関係など、「詳しいことはよくわからない」まま、過ぎ去っているような感があります。
「これではたして、いいんだろうか?」というようなことをツイッターでつぶやいていたら、何人か私のつぶやきを見てくださった人権教育、あるいは人権問題に関する研究者の方から「そう思う」「同感だ」というような返信のつぶやきをいただきました。ここでお礼をいうのもちょっと変かなとも思うのですが、ひとこと感謝の気持ちを表しておきたいと思います。
ただ、よくよく考えてみますと、「これって日本の社会科教育(高校だと公民科教育)が問われているのではないか?」とも思うのです。なにしろ、中学校学習指導要領上、社会科・公民的分野の目標は、「個人の尊厳と人権の尊重の意義、特に自由・権利と責任・義務の関係を広い視野から正しく認識させ、民主主義に関する理解を深めるとともに、国民主権を担う公民として必要な基礎的教養を培う」からはじまります。これは現行の1998年版の学習指導要領でも、今の移行措置を経て本格実施予定の2008年版のそれでも、同じ目標です。そして、この学習指導要領の目標からすれば、「道徳」の領域での「人権」についての学習以上に、中学生の憲法や人権についての学習は、社会科(公民科)でもっと積極的に扱われるべきだという意見も成り立つでしょう。
なにしろ、中学校「社会科」という教科の「公民的分野」の主たる目標に「人権の尊重の意義」という言葉が入っているわけですからね。また、中学校の学習指導要領上、「道徳」の領域では、多種多様な内容の「ひとつ」として「自他の権利を重んじ・・・・」という言葉が出てくるだけです。そして、その「道徳」の領域での「自他の権利を重んじ・・・・」という言葉も、その前に「法やきまりの意義を理解し、遵守する」という言葉と、あとに「義務を確実に果たして、社会の秩序と規律を高めるように努める」という言葉につながるわけです。このような「道徳」の教育を軸とした「人権教育」で、はたして「私たちが暮らしやすい社会をつくるために、国のあり方を問い直し、よりよいものへと変革していこう」とするような、能動的な「市民(公民)」のイメージが出てくるのかどうか、というところです。
だから私は、今、一部の人権教育の関係者が「道徳」の領域で「人権」についての学習を進めようとする動きについては、やや首をかしげざるを得ないと思っています。特にその人権教育の関係者が、上に書いたような能動的な「市民(公民)」の育成ということを人権教育の重要な目標と考えるのであれば、まず真っ先に、学習指導要領の「道徳」の内容を問う必要があるのではないか、と思うわけです。
ついでにいうならば、人権教育が追求すべき「学力」の中身も、本来は、この能動的な「市民(公民)」の形成や、国際的な人権条約及び日本国憲法の基本的人権に関する内容の理解に関わる読み・書き・算のスキル形成、さらには思考力や判断力・表現力などの形成といった観点から論じるべきでしょうね。私としては、全国学力テストやこれに類するテストの点数が高かった・低かったで一喜一憂するような「学力」論は、本来、人権教育の充実に必要な議論ではないと思っています。
なお、もう一つの日記帳ブログにも書きましたが、近々、故・岡村達雄さんの研究業績を紹介したり、故人を偲ぶ内容で綴る新ブログをつくろうと思っています。ご存知の方も多いかと思いますが、岡村さんは『日本近代公教育の支配装置』(社会評論社)など、日本の近現代公教育のあり方を問う数々の著作のある方で、私の大学院生時代の指導教授でもあります。また詳しいことが決まり次第、こちらのブログ及び日記帳ブログでお知らせします。
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