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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

市職員アンケートは「凍結」ではなく「撤回・破棄」及び「謝罪」が必要

2012-02-17 19:25:01 | ニュース

いま、ツイッターを見ていたら、大阪市職員の組合活動や政治活動に関するアンケート調査の結果を封印・凍結して、市労連からの府労働委員会への救済申立ての結果を待つよう、橋下市長サイドの方針が変わったとか。具体的には、次のネット配信ニュースで見ることができます。

http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012021701001973.html (職員アンケート開封凍結、大阪市労連の申立てで:共同通信2012年2月17日付配信記事)

ただ、この記事からもわかるとおり、あくまでも調査の実務を担当する特別顧問のレベルで、データの開封や集計作業を凍結するというのみ。先日、この調査について自分に「全責任」があると言った橋下市長ご本人は、朝日新聞の「橋下番」ツイッターによると、このように答えているようです。

速報的につぶやきます。大阪市職員アンケート問題で、市側の調査担当の野村弁護士は調査を「凍結」することを明らかにしました。事態が大きく動きました。橋下氏は「僕自身は問題ないと思っているが、弁護士の判断に委ねる」と発言。(以上、朝日新聞・橋下番のツイート:2012年2月17日、18時22分)

ですから、このツイートからもわかるように、あれだけ憲法違反・違法などの指摘を日弁連や大阪弁護士会など各地の弁護士会から受けたり、市労連が救済申し立てを行ったり、各地の労働組合ほかさまざまな団体・市民から受けているにも関わらず、橋下市長そのものは、この調査は「問題ない」と思っているわけです。

ただ、この間、いろんな立場から声をあげて徹底的に批判・非難をすることが、彼らの動きを止める、方向転換する。そういうことだけは、この一件でも確かかと。なおかつ、彼らはやはり、理路整然と根拠を示しながら、法的なスジ道論で攻められるのが嫌なのだということも、この一件からわかります。なにしろ、弁護士会や労働組合を含め、いろんな人たちが声を上げていかなければ、このような「凍結」という動きすら出なかった危険性があります。

もっとも、こういう調査は「凍結」ではなくて、そもそも実施すること自体に問題があるというのが、この間の弁護士会や労働組合側の主張。私もそう思いますし、だとしたら、いまだにデータが特別顧問などの側にあるということ自体を早急に解消するとともに、関係者に多大な迷惑や心身の苦痛を与えたことを謝罪するよう求める必要があると思います。

ですから、引き続き、この調査の違法性や憲法違反などの問題を声を出して指摘し、調査結果の封印・凍結ではなくて、調査そのものの撤回・データの廃棄、そして市労連その他の市の職員労組、関係する人々への謝罪を橋下市長に求めていく必要があると思います。

ちなみに、橋下市長。昨日の毎日新聞VOICEの特集にはかなりいらだったようで、相当、そのことをツイッター上にぶちまけていた様子です。このことは、次の「堺からのアピール」のブログでわかります。

http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/

しかし、いくら彼がいらだったところで、アメリカでの「落ちこぼれゼロ法」以来の教育改革が、短期的には学力向上等の成果を上げたように見えて、長期的に見れば教員不足など教育環境の崩壊を招き、かえって学校教育を混乱と荒廃に導いたことは明白。そして、そのアメリカの教育改革をモデルにしたように、学力向上策で効果をあげない学校を統廃合したり、教員を辞めさせるような仕組みを持ってきても、日本でもうまくいかないだろうということが、これではっきりとしてきたわけです。

要するに、今までは橋下市長サイドが、お得意のテレビをつかった情報発信によって、こういった問題点や批判を今まで隠してきただけ。マスメディアで流す情報を巧みに操ることによって、自分たちの主張をいかにもよきものに見せてきただけ。そのことが、だんだん事実が明るみにでることで、ここへきてもう、うまくいかなくなってきたのではないか。そんな風にも今の状況をみることができます。

やっぱり、徹底的に「だめなものはだめ」「おかしいものはおかしい」と言い続けること。また、理路整然と法的なスジ道で議論を組み立てたり、きちんと調査したり検証したりしたうえで、彼らの流す情報に対抗していけるような情報を発信すること。こういったことが大事かもしれませんね。あらためて、このことを今日は感じました。

あと、特別顧問という立場にせよ、維新の会の議員や支持者にせよ、市職員などの形で橋下市長をサポートする立場にいるにせよ、彼の打ちだす施策や政治的な手法に下手に「協力」をすることは、結果的に自分の立場を相当危うくすることもあるのではないでしょうか。特にこのアンケート調査を担当している特別顧問は、弁護士です。日弁連や各地の弁護士会から違法性や違憲の疑いという観点から、調査中止等を求める声明をぶつけられるということは、この特別顧問にとって、本来であれば相当、不名誉なことではないのでしょうか。そういうところを、この特別顧問はどう考えているのか。ぜひとも知りたいところですね。


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