今朝、ツイッターを見ていたら、神戸新聞が次のような「連載」記事を配信していることを知りました。
「【連載】学校いま未来 第1部 教員間暴力の衝撃(1) 一報」(神戸新聞配信記事、2020年2月3日)
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/eastsuma-kyoin/202002/0013084453.shtml
この記事でもわかるとおり、この件が社会問題化するきっかけは、神戸新聞への当該小学校の保護者からの電話と、そのあとの被害教員の代理人弁護士、そして神戸市教委への取材等々であったこと。また、その取材の過程で、例の「激辛カレー」の映像の配信が行われたことがわかります。
そして、この記事からしますと、例の「激辛カレー」映像の配信は、被害教員の代理人サイドにしてみると「教員間のいじめをなくすために声をあげること」が目的だったようですが…。
しかし、このブログを継続して読んでいる方はおわかりのとおり、私は当初から、その被害教員の代理人サイドからの思いはわかるものの、文字(テキストベース)ですでに新聞記事が出されているのに、この映像の配信は本当に必要だったのかどうか、強い疑問を感じていました。
いまでも、報道各社が引き続きこの「激辛カレー」の映像を配信していることについては、たとえ当事者が同意しているからといっても、これだけ当該の事案が社会問題化した以上「もはや、継続した配信は必要はない」と私は思うので、強く疑問に感じます。
また、この映像配信がテレビやインターネットで大きな波紋を呼び起こし、かえって当該の小学校の子どもや保護者、地域住民を傷つけたり、近隣の学校や神戸市教委の業務にも支障をきたす状況を生んだこと。そこに対しては、当初から私は「いったい、神戸市教委や総合教育会議として、当該の学校の再建についてどのような将来展望を持っているのか?」「弁護士主体のチームではなくて、たとえば教育学や心理学・精神医学の研究者・専門職なども交えて、当該の学校の子どもや保護者、地元住民、当該の学校に残った教職員の意見なども聴きながら、数年にわたる学校再生プランをつくるべきだ」と主張してきました。
さらに、この報道とその後の波紋が一連の加害教員バッシングを呼び起こし、分限休職処分と給与差し止めの条例改正を急いで神戸市当局側が行う一方で、条例改正のあり方に強い疑義が示されたこと。また、それでもなお神戸市当局側は分限休職処分と給与差し止めの措置を行ったのですが、これに対して現在、2名の加害教員側から異議申立てが行われていること。これに加えて、「ハラスメント問題」として行われている神戸市教委の当該事案の調査についても、弁護士主体のチームへの書類の提出忘れがあるなど、引き続きゴタゴタした対応が行われていること。そして「連帯責任」と言わんがばかりに、校長職などへの昨年末のボーナスの増額も、今のところ停止されたままになっているかと思います。
一方、たとえば神戸市長側は総合教育会議の議論を通じて、たとえば教育改革担当の特命課長を置いたり、今後の教員研修のあり方を見直す提案を行ったり、あるいは「神戸方式」と呼ばれる教員人事のあり方を変えることを市教委側に求めたりしてきました。あれから文科省なども教員間のトラブルに関する調査などを行ってきましたが、他の都道府県でも「教員間いじめ」「教員間暴力」に相当する事例はあり、本当に「神戸方式」が問題なのかどうか自体が怪しいにもかかわらず、です。
このような次第で、当初からこの事案を社会問題化していくにあたって大きな役割を果してきた神戸新聞の取材チームのみなさんには、この連載企画を通じて、「この半年近くのあいだ、この神戸の教員間いじめ問題について、自分たちは何を伝え、人々の思いをどのような方向に導いてしまったのか?」ということを、ぜひとも自己点検・自己反省的にふりかえって、報道していただきたいと思います。
もしかしたら神戸新聞の今回の連載は、「あの事案の記憶を忘れさせてはいけない」という思いではじめたのかもしれません。一時期に比べると、確かに人々の関心は薄れているかもしれません。だからこそ、「忘れないように」ということで、今の時点でこの間の経過をふりかえろうとしているのだろうと思います。その思いは、私としてもよく理解できます。それはたいへん、ありがたいことのように思います。
でも、それはあの「激辛カレー」映像の配信に端を発する騒動を「再燃」させるものになってはいけません。むしろ「あの騒動を引き越してしまったものはなんだったのか?」「自分たちの報道も、あの騒動を過熱化させてしまう要因の一つではなかったのか?」と、冷静に自分たちを問う方向で、あらためてあの事案に関する一連の経過をふりかえってほしい。少なくとも、私はそのように願っています。
ちなみに、この間、神戸新聞の記者さんがこの「教員間いじめ」問題の件で、私のところに取材に来たことは一度もありません。かつて垂水区の中学生いじめ自死や、あるいは、六甲アイランド高校での事件に関してなら、何度かありましたが。そのことも、あえて書き添えておきます。
なお、しばらくこの件での情報発信が途切れていました。私も本業が忙しかったので…。でも、1月中にもいろいろと動きがありましたので、そのことは今後、過去の記事にさかのぼって、徐々にブログで書いていくことにします。