神戸市教委の係長、自殺か 教諭いじめ問題に関わる (共同通信、2020年2月9日配信)
たいへん悲しいことです。亡くなられた神戸市教委職員の方のご冥福をお祈りします。
その上で、今の時点で私が考えることを書いておきます。主に神戸市・市教委当局が当面、何を行うべきか、どういうことを考えていくべきかについて、学校で子どもの自死が起きたときの対応をヒントにして書いてみます。
1:まずはまわりに居る人々すべてに対して、亡くなられた市教委職員のご遺族の方への最大限の配慮をお願いしたいです。ご遺族が亡くなった方とのお別れを行い、悲しみの気持ちを十分に表明できるように、まずは静かな環境を整えてほしいです。また、お通夜・ご葬儀をはじめ、ご遺族がさまざまな告別の儀式、喪に服するための儀式などの実施に際して、神戸市・市教委当局は最大限の配慮・支援をしていただきたいと思います。
2:ご遺族の方が「亡くなった本人にいったい、職場でなにがあったのか、事実を知りたい」と願う思いに十分に応じられるように、神戸市・市教委当局は、周囲に居た職員らからのていねいな聴き取り等を行ってほしいです。また、その聴き取った内容について、当局が責任をもって、しかるべき機会にご遺族に伝えてください。その上で、ご遺族がその説明に納得がいかず、詳しい調査を望まれた場合などは、外部有識者などをまじえて適切な調査・検証作業を行ってください。その際に、たとえ当局の責任が問われることになったとしても、できるだけ事実経過等で伝えられることは正確に、隠さずに伝えるようにしてください。
3:この件を知って、多くの市教委職員は動揺をしたり、悲しみを抱えたりしていると思います。市教委職員のひとりひとりが安心して悲しみ、苦しみを表現できるような環境を整えてほしいです。また、心身ともに疲弊して追いつめられている市教委職員が他にいないか、早急に神戸市・市教委当局として面談などを行い、把握してほしいです。特に疲弊の度合いが強い市教委職員に対しては、当局が責任をもって、適切な心身のケア・サポートを行っていただきたいと思います。
4:亡くなられた市教委職員の方の担当業務を引き継ぐ方が、当然、今後出てこられるかと思います。その方に対しても、神戸市・市教委当局が最大限の支援を行ってください。特に市長・教育長以下の管理職は、新たに業務を引き継がれた方が困難な状況に陥ることのないよう、最大限の職場環境の整備に努めてください。また、市長・教育長以下の管理職が、この新たに業務を引き継がれた方はもちろんのこと、他の市教委職員に対してもパワハラ等の行為がないように、最大限の注意を払ってほしいです。
5:以上のようなことにできる限りの対応を行う準備をすすめつつ、同時に、神戸市・市教委当局として、市長・教育長ら責任ある立場の方が、亡くなられた方への弔意を公の場で示すことが大事です。また、亡くなられた方が苦しまれていたこと、追いつめられていたことの背景に、去年秋以来の教員間いじめ問題への事後対応のあり方が深くかかわっていると考えるのであれば、神戸市・市教委当局として、十分に対応にあたる市教委職員への配慮、心身のケア等ができなかったことについても、ひとこと、おわびのことば等があってしかるべきかと思います。
6:その上で、これも上記2の対応ともかかわりますが、去年秋以来の一連の経過のなかで、市教委職員、特に亡くなった方にどれだけの心身の負担がかかっていたのか。その心身の負担が生じた背景には、神戸市・市教委当局としてのどのような対応上の問題が関連しているのか。そのことについても、きちんと外部有識者などをまじえて、調査・検証をしておく必要があると思います。そして、その調査・検証作業の結果をふまえて、同じような悲しい出来事の発生を防ぐための手立てを考えて、実施してほしいです。
7:最後に。教員間いじめという悲しい出来事の事後対応の過程で、その対応にあたっていた市教委職員が亡くなるという悲しい出来事が起きてしまいました。このような悲しい出来事が続くことを防ぐためにも、やはり、神戸市の教育界をもう一度、あらためて「子どもと教職員・市職員のいのちを守る」という観点からつくりなおす必要性を感じます。また、去年秋から今に至るまでの経過のなかで、はたしてどこまで「子どもと教職員・市職員のいのちを守る」とりくみができていたのかも、神戸市・市教委当局に問われるところです。それこそ、たとえば教員間いじめ問題がマスコミで報道され、「こんなこと、あってはならない!」という人々の感情のもとに世論が煽られ、「これが諸悪の根源だ」とばかりに、なにかをやり玉にあげて攻撃するかのような解決策を神戸市・市教委当局としてとってきた。そのことがもしも新たな矛盾を学校現場や市教委事務局内部に引き起こし、別のかたちで誰かを亡くなるところまで追いつめたのだとしたら…。そのような解決策のあり方、さらにはそのような解決策を導き出した世論のあり方もまた、これから問われてしかるべきかと思います。そのことを私は今、強く感じています。
以上が、今の時点でお伝えしたかったことです。