昨日、上野の東京文化会館でおこなわれた、ウィーンフィルのオペラ、コシ・ファン・トゥッテを観に行ってきました。
念願だったウィーン国立歌劇場管弦楽団の演奏を生で聞くのは初めてです。
さすがに世界最高峰の楽団だけあって、大入り満員でした。
入口に「大入り」の看板も掲げられています。
指揮はリッカルド・ムーティ、相変わらずの男前です。
歌手陣もバルバラ・フリットリ、アンゲリカ・キルヒシュラーガー・イルデブランド・ダルカンジェロ、ミヒャエル・シャーデ等そうそうたるメンバーです。
座席は5階左、相変わらずの天井桟敷です。
しかし、左側からだと、指揮者の手元がよく見えて案外よい席だったかもしれません。
ムーティの雄弁に語る左手に見とれてしまいます。(もちろん双眼鏡を使います)
オーケストラが休んでハンマーグラヴィーアだけの演奏になる時に、ムーティが眼鏡をはずして譜面台に置いているのまでよく見えます。
以前、ムーティが老眼鏡を使うようになったときは結構ショックでしたが、最近は慣れてきました。
まあ、余計なところに目が行ってしまうわけですが、何といっても、演奏と歌手陣の素晴らしさは筆舌に尽くせません。
何が良いのか、どう表現したらよいのかを考えてみましたが、一言でいうと、気持のよい音ということです。
感動も失望も心が大きく揺れますが、この演奏はそうではなく、体全体にしみわたる心地よさです。
気持ちよくて思わずうとうととしてしまうような感じです。
いつも、真剣に演奏を聴いていると思わず力が入ってしまい、肩が凝ってしまうことがあるのですが、この演奏では、そういうことがなくマッサージを受けた後のような心地よさを感じます。
どんなオペラでも、多少は突っ込みどころがあるのですが、ここでは見当たりません。
演出も演奏を邪魔しないですし、歌手陣のアンサンブルも絶妙です。
たとえるなら、最高の生地を使って最高の仕立てで作られたごくシンプルなオーダーメイドのジャケットを身にまとったような感じ。
シャンパンのような華やかさやワインのような奥深さではなく、シンプルな自然水を飲んだ時のような、体にしみわたるような感じです。
昔、たしか開高健だったかが、飲んだ時に水のように体にしみわたるのが究極のお酒だという文章を書いていたという記憶があるのですが、まさにそんな感じです。
時々、自分で聲明を唱えたとき、あるいはお題目を唱えたときに、たまに、良い声が出てその振動が体に伝わって気持ち良いと感じることがありますが、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の音(歌手陣も含めて)はもっと振動が細かく、気持ちよさも格別です。
良い音楽とは感動するというよりも、心地よさ、体に直接沁みてくるものだということを今回初めて体験しました。
この気持ちよさ、体に直接伝わる振動?はCDでは再現できないものではないでしょうか。
改めて、生で聞くということの素晴らしさを実感しました。