X-MENシリーズの中心キャラクター、ウルヴァリン/ローガンにフォーカスしたスピンオフ・シリーズ第3作にて最終作。監督は、前作「ウルヴァリン:SAMURAI」で監督をつとめたジェームズ・マンゴールドが続投しています。
X-MENシリーズは最近は見ていないのですが、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンには思い入れがあったので、今回は見ようと決めていました。本作に影響を与えたという「シェーン」(1953)も予習してスタンバイしていましたが、いろいろあって先週ようやく見てきました。
ちなみにX-MENのコアなファンからはあまり評価の高くない「ウルヴァリン:SAMURAI」も、私は”とんでも設定”が結構楽しめちゃったのですが、本作はそれとは打って変わってリアリズムを追求したシリアス路線で、深い人間ドラマに心を揺さぶられました。余韻の残るエンディングもすばらしく、シリーズのラストを飾るのにふさわしい作品でした。
舞台はミュータントが絶滅の危機にある2029年、メキシコ国境に近いテキサス州エル・パソ。ローガン(ヒュー・ジャックマン)はリムジンの運転手として生計を立てながら、老いたチャールズ(パトリック・スチュワート)を助け、廃工場でひっそりと暮らしていました。
ある日、ローガンはガブリエルと名乗る女性から、ローラ(ダフネ・キーン)という少女をノースダコタ州のエデンという場所まで送り届けて欲しいと懇願されます。最初ローガンは断りますが、組織から不意打ちに襲撃を受け、なりゆきからローラ、チャールズとともに逃避行の旅に出ます。
本作のローガンは不老不死の能力が薄れてすっかり老け込み、チャールズは認知症を患っているというショッキングな設定です。最初は面倒に巻き込まれることを疎み、ローガンはローラを受け入れることを躊躇しますが、のちにガブリエルが残したメッセージビデオから、ローラがローガンの遺伝子を引き継いだクローンであることが明らかになるのです。
組織はミュータントの遺伝子を使って、メキシコの研究所で残忍な人造兵器としてクローンを作っていましたが、自我をもったミュータントたちが手に負えなくなり、虐殺することを決めます。そこでガブリエルたち看護師によって助けられたミュータントたちが、安息の地を求めてエデンを目指す...というストーリーです。
ローラを演じる新星ダフネ・キーンちゃんが実に魅力的でした。野生動物のような鋭い眼光と抜群の身体能力、凶暴性を兼ね備え、心を閉ざした表情からは、ローガンと同じ孤独と悲しみが伝わってきて、胸をつかれました。
逃亡の旅を続ける中で、ローガンとチャールズ、ローラの間に疑似家族のような関係が築かれるにつれ、ローラが少しずつ人間らしい落ち着きを見せ、行動がコントロールできるようになっていきます。ひょんなことから農家の家族を助けた縁で、つかの間の家庭の温かさに触れる場面では、ローガンと「シェーン」の姿が重なって、胸がしめつけられました。
異分子とみなされているミュータントたちが最後にアメリカを出てカナダを目指すところは、移民たちを排除しようとしている現トランプ政権への批判のようにも受け取れました。ラストの祈りのことばは「シェーン」のワンシーンから。平和への切なる願いも感じ取れ、心にずしりと響きました。