Amazon Prime Video で鑑賞しました。ガラルド・コンリー氏が自らの体験を告白したベストセラーを、ジョエル・エドガートンが映画化。ルーカス・ヘッジス、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウが共演する、事実に基づくヒューマンドラマです。
昨年公開された時に見逃していた本作。遅ればせながら Amazon Prime で鑑賞しました。セクシャリティや宗教、家族愛をテーマにしたシリアスな内容で、見る人を選ぶ作品ではありますが、今なおアメリカに同性愛の矯正施設があるという事実を知り、衝撃を受けました。
ジャレッド(ルーカス・ヘッジス)たちが住んでいるのは、アメリカの保守的な地域。父親(ラッセル・クロウ)はバプテスト教会の牧師、母親(ニコール・キッドマン)は夫に従うことをよしとする昔ながらの価値観をもつ家庭で、愛情深く育てられてきました。
バプテストはアメリカのプロテスタントの最大会派で、それほど過激という印象はありませんでしたが、ちょうどバージニアに住んでいた頃、バプテストが同性愛を擁護しているという理由でディズニーをボイコットしたニュースはよく覚えています。
Southern Baptisut Convention Calls for Boycott of Disney (The New York Times 6/19/1997)
ジャレッドが矯正施設に送られたという事実と重なり、合点がいきました。
この矯正施設。どう考えてもおかしいし、こんなのアウトに決まってるでしょ、とわかりそうなものですが、同性愛は許されるべきではない、治すべき心の病なのだという思想にとらわれた世界にいると、ある種洗脳され、正しい判断ができなくなってしまうのでしょうね。
もう自分は克服したとウソをついて施設を出てしまえばいいのに、と思いますが、ジャレッドにそれができなかったのは、おそらく神様にウソをつけなかったからではないでしょうか。
バプテスト、そして父の教えに照らして、自分の方が間違っているのだ、と自らを責めていたに違いありません。
ジャレッドが自らのアイデンティティを受け入れまいとしてもがく苦悩の表情に、ただただ胸が締め付けられました。
そして私が感情移入したのは、やはりニコール・キッドマン演じる母親です。息子を苦しめる矯正施設に疑問を抱きながらも、夫に異を唱えること、教会の考えに逆らうことができずにいた彼女が、息子を愛し、受入れ、守るために振り絞った勇気に、胸が熱くなりました。
監督を務めたジョエル・エドガートンが、矯正施設の怪しげな牧師役で出演。矯正施設の仲間のひとりとして、グザヴィエ・ドランが出演していたのもうれしいサプライズでした。