【越山若水】中国の三大宗教「三教」とは、儒教、道教、仏教を指す。中でも道教は古来の民間信仰の流れをくみ、老子や荘子の思想、神仙説などが融合し、漢民族が信仰する伝統的宗教である▼始祖とされる老子は、春秋戦国時代の哲学者と伝わる。「無為自然」を基本理念とし、知や欲を捨て去り道に従ってありのまま生きるよう説いた。そして政治においては「小国寡民」が重要だと唱え、読んで字のごとく「小さくて人民が少ない国」を理想郷と考えた▼その国では、兵器が使われることはなく、命がけで遠方に向かわせることもない。民衆が食事や衣服、住居、素朴な習俗に満足していれば、近隣の国をねたんで押しかける必要はない…。領土拡大にしのぎを削る春秋時代の戦乱を嫌い、老子は牧歌的な社会を望んだ▼いにしえの賢人の教えもどこ吹く風、最近の中国は「大国主義」の気配が色濃く漂う。南シナ海では勝手に設定した境界線「九段線」を根拠に領有権を主張。香港では国家安全維持法を成立させ、言論の自由や国際公約「一国二制度」を反故(ほご)にしようと画策している▼旧宗主国・英国など欧州から非難が相次ぐが、特に米国の闘争心は先鋭化。世界の大国を自任するプライドか、「対中苛烈批判」が止まらない。両国の総領事館閉鎖も火種となり“米中新冷戦”の危険な様相。お互い欲を捨て冷静にと願うばかりだ
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小国寡民
小さい国で、国民も少ない(のが理想的である)。
いろいろな器具があっても、使わせない。
国民たちに命の大切さを考えさせ、遠くへ移り住みたいと思わせないなら、車と小舟があっても、乗っていくことなく、鎧と武器があっても、並べ(て戦争す)ることがない。
国民に、再び縄を結んで約束の印とするようにさせ(そのような古代の生活に立ち返らせ)、食事をおいしく、服を美しいと思い、住まいに満足し、風俗を楽しませれば、隣国同士お互いに見渡せ(る近さで)、鶏や犬の声がお互いに聞こえる近さでも、人々は年老いて死ぬまで、お互いに行き来しようとしない。
いろいろな器具があっても、使わせない。
国民たちに命の大切さを考えさせ、遠くへ移り住みたいと思わせないなら、車と小舟があっても、乗っていくことなく、鎧と武器があっても、並べ(て戦争す)ることがない。
国民に、再び縄を結んで約束の印とするようにさせ(そのような古代の生活に立ち返らせ)、食事をおいしく、服を美しいと思い、住まいに満足し、風俗を楽しませれば、隣国同士お互いに見渡せ(る近さで)、鶏や犬の声がお互いに聞こえる近さでも、人々は年老いて死ぬまで、お互いに行き来しようとしない。