二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

伝統的鍼灸診察法の有用性と医学的意義

2012年04月06日 | 鍼灸

ブログ報告遅くなってま~す。すいませ~ん。もう4月だというのに2月の報告させて頂きます。

 (社)全日本鍼灸学会 中部支部認定研修B講座 

 日 時 :平成24年2月19日(日) 午後1時~3時
 会 場 :金沢勤労者プラザ406研修室
 演 題 :「伝統的鍼灸診察法の有用性と医学的意義」
 講 師 :明治国際医療大学 鍼灸学部 准教授   和辻 直 先生 

 講師の和辻先生

内容は、舌診、聞診(声診)、問診の有用性と研究報告の紹介、また、脈診、腹診、背診、顔面診の有用性と研究報告の紹介、そして、上記を踏まえての、東洋医学の診察方法における研究と、その課題(脈診、経穴の反応など)の流れで話が進んでいきました。

     

舌の機能というのは、味覚、触覚、嚥下、咀嚼、構音、唾液分泌、歯並びの保持、歯列など多くの機能に関与します。12本ある脳神経のうち5本が枝を出しているのが舌です。機能をみると、消化、耳や鼻などの感覚器など多くの身体機能に関っています。

舌はいろんな診方がありますが、色、潤い、苔の状態、動き、形、厚さなどを診て、身体の状況の把握に用います。脈診や腹、背診は、その人の感覚と練磨が必要であり、非常に修得するまでに時間がかかるのですが、舌診は視覚を使った診察方法なので、知識さえ持っていれば、初心者からベテランまで広く患者の病態把握のための情報として用いることができます。

講習会でも話があったのですが、視覚から得られる情報は知識があれば初心者もベテランも変わらないのですが、そこから証を立てたり、それを患者へフィードバックする時は、明らかにベテランの方が有効に利用しているというデータもあります。臨床経験が豊かなのですから、当たり前といえばそうなのですが。

しかし、病態把握としては、初心者も知識があれば有効ということが重要かなと思います。舌診は病の深さ(表裏)、病の状態(寒熱)、病の趨勢(虚実)のうちの、病の状態(寒熱)を診るのに適しているようです。



和辻先生は舌診の本を書かれているほどに、研究に中でも舌診を重点的に行っているようです。講義の中では、舌診の締める時間的割合が多かったですね。
でも、勉強になりました。

その後、問診、腹診、背診、そして脈診の話がありました。

脈診で面白かったのは、脈診の研究は非常に難しいという話でした。以前、全日本鍼灸学会の金沢大会の時に東北大学での脈診の研究に関する発表がありました。脈波を調べるだけでは捉え難く、カオス分析やフラクタル分析など難しい解析をやらないと捉えることができないという話しでした。

また東洋医学の脈診方法はシュクホウ脈診と言って、豆の重さに例えて、手首から離れるほど脈を押さえる指の圧を強くしていく方法です。しかし、これは本当に解剖学的や生理学的に合っているのか ということがあったり、脈の状態の「浮」とは橈骨動脈の位置が変わっているのか など疑問もたくさんあるということの話がありました。

大学としても以前は脈診の研究を行っていたのですが、画像診断装置など調べると「双管脈」といって、脈診を行う部分から左右に動脈が分かれている、または、その前から左右に分かれている、その分岐が左右ではなく、上下に分かれている脈が意外に多くの割合で存在することが分かったそうです。

その割合は36.3%だそうです。

その辺りを脈で判断して診察、治療行う場合どのように判断、評価すればいいのかということで、暗礁に乗り上げ研究が停滞していたそうです。しかし、最近はまた大学で脈診の研究が始まったようです。一つ、脈診という不思議な診察方法の何かの真実が解明されるきっかけが生まれますように祈るばかりです。

数字や目に見える形で表現できないものがある、東洋医学を客観的に実証していくのは無理、など東洋医学の古典を近代科学で解明するのは無理だと話す人も多々おられますが、それじゃ~江戸時代の人が飛行機が飛ぶと思ったか?指一本で洗濯や掃除がができると太古の人は思ったか?パソコンなんてものを考えたか?ということですね。

思考の限界をつくってしまったら、そこが自分の限界になりますよね。

  
 司会の中田先生

また、和辻先生が台湾に行かれ、病院の中で鍼灸・漢方治療がされている様子をパワーポイントで紹介されていました。

近年、中国や韓国は鍼灸を含めた自国の伝統医学を世界標準にしようと、国がバックアップとなり世界に打って出ています。日本は、最近、学会が中心となり「日本鍼灸」というものが何なのかをまとめ、昨年の東京大会で宣言しました。しかし国のバックアップはありません。
世界との対応は外交ですから、国が後ろにいるのといないのとでは、天と地くらいに開きがあるでしょうね。その辺りの話は置いておいて…

今後は、日本の伝統医学としの診察、治療方法として、できるだけ統一的に説明ができるように研究、あるいは皆がまとまっていかなければならないという結びでした。困難なことは分かっているがということでした。

伝統医学としての鍼灸治療、患者を中心とすることは根本ですが、「効けばいいやろ」では、医学の中では、今までとなんら変化がありません。患者を診るものとしては、ミクロに観る現代医学的あるいは科学的な視点と、マクロに観る伝統医学的、太極的視点を持って、広い視野と多角的なものの視方、捉え方で、鍼灸医学を検証していくことが大切だと思います。

結局は、師匠の黒野先生の言っていることに辿りつくのかな~と感じた研修会でした。

二葉鍼灸療院 田中良和

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