二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

不妊症に対する鍼灸最前線 聴講 ~不妊症の病態と東洋医学(鍼灸・漢方)が果たす役割

2020年12月15日 | 不妊症

 少し前になりますが、第51回現代医療鍼灸臨床研究会(令和2年10月25日)にて、「不妊症に対する鍼灸最前線」というテーマで講座がありましたので、オンラインライブで参加させていただきました。 の続き

 午前中の基礎講座は聴講できなかったのですが、聴講した分を3回に分けて学んだ点や私の意見等も書いていきたいと思います。

 

 第1話 専門鍼灸師が実践する有効な治療方法とは?」【シンポジウム】

 第2話 (本日)不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割【教育講演】

 第3話 不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー【基礎講座】
     ※聴講できませんでしたが資料より

 

第2話【特別講演】

不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割

 北里大学東洋医学総合研究所 漢方診療部

 松本レディース リプロダクションオフィス  森 裕紀子 先生

 

 鍼灸はカラダの外から経穴(ツボ)に刺激を与えることで気や血または津液を整える施術です。漢方薬はカラダの中から気や血を整えて、カラダを調整する治療です。ともにうまく患者さんのカラダに合致すると相乗効果を引き起こし、治癒力を高め合います。
 日本で漢方薬を処方できるのは医師であり、薬局でも販売することができます。私達、鍼灸師は基本的に漢方薬の処方や販売はできませんので、当院にご来院し漢方薬が必要あるいは希望する場合は、患者さんの状態に応じて漢方を処方していただける漢方専門医や、不妊症に詳しい漢方薬局を紹介させていただいております。

 病院で保険適応されるのは、袋に入った漢方エキス製剤であり、煮出して使用する生薬煎じ薬については出してくれる医院もありますが少ないのが現状です。そして、煎じ薬は保険適応外となります。

 

【森先生】

ー漢方薬ー

漢方薬は生薬を組み合わせたものであり、併用には注意が必要。

漢方薬にも副作用がある。

先生は、漢方エキス製剤でもお湯で溶いて服用するようにアドバイスしている。

先生のところでは、カラダの愁訴や腹診などの情報から「証」をたてる随証治療で漢方薬を選択している。

ー不妊症の漢方薬~よく使う漢方薬(例)ー

①当帰芍薬散、②桂枝茯苓丸、③加味逍遙散、④温経湯、⑤柴胡加竜骨牡蠣湯、⑥四逆散、⑦桂枝加竜骨牡蠣湯、⑧胃風湯、⑩補中益気湯、⑪八味地黄丸、⑫六味地黄丸、⑬芎帰調血飲

ー不妊症の原因別漢方治療(例)ー

②・③  多嚢胞性卵胞(PCOS)に効果的なことが多い。   
       駆瘀血剤になるので妊娠が確認されたら中止。

⑦・⑥  腹部の動悸やストレスの多い時。

⑪・八味丸  小腹不仁   ⑩  胸脇苦満

高プロラクチン血症は西洋薬が効果的。

曲直瀬 道三(戦国~安土桃山時代の医師)の「察証弁治啓迪集(さっしょうべんちけいてきしゅう)」の中に、「香附子を加えて血を増やす」と書かれており、産後の様々な症状によく使用する。

①夫婦生活が持てない、②卵管閉塞(ART適応)、③卵胞が育たない、④精子因子、⑤受精卵が育たない、⑥着床できない、について何例か症例を提示していただいた。

漢方治療により下痢が治った頃から薬の反応が良くなった例など、心身の調子を整えるだけで自然妊娠する例も多いのではないかと考える。

気を改善する漢方薬をよく利用する。

ー症例報告ー

ART、漢方、鍼灸を併用して妊娠に至った45歳女性を紹介。鍼灸では中条流の灸を中心に行なった。

ー漢方治療をいつまで継続するかー

北里大学東洋医学総合研究所に挙児希望を主訴に受診した109名の経過を検討。漢方治療を2年以上継続して妊娠に至った症例はなかった。

漢方治療においては約2年間が一つの区切りとなる可能性が考えられる。

(私の意見)
 クリニックでの不妊治療でも、鍼灸や漢方治療でも、”いつまで継続するか”ということはご夫婦にとって大きな問題だと思います。当院では、患者さんとお話しながら、”ご夫婦が納得がいくところまでお付き合いします”ということをお話します。
 年齢やご夫婦の環境や状況によって施術計画は異なってきますが、なかなか妊娠、出産まで至らない方とは、施術に関して相談しながら進めていきます。当院でも妊娠しやすいカラダ作りの鍼灸に関しては、今のところ2年以上継続されている方はおりません。

 そんな意味では、なるほどなと感じました。

ー不妊治療における漢方治療(先生の私見)ー

患者の心身のバランスを診て、足りないものを補い、余分であれば瀉す。

まず患者の訴えから判断。虚があれば、まずその虚から治療。

訴えがなければ所見から判断。 瘀血や血虚が多い。

何もない場合は腎虚と考え補腎する。

ー気をつけていることー

漢方治療のみで妊娠する人は多いが、効果を高めるためには養生は必要。

来院患者は晩婚化も手伝い、40歳を頂点とする山形のグラフになっている。

患者さんは自然妊娠にこだわって来院する方も多いが、35歳以上は妊孕性が急激に低下するため、漢方治療しながらもARTのタイミングを逃さないように必要情報を提供する。

不妊治療を行なうご夫婦は基本的に病気でない人が多い。治療の副作用や治療が長引くことによる気鬱など健康を損なわないようにすることが大切。

 

 森先生には漢方薬や治療方針を分かりやすく説明していただきました。特に不妊症の患者さんに対する考え方はたいへん勉強になりました。やはり漢方と鍼灸は患者の健康を回復するための車の両輪だよなーと思いました。

 鍼灸も漢方も不妊治療同様、継続するとなると経費もかかってきます。ここがネックではあるところなのですが、ご夫婦がはやく天使ちゃんと出会えるように、より効果的な方法を提案できればと思います。

 冒頭でお話しましたように、漢方薬も病院・医院で処方される製剤に関しましては保険適応となります。保険適応外のものは少し高価となりますが、生活習慣を整える生活(養生;食事、運動、睡眠、心のあり方の改善)を行なうことによりカバーできるところもあると感じますので、アドバイスさせていただきたいと思います。

 以上、長くなりましたが第2話を終了します。

 もし、妊活を行なっているご夫婦で鍼灸に興味のある方、カラダ作りに鍼灸を取り入れたいと考えられている方は、是非、ご連絡ください。ご相談承ります

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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