盛夏もやや落ち着き、朝晩が少し涼しくなってきました
気圧や気温の変化も激しくなり、体調の崩れやすい時期になってきます。そのような時は自律神経を調整することを得意としている鍼灸を試すのも一つの方法かと思います。
さて、今回は妊活に大切な「食事」について少し書きたいと思います。
基本的な考え方としては、血液検査等を行って、それに足らない、または補助する栄養素をサプリメントや薬で摂取するということは妊活にとって必要なことではあります。しかし、体を養う、健康を保持・増進する、病気にならない体づくりを行うという観点から人全体を考えた時には、まずベースとなる毎日の「食事」を見つめ直すことが重要だと考えます。
かと言って、食事に関しては「これをやったら完璧」「こうしなければいけない」というものはありません。
それぞれの家庭環境や状況で、皆同じ食事がとれるものでもありません。
しかし、人の身体は食物を栄養素として体をつくり、体の機能を運営していることは確かな事実です。
食養生や医食同源という言葉もあるとおり、毎日の食生活、食習慣が体の不調や病気と繋がり、それらの症状を回復する手段として食は重要であることを先人はよく理解し書物等で残してきました。
1年経過し、自分の誕生日を迎える頃の体のほとんどの細胞は新陳代謝を行い、細胞視点からみると、1年前の自分の体とは内側も外側も全く別人に変貌しています。それまで自分が食べたものによって1年後の自分の体がつくられるという事が理解できるかと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、ある書物から妊活ということではありませんが、健康長寿食について書きます。
健康長寿食=すべての体の統御システムが順調に働き寿命を迎える=妊活を含め、すべての健康な人生の基本 と考えます。
山梨県棡原村(ゆずりはらむら)、現在は上野原市棡原となっていますが、健康長寿で病気もほとんどない、多産多乳であったこの村が、戦後を含めて急速な日本の経済成長にともない村の生活にも変化が及び、病気が増え短命化していきました。
その村の記録や調査を通じて村の60年間の環境、特に食と寿命(死因)や疾病との関係を研究されたことが書かれた書籍『長寿村・短命化の教訓-医と食からみた棡原の六十年』(樹心社)より、この本の一部ですが、健康長寿、疾病予防、もちろん妊活のためには、どのような食を心がけていけばよいのかということの参考として考えていきたいと思います。
長寿食への提言(健康づくり)
①多穀・玄穀食の再確認
・棡原の食生活を一言で表現すると、”麦を中心とした五穀の活用”
・五穀食;ビタミンB類(特にパンテトン酸、ビタミンB6)の摂取量が高まる(生活習慣病の予防)
・麦;βグルカンが多含(抗がん物質)、食物繊維の補給源
・白米中心であると低繊維食となるので副食などおかずを考える必要がある
・高度精白穀物は、繊維の少ないデンプン過多により、肥満、糖尿病、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症等)、胆石が増加傾向
・同様に、食物繊維が低下すると、腸の異常として、便秘、虫垂炎、憩室、横隔膜ヘルニア、静脈異常、がん、ポリープが増加傾向
・棡原の伝統的食生活の優位性の第一は、高繊維食であると考えられた
そ~いえば、私の母親の田舎(輪島)へいくと、白米に麦を混ぜたご飯が出てくるなと、これを読みながら思っていました。
②いも食分化の維持存続
・戦前、日本全国の山村に存在していた作物を調査すると、アワ、ヒエ、ソバ、大豆、小豆の5種類が圧倒的に多い
・これに里芋を加えた焼き畑農業に支えられていた
・棡原では、朝食の主食は里芋、間食にジャガイモが多く摂られていた
副食として、煮物や味噌汁にも活用されていた
・いも類には食物繊維が多含
・いも類に多いペクチン、こんにゃくのマンナン、雑穀のグァガムはLDLーコレステロールを低下させ、HDLーコレステロールを上昇させる作用がある
動脈硬化の予防
・いも類は保水性が高く、解毒能力がある
棡原の女性は穀菜食でありながら、驚くほどの多産かつ母乳豊乳でした。
肉食が少ない食生活ですが、座産(座ってお産)で安産でした。
恐るべき多産で、9人~11人は軒並みで13人という場合もあり、母乳は98%の女性が多乳でした。
おっぱいが出すぎて困り、とめる薬はないかと聞かれたくらいでした。
この状態をつくりのは、穀菜食とりわけ、アワ、ヒエ、キビ、穂モロコシなどの雑穀です。
おそらくビタミンEの作用と推測。
戦前までの日本全国の農村地帯の真の姿ではなかったでしょうか。
そ~いえば、私の母親も10人兄弟姉妹でした
③緑黄色野菜分化の維持存続
・棡原では、特産緑黄色野菜・冬菜は年間確保され、おひたしはもちろん味噌汁やほうとうに入れて多量摂取
・冬期でも冬菜で栄養素を補給
・緑黄色野菜は、ビタミンA、C、E、鉄分のよき供給源
・ビタミンAは、皮膚からの細菌感染防止、ヘパリンの生成が高まり脳梗塞予防
・ビタミンCは、抗酸化作用があり、抗腫瘍作用や疾病予防となる
・葉緑素には、抗がん作用があり、めざましい消炎作用がある
・葉緑タンパクは、穀類に不足しているリジンやメチオニンを多含(冬期の良質タンパク源のよき供給源)
野菜って言うけど、最近の野菜は栄養が少ないですよね~という観点は横においておきます。
言えることは、できれば自分が住んでいる地域の作物が一番いいということです(地産地消)。エネルギー的にも。
ちなみに緑黄色野菜とは・・・
「原則として可食部100g当たりカロテン含量が600µg(マイクログラム)以上の野菜」(厚労省基準)
●あさつき ●いんげん ●オクラ ●かぼちゃ ●クレソン ●ケール ●小松菜 ●サラダ菜 ●しそ ●春菊 ●セリ ●貝割れ大根 ●チンゲン菜 ●とうがらし ●トマト* ●ニラ ●にんじん ●バジル ●パセリ ●ピーマン* ●ブロッコリー ●ほうれん草 ●三つ葉 ●芽キャベツ ●モロヘイヤ ●わけぎ
④発酵食の再確認
・棡原では立派な味噌蔵があり、味噌や漬物が保存されており、「嫁入り用みそ」などを準備する風習がある
味噌を生活の重要な糧として大切に扱われる
・味噌の製法は、フスマ麹と大豆が使用(フスマ;麦の外皮や胚芽の部分)
・フスマはビタミンの宝庫で、ビタミンB類、E(玄米の10倍)、マグネシウムが多含
生活習慣病、老化防止の食物として利用
・ご存じの通り発酵食品は、腸内細菌のビフィズス菌などの善玉菌を優勢にし、ウエルシュ菌などの悪玉菌を劣勢にする
・棡原の80歳代以上の老人を調査すると善玉菌が優勢で若々しいことが判明(光岡足知らの調査)
・この原因は、これまで話をしてきた、麦を中心とした雑穀食、いも食、豆食、野菜食、そして発酵食にあると報告
⑤生涯栄養からみた良質タンパク質摂取
・棡原の伝統食に欠けているのは、良質タンパク質
・昭和二十年代の乳幼児死亡率をみると、良質タンパク質がより必要な乳幼児の死亡率が高かった
発育期栄養における良質タンパク質の確保は必須
ータンパク質と不妊-
体の水分を除くと75%はタンパク質が占める
動物性タンパク質(獣肉、魚、卵など)・・・必須アミノ酸を含む完全タンパク質
植物性タンパク質(豆類、ナッツ類、種子、穀物など)・・・必須アミノ酸を含まれない不完全タンパク質
でも安心してほしい、植物性タンパク質の中の非必須アミノ酸は、米と豆類、玄米と豆腐などいくつかの食品を組み合わせることで必要なアミノ酸13種類を作り出すシステムがある
一日のタンパク質必要量:体重9㎏あたり7グラム 一食分は手のひら一杯分くらい
アメリカにおいて大規模に行われた「看護師健康調査」によると
・高タンパク質摂取グループは低タンパク質摂取グル-プに比べ排卵障害による不妊リスクが41%高い
(牛肉、鶏肉など動物性タンパク質多く摂取するアメリカ人対象)
・動物性タンパク質を多く摂るグループは植物性のグループに比べ排卵障害による不妊リスクが39%高い
・毎日の食事の1回分を赤身の肉、鶏肉にすると不妊リスクが3分の1増加
・卵や魚を一日1回とっても排卵性不妊に影響はない
・大豆などの豆類、豆腐、ピーナッツなどのナッツ類を一日1食分摂取すると排卵不妊に対して予防効果あり
食品にはタンパク質だけではなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維など体に必要なものが含まれている
サプリメントは抽出成分に過ぎない
妊活を行う人にとっては植物性タンパク質が望ましいが、肉を食べたからと言ってすぐ危険にさらされるわけではない
肉食の習慣としてそれが長く続けば、それなりの影響がある可能性あり
排卵障害の不妊のある方は特に植物性タンパク質を習慣的に摂取することがのぞましい
考え方は柔軟に
『妊娠しやすい食生活』(日本経済新聞出版社より)
⑥伝統食との融合による新しい健康食
・①~⑤の伝統食に、一物全食(食物全部を食べる)、身土不二(地元の食材を食べる)
・加工食や肉食中心になった世の中の疾病状況や死亡状況を素直に受けとける
・成人病から生活習慣病となったのは成人病発症が若年化しているため
・伝統食中心の食生活で過ごす人たちに健康長寿が多いことも素直に受け止める
・伝統食と現代食(最先端栄養学)それぞれの長所を融合した健康食を考えよう
温泉旅館の朝食は美味しい
以上、少し長くなりましたが(いつものことなのでお許しを~)、不妊や妊活というよりも健康長寿食について書かせていただきました。
確かに良い卵胞、良い精子を育てる、また着床率を上げるにはということが妊活の目的ではありますが、やはり体を健康に保つには「毎日の食事」を再考し、全体的な体のバランスを調整することが根本的に肝心だと感じます。
妊娠し、妊娠を維持し、出産し、そこから赤ちゃんを育てる(母乳や体力)ことが必要になってきます。先を考える逆にストレスになってしまうかもしれませんが、人の身体の仕組みから言うと、そこを考えて体や心をつくっていくのが、妊娠→出産の早道の一つかなとも思います。
長々と書きましたが、天使ちゃんを待ち望むご夫婦の何かのお役に立てることができれな幸いです。
冒頭にも書きましたが、これは一例でありますので、これが全てというわけではありません。しかし昔の日本の真実でもあります。
何か一つでも実践していただければ嬉しく思いますし、妊活だけではなく、パパとママを選んで生まれてきて子どもと、少しでも長く人生を楽しむことができるように健康長寿になっていただければと願ってます
最後まで、お読みいただきありがとうございます
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