#7日間ブックカバーチャレンジ
6冊目は
『心にナイフをしのばせて』奥野修司 文春文庫(2009)
です。パチパチ!
元々、文藝春秋社から2006年に発刊されたものの文庫本版ですが、単行本発刊時に各方面から呈された質問、「なぜ著者は被害者遺族ばかりを取材し、加害者の内面を探ろうとしないのか」に回答しているので、文庫版の方がおススメです。
昭和44年に実際に起きた、目を覆うような悲惨な事件。被害者遺族は、何十年たっても癒えない心的外傷を抱え続けている一方、犯人は当時未成年だったということで、プライバシーが守られ、立派に更生し、弁護士として4階建てのビルを所有する町の名士になっていた、、、、
この本は、日本の司法は加害者を守ることに比重を置きすぎ、被害者に対するケアが足りていないということを、当時の世に、広く知らしめた功績があります。被害者遺族が加害者に恨みを持たなかった理由が「自分たち家族を回復させ、本来の姿を取り戻すのに精いっぱいで、犯人を怨む余裕などなかった」というのはショッキングでした。それくらいに大変なトラウマを抱えて、ギリギリの精神状態で生活をしているのです。
一方、この出版によって、リンチを行った人が大勢出たのも事実です。加害者であるかつての少年Aは、たちまちにネット上で本名や弁護士事務所が明かされ、被害者遺族も多くの好奇の目にさらされてしまいます。犯罪被害者や加害者を出さないための苦労が、あらたな「悪人」を生んでいくのは皮肉です。
昨今、何か事件が起きると、どんなにマスコミが防いでも、インターネット上では恐ろしいスピードで、犯人や家族のプライバシーが明かされていきます。書き込みをする人たちは、自分たちが正義だと信じて疑わず、徹底的に関係者を晒しものにしてリンチする、、、。
この緊急事態宣言下でも、
「マスクをしないで外を歩いている」
「あそこの公園でサッカーをしているものがいる」
「スーパーマーケットに複数で買い物に行っている」
「PRINCOちゃんって、実はあの寺の和尚じゃないのか?」
など、自粛監視員が目を光らせ、私刑のチャンスを伺っています。彼らの内面を探ってもあまり意味はありません。まずは自分や大切な人の健康を守って暮らしてまいりましょう。楽しいことは、まだまだたくさん部屋の隅に隠れていますから!
ちなみに、我々僧侶はナイフと言えば「内符」(お守りの中身)です。心にしのばせるなら内符をおおすすめします(^^)
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