教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

研究をよりよく進めるには(1)―教育史研究論文を書くまでVer 1.2

2010年06月03日 23時55分55秒 | 研究をよりよく進めるには

 旧HPには、純邦楽以外にも研究関係のテキストを掲載していました。そのことを、さっきまで忘れていました(笑)。HP休止(2009年5月)まで公開していたものについて、気が向いたときに(笑)貼っていこうと思います。今では少し手直ししたほうがよいかもしれませんが、手直しをし始めるとキリがないような気がしますので微修正にとどめようと思います。
 以下は、記号と最後の( )内の文章を修正しましたが、本文内容は一切変更していません。内容は大学院生(学部生)向けだと思います。
 現職教員などにも、学術論文を書くときは参考になるのではないかと思います。ただし、教育研究(授業研究・教材研究・校内外研修など)の場合は、少しニュアンスが変わってきます。そちらは、また機会があれば別途論じてみたいです。


論文を書くまで Ver 1.2 (2005年4月改訂)

1.テーマ(話題)を設定する。
(1) 教育に関する通史を、疑問の目で批判的に読む。
(2) 「これはホント?」「ここ、もう少しわからないか?」と思うところを見つける。
(3) 自分の関心・現代の問題などへの接点を考えながら、テーマを設定する。
  <日本東洋教育史研究室所属生に求められるテーマとは?>
   ☆ 「教育の特質」「日本の特質」などにせまるテーマ。
     (例:日本教育の画一性、理論と実践の関係、とか)

2.先行研究(先達の研究成果)を調査する。
(1) 1で設定したテーマについて、先行研究を調べる。(GeNii 学術コンテンツ・ポータルなどの利用)
(2) 先行研究の概略をまとめ、自分なりのコメントをつける。(特研で発表)
(3) 先行研究の参考文献などから、次に読む論文を見つける。
(4) (1)~(3)の繰り返し。場合によっては1に戻る。

3.史資料を調査する。(2と並行)
(1) 1で設定したテーマに関する史料を、何でもよいので集めまくる。
(2) 史資料を読み、内容別・年代順などに整理する。
(3) 史資料を時系列に並べ、年表を作る。

4. 論文を書く準備をする。
(1) 先行研究の成果と史資料調査の成果を見比べながら、自分の研究との相違点を見いだす。
(2) 論文題目を設定し、研究の目的(何を論じるか)をハッキリさせる。
(3) 研究の目的を達成する方法(論旨)をハッキリさせる。(「など」は厳禁)
(4) 章→節(→段落)の順に書くことを明らかにし、論文構成を作る。

5.論文を書く。
(1) 4で設定した論文構成に沿って、書いていく。
(2) 書き終わったら、読む側の立場に立って、もう一度読み直し、書き直す。
(3) 特研で意見を聞き、必要があれば書き直す。
(4) 完成。先生に見せることを忘れずに!


 <なぜテーマを設定するのか?>
☆ テーマを設定するのは、自分の問題意識を明確にするため。
  問題意識とは、現実の把握を通して自分が問題であると認識する考え。
  「なぜ、自分が、研究活動を行うのか」という問いに対して答えられるようにすること。
<なぜ先行研究を調査するのか?>
☆ 設定したテーマについて、どこまで研究の蓄積がなされているか確認するため。
☆ 先行研究と自分の研究の相違点を明確にするため。(一般に「研究の位置づけ」と呼ばれる)
  先達が行った研究と同じ内容を明らかにしても、その研究は単なる「自分のための勉強」である。
  先達の研究と自分の研究の相違点に、「社会的意味」があればある程、その研究の意義は高まる。
<なぜ史資料が必要なのか?>
☆ 自分の研究・論理の根拠を示し、妥当性を付与もしくは高めるため。
  史資料とは、基本的には客観的事実を表すものである。
<なぜ論文構成を前もって作成するのか?>
☆ 論理展開の順序を示し、証明の方法を明確にし、研究を効果的に進めるため。
  章・節構成は、論文の最も単純な構造(論理展開をも含む)を示す、「見取り図」である。
  そのため、一読してその論文の基本的な構造が理解できるようになっている必要がある。
  自分でも理解しがたい論文構成ならば、他人に理解できる論文には絶対にならないので、再考すべし。
☆ 論文構成は、人が理解する順序を示すものである。
  人は、順に必要な情報を得、それぞれ妥当であると判断できなければ物事を理解できない。
<なぜ自分で完成を認めた論文を、他人に見せるのか?>
☆ 論文の論理展開や史資料解釈などについて、妥当性を高めるため。
  論文は「自分のための勉強」ではないので、他人が読んで始めて意味のあるものとなる。
  他人が理解できるかどうかが、最低限の論文の価値である。
☆ 自分の指導教員は、自分を指導する権利と義務を有し、自分とは違う思考・豊富な知識を有する者。
  指導教員には、敬意をもって接し、より正確で意義ある指導を受けましょう。
<論文の注意点>
「根拠のない文章」「結論(考察)のない文章」「論理がつながっていない文章」「やたら長い文章」「言いたいことがわからない文章」「みんなわかっている内容しかない文章」「装飾が多い文章」「自分だけわかっている文章」 に注意!!

 ※ 論文執筆は自己満足で終わってはいけません。
  人に見せるためのもの、ということを肝に銘じましょう!!

 (恩師のご指導を参考にしながら、自分の経験を加えて作成)

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