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『雪の中』(絵物語)

雪の中を、小舟が進んでいる。

船上には、女と船頭。

女は言う。私は天涯孤独の身だ、と。





「それはお気の毒に。」


「そのようなお言葉はかけて下さいますな。」

女は妙な事を言う。

「思い出されるのも嫌、ということですかな。」と船頭。

「いいえ、ちがいますとも。思い出されないのですか?」

「はて、何のことです?」船頭は、怪訝(けげん)である。

女は、声を震わせて言う。

「あなたは、わたしの両親を殺したでしょう。」



「な、何を、たわけたことを。」

「しらばっくれるでない。確かに十日前の夕暮れに、

私の親を、お前はその手で殺したではないか。そして、

事もあろうに、食うたではないか。」



船頭は、叫ぶ。



櫂(かい)を化け物に向かい振り回す。



奴は、飛び去った。船頭は一人、舟に残る。いつまでも罵(ののし)りながら。





舟は、雪の中に消えて行く。(了)
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虎の絵

毎年、賀状の絵には苦労するが、
今年用の虎の絵もなかなか出来なかった。
以前描いたようなものではつまらないし、
この歳になると、新味をもったアイデアも
うまく浮かんでこなかったりして、
けっこう難儀した。
結局、カルタ取りをする虎の子の絵にしたが、
その前に描いたのが下の絵。
これはこれなりに苦労して気に入っていたのだが、
家族に却下されてあえなくボツ。
でももったいないので、ブログに載せて供養することにした次第。
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