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時代物の考証の難しさ


時代物のマンガを描こうとすると、どうしても衣服・髪型などの時代考証が必要になる。
 とはいうものの、こちらも専門家ではないから数少ない書籍で探ったりするわけだが、結構これが大変である。
 昔、溝口健二監督の「山椒大夫」に感激して、マンガに移してみたことがあった。当時はビデオすらまだ無かったから、映画館で見た記憶と、日本服飾史や日本結髪史の本を読み、そこの写真や挿絵から何とか真似事をした。楽しかったが大変だった。公的な場に出る衣装は資料が比較的あるのだが、平安時代の日常生活で来ていたものとか庶民の髪型とかは、恐らく資料自体が少ないのだろう、ろくに出ていないのである。
 「扇面法華経」という、下絵の上に経文を書いた平安時代の扇があって、その下絵に当時の子供の姿などがあり、資料にもそれが出ていたりするのだが、他にもそれに似た資料はあるのだろうか。恐らくそんなに残ってはいないのだろう。古い建築物に描かれた落書きなどが大量にあれば、もっとはっきりしたことが分かるのだろうが、とにかく古い時代を描こうとすると大変である。ここに描いたのは、平安時代の上流家庭の女児の単(ひとえ)姿である。子供だからこんな感じの格好で遊んでいたらしい。扇面法華経の絵から、少し想像もまじえて描いてみた。
 明治時代も、意外と資料が少ない。江戸時代の方が資料は豊富ではないだろうか。例えば『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』の世界を描こうとすると、意外に分らないことが多いと思われる。「日本風俗史料館」みたいなものがあればよいのだが。そしてそこで編纂された図版集や写真集などがあったら随分と絵を描く者には便利だろうな。贅沢言っているのは分ってるんですけどね。
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