登米市中田町上沼地区、丘陵地の細い車道を緩やかに下って行くと、牧草地や耕作放棄地
が途切れて杉林になります。行く手の車道脇の杉林際に、常緑の剣葉が密生しているのが
見えます。歩み寄ると、光沢のある剣葉ですからシャガですね。
山間の集落周りや、杉林際、耕作地周りの林縁などで、よく見かける植物です。
シャガ群落の周囲を見渡すと、杉林内に数歩踏み込んだ辺りに、シャガよりも細い剣葉が
群生しているのを見つけました。何でしょうね、初めて見る植物です。
他にも生えていないか、杉林際に注目しながら車道を少し下って行くと、不確かな獣道が
杉林内へ下っているのを見つけました。これを下ってみると、ほんの数歩のところで先ほ
どの剣葉が茂っているのを見つけました。群落から少し外れたところに数株が散生してい
て、株ごとの草姿を確認でき、さらに葉の間から萎れた花穂も立っています。
これは野草図鑑で見たキチジョウソウですね、でも東北地方には自生していないはず ?
二枚とも2020.12.10撮影
車道に戻ってさらに下って行くと、やはり杉林際に先ほどの剣葉が群生しているのが見え
ます。林内に踏み込むと、諦めていた花が付いている株があるではありませんか ! !
これはキチジョウソウで間違いないですね。なぜ関東以西に自生するキチジョウソウが、
岩手県南の杉林に生えているのでしょう ?
キチジョウソウを漢字表記と吉祥草で、これは吉事があると開花するという伝承からきて
いるようです。 そういう縁起の良い名前ですから、野草愛好家が庭や植木鉢に植えること
が多いようで、そこから逸出して杉林際で繁殖したのかも知れません。
ただ私が知る限り、この杉林のある丘陵一帯に民家はないはずです。
ひょっとして先ほど通過してきた耕作放棄地のどこかに、かつては農家があって花壇に植
えられていたのかも知れませんね。
三枚とも2020.12.10撮影
キジカクシ科キチジョウソウ属の常緑多年草で、関東地方以西の本州〜九州に分布する。
林内や林縁の半日陰~日陰に自生し、やや湿った腐植質の土壌を好む。草丈は10~30cm。
地下茎を長く這わせ、所々に根を出して新株をつくり、しばしば群生する。
葉は根生して束生、やや広めの線形の葉は長さ8〜30cmで、鋭尖頭。両面無毛で葉表はや
や光沢のある濃緑色。葉裏に突出する3~5脈がある。
花期は9〜11月、花茎は直立して高さ5〜13cm、茎葉は無い。花は花茎の先の穂状花序に
上向きに付き、花序の長さ4〜7cm、下から順に咲く。
花被片は淡紅紫色で長さ8~13mm、やや肉質で中部まで合着し、上半分は6裂片になり反
り返る。雄しべは6本で、長く突出する。
果実は球形の液果で直径6〜9mm、赤紫色に熟して中に2~3個の種子が入る。
種子は卵形で、長さ4mmほど。
キチジョウソウは鳥散布で増えるんですね。
それなら、50~100km離れた島状に分布していても不思議はありませんね。
来月早々に赤く熟した果実を探しに再訪するつもりです。積雪が無ければ良いのですが・・