急激に秋がやって来た。
こんな夜は鍋がいい。
白玉の歯にしみとおる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり 牧水
そんな歌を思いながら、鍋をつついて酒ではなくビールを静かに飲んだ。
二十代の前半に青年団体で一緒に活動した仲間が相次いでこの世を去った。
ひとりは一つ上のひげの男性。その風貌から”麻原彰晃”と呼ばれていた。気のいい男だった。もうひとりは一つ年下の女性。利発で勝気な保育士の女性だった。「うちへお婿さんに来ない?と親が言っている」と言われたことがある。僕はその親に会ったことはない。「いいよ」と言っていれば違った人生もあったのかな。
そんなことをしみじみと思いながら二人の冥福を祈ったのであった。