十年一昔と、昔は言った。
けれど、最近は三年一昔というのが実感。
目まぐるしく社会は変化し、自然環境も荒々しさを増している。
九年前、長野市にある小さな登山とランニング用品を扱うお店で目にしたチラシが始まりだった。
善光寺平を取り囲む里山を登りながらロードをランニングでつなぎ一周するツールド長野という企画だった。
およそ百二十キロの距離を、二十七時間で踏破するという過酷なものだ。
しかも日程は十二月の最初の土日という、信州ではもう雪の季節。
僕は、登山ではかなりの自信を持っているが、ランナーではない。
スルーしようかと思ったが、八つのエリアのうちどこで止めても自力でゴールまで戻れば完走、という一言が背中を押した。
あれから九年、今年もエントリーした。
当然僕も九年分年を取り、六十七歳になった。
毎年コースも変わり、制限時間も増えて三十二時間と緩くなった。
今年は善光寺裏山の地附山に登り、大峰山、葛山、頼朝山を下ったところにエイド1がある。
ここまでが1エリア。
スタートを待つ面々。百数十名の奇特な変人たち。
いよいよ地附山への登りが始まる。
落ち葉の上はふかふかで脚に優しい。
遠く東京からの参加者もいる。
最初の山頂。
目の前には飯綱山。
この山の元旦登山も今度で四十回になる。年々積雪量が減ってきている。来年はどうなるのだろう。
多分、元日にこの山を登っている人の中で、連続四十年は最長なのではないだろうか。
ツールド長野でも走りながら第一回から参加していると言ったら、『レジェンド』と呼ばれた。
若い参加者が増えている。そもそもトレイルランニングというジャンルがまだ新しい。
僕らのような古典的な登山者にとってはちょっと斜に見がちなジャンルであることは間違いない。
色々な見方がある。
だけど、昔のロッククライミングだって同じことだ。
多様な楽しみがあっていい。山の懐はとても広い。
白い目で見る裏側に、自分にはとてもできないから、というやっかみが少しでも有りはしないか。
山の楽しみは多い方がいい。そのための努力は辛くない。
葛山の山頂直下は霜。
先ほど越えて来た山が見える。
葛山の山頂。すっかり日が登り暖かい。
何やら曰くありげな名前を持つ頼朝山。説明文もあるが、読む暇はない。
下りは駆け下りる。
エイド1
ここで飲み物と食べ物を補給。
スタッフはみんなボランティア。
ここまでが第一エリア。
スタートして二時間。午前八時。
夕方に区の会議が入っているため、午前中くらいで切り上げなければならないが、まだ早いので先に進むことにする。
長野県庁の裏を流れる裾花川。鬼無里から流れてくる清流。
この川を渡り、次の旭山を目指す。
この辺りまで来ると集団もばらけ、ランナーもまばら。
あんずで有名な安茂里地区はひたすら登りで、ほとんどの人は歩きになる。
長野市を一望できる旭山展望台。
前を行く若者たち。若さがまぶしい。
旭山を下りて、次に向かうのは富士ノ塔山。その手前にエイド2がある。
そこまでは登りの長いアスファルトの道がだらだらと続く。
トップアスリートは別として、ほとんどの人は歩きとなる。
ヒイコラ歩いていると、上から医大の軽自動車が来て横で停まる。窓が開き女性が手を振る。
それは、毎年参加して励ましあったり、ペースメーカーになったり、不思議な縁のある人だった。
きけば腱を何本も切って手術をして、今回は次の茶臼山のエイド3でスタッフをするという。
『待ってるよ』と言われたが、今回は富士ノ塔で終わりだと告げ、『来年会おうね』と握手をして別れた。
少しでもどちらかの時間がずれていれば会えなかったわけで、不思議な縁と言わざるを得ない。
エイド2に着いた。時刻は十時。
ここのスタッフも昨年途中まで一緒だった男性がいた。
きいてみると、脚の手術をして今回はスタッフを務めているという。
先ほどの女性といい、この男性といい、その力を知っているだけに、とても残念でびっくりした。
そういう年齢なんだな。
十年も連続で参加すること自体すごいことなのかもしれない。
ともあれ、すぐそこの富士ノ塔山を登って、反対側に下れば、今回の旅は終わり、あとはゴールまでの十数キロを走るだけだ。
最初の人家が現れ、のどかに農作業をしている人がいた。ここが人里と里山の境目なのだろう。
ここがエリア3への分岐点。右へ下って行けば茶臼山へ向かうコースとなる。
が、僕は長野駅前を通り、ゴールへ向かう。
長野駅ほ新しくなったが、昔の駅舎の方がよかったなあ。郷愁を感じる古い人間です。
待望のゴール。時刻12時少し過ぎ。
幾つかある参加賞の中からグローブをゲット。
恒例の店長手作りのカレーをごちそうになり、終了。
このカレーは前日から仕込んだ店長自慢の一品。
傍らで、エイドの補給食のうどんを仕込んでいるスタッフにも礼を述べて帰路に就いた。
沢山のボランティァに支えられてこの大会がある。
僕も参加できなくなったら、ボランティアにまわろう。
本日の総距離、四十キロ余り。歩数五万六千歩。
そのまま温泉に行って、至福のひと時を過ごした。
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