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中露の攻勢の裏にアメリカ?

2010-11-21 17:20:00 | セイジ
 国民のなかにこれまでにない気分が生まれています。
 尖閣諸島で中国から攻勢をかけられ、北方四島でロシアから攻勢をかけられ、南北から挟撃(きょうげき)されているような気分です。
 中国がけしからん、ロシアがけしからん、と息まく人も出てきました。
 だからアメリカが大事なんだ、と声を高める人も出てきました。

 ですが、国際問題というのは、ちょっと広い目で見ないと本当の姿を見誤ります。

 想像されているように、これは中国とロシアが共同で、もしくは暗黙の目配せで仕掛けたことでしょうか。
 むしろ、中国とロシアだけで仕掛けたことでしょうか。

 むろんすべては推測です。

 ですが、この両国の攻勢で今いちばん得をしているのはどこかと考えますと、少し違う構図が見えてきます。
 中国とロシアはそれでも現実の行動に踏み出すことで、経済や政治の面で多少のリスクを担うことになりました。
 しかしまったくリスクを負わず、利益だけを得ている大国があるのです。
 アメリカです。

 前鳩山政権のもとで、沖縄の米軍基地の問題が流動化し始め、アメリカの対アジア戦略、ひいては世界戦略に不透明な要素が出始めていました。
 しかし、中露の攻勢によって、日本の反米感情は一気に冷めてきたのです。
 むしろ米軍基地の存在(プレゼンス)を再評価する風潮さえ出ています。
 アメリカの世界戦略はこれで当面ゆらぎは修復されそうです。

 さて、国際社会を見る上で重要な理論のひとつに、「ゲームの理論」というのがあります。
 もとはアメリカの学者ジョン・フォン・ノイマンが1940年代に言い出した理論で、当初は経済活動に応用が試みられました。
 要するに、どうしたらゲームに勝てるか、という設問から出発して、そこで得られる思いがけない「正解」を、現実の政治や軍事にも押し広げて優位に立とうというものです。

 では、そのゲームの理論とは?
 サイモン・シンさんのベストセラー「フェルマーの最終定理」のなかに格好の例題が書かれています。

 A,B、Cの三人の男が銃で決闘することになった。
 Aは銃の名手、Bは並みの腕、Cはまったくヘタ。
 それで、まずCが撃ち、次にBが、そして最後にAが撃つことになった(最後の一人になるまでそれを繰り返す約束である)。
 じゃあ、最初の撃ち手となったCは、だれを狙えばいいか? 
   
 答えはこうです。

 Cはだれにも弾が当たらないように空へ撃つ。

 すると次のBは当然いちばん怖いAを狙い、それが失敗すれば今度はAがBを狙うでしょうから、Cはそれだけ生き残る確率が高くなるというわけです。

 そこで最初の中国とロシアと日本とアメリカの関係に戻りましょう。

 つまり、アメリカは中国とロシアへごく控えめなメッセージをそれとなく送るだけで、みずからの戦略を実行できたということがわかるでしょう。
 中国とロシアへ、おたくたちが日本の南北の島に何かちょっかいを出したとしても、わたしんとこには動く気はないからね。
 まあ、公式的には、ひとまず正論を言うことになるかもしれませんけど。
 …と。
 しかもこれはもう、まさしくほんの目配せでいいのです。

 あくまで推測ではありますが。

 ただもう一点、アメリカの将軍たちのなかには、とりわけこの「ゲーム理論」の信奉者が多いということもついでに付け加えておきましょう。 

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