個人的評価: ■■■□□□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]
[鑑賞は2011年に劇場で・・・]
松本地域では、2011年の年末に劇場公開。派手めな年末映画がならぶ中ひっそり公開された地味な映画。
けども、サンダンス映画祭グランプリで、アカデミー賞作品賞候補となれば映画好きとしては外すわけには行かぬ・・・と観に行ってきたのであった。
しかし、絶賛されているからといってあうあわぬはあるわけで、自分には何を伝えたいのかピンとこなかった。
ピンとこなくてもグッとくる映画はある。ホウ・シャオシェンの大半の作品とか、ハネケの「白いリボン」とか。でも「ウィンターズ・ボーン」はグッともこなかった。
しかしそうはいっても、この映画はハードボイルドというジャンルに括ってさし支えない映画だ。
ハードボイルド映画好きの視点から、色々興味深いものは見えてくる
アメリカの片田舎で17歳の少女が父親の死体を探す物語。
疾走した父は死んだと確信した少女は、家族のために父親の死亡届けが必要になる。しかし彼女の父親探しを妨害する村の人々。
ちらつく村の顔役の影。暴力。妨害に屈せず父の死の真相探しを続ける少女。
ハードボイルドといえば大都会を舞台にするのが定番だ。その方が多数に媚びず己を貫くハードボイルドヒーローのかっこよさが引き立つ。
けども本作はドのつくような田舎が舞台だ。
田舎が舞台の名作ハードボイルドだってある。有名どころでは「夜の大捜査線」がそうだろうし、無名どころでは「レッド・ロック 裏切りの銃弾」という映画が大好きだ。「メメント」だって田舎ハードボイルドに含めていいかもしれない。けども、今あげた三つに共通しているのは、主人公がどっか他所から来た流れ者であるという点だ。地元のルールを無視して己を貫く姿がかっこ良かった。
対して「ウィンターズ・ボーン」の少女は流れ者どころか生まれも育ちも舞台となるその村のバリバリの地元民だ。
それがかえって、他者に媚びず己を貫く姿を強調する物語上の装置となる。
基本的に人々が他人に無関心な大都会と違い、狭い社会の田舎は皆がお互いをよく知り気にかけている場所だ。善くも悪くも馴れ合いがある。そこであえて往年のハードボイルドヒーローのように己を貫く事がどれだけ苦しいか。しかもそれをたかだか10代後半の少女が務めている。プレッシャーもストレスも都会のヒーローの何倍にもなるだろうし、敵が暴力に訴えたら最後なす術無いフィジカル面の弱々しさ。
そう思うと本作のジェニファー・ローレンスは、ハンフリー・ボガートやロバート・ミッチャムやジャック・ニコルソンよりもタフに思えてくる。
そうしてハードボイルド的視点で考えると、ハードボイルドのお約束、ファム・ファタールが登場しないのが残念。もちろん女の子が主人公だから男を誘惑する悪女の出番はない。
悪女的な人物はいたが、しょせんは脇役。
けども考えてみれば疾走した父親こそが、主人公に破滅をもたらしかけた悪い奴。そいつの後始末をする物語だから、性別を逆転すればファムファタールが死んだところから始まる探偵物語なのか。
ちょいと話それるけど、初登場時には真犯人かもしれんくらいに怪しさと恐ろしさ爆裂だったおじさんが、実は頼れる仲間だった的展開が意外で楽しめた
個人的にはあまり楽しめなかった本作であるが、数々のタフな女監督を排出したアメリカ合衆国からまた一人デブラ・グラニックという女監督が登場したことは忘れない。
********
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
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[鑑賞は2011年に劇場で・・・]
松本地域では、2011年の年末に劇場公開。派手めな年末映画がならぶ中ひっそり公開された地味な映画。
けども、サンダンス映画祭グランプリで、アカデミー賞作品賞候補となれば映画好きとしては外すわけには行かぬ・・・と観に行ってきたのであった。
しかし、絶賛されているからといってあうあわぬはあるわけで、自分には何を伝えたいのかピンとこなかった。
ピンとこなくてもグッとくる映画はある。ホウ・シャオシェンの大半の作品とか、ハネケの「白いリボン」とか。でも「ウィンターズ・ボーン」はグッともこなかった。
しかしそうはいっても、この映画はハードボイルドというジャンルに括ってさし支えない映画だ。
ハードボイルド映画好きの視点から、色々興味深いものは見えてくる
アメリカの片田舎で17歳の少女が父親の死体を探す物語。
疾走した父は死んだと確信した少女は、家族のために父親の死亡届けが必要になる。しかし彼女の父親探しを妨害する村の人々。
ちらつく村の顔役の影。暴力。妨害に屈せず父の死の真相探しを続ける少女。
ハードボイルドといえば大都会を舞台にするのが定番だ。その方が多数に媚びず己を貫くハードボイルドヒーローのかっこよさが引き立つ。
けども本作はドのつくような田舎が舞台だ。
田舎が舞台の名作ハードボイルドだってある。有名どころでは「夜の大捜査線」がそうだろうし、無名どころでは「レッド・ロック 裏切りの銃弾」という映画が大好きだ。「メメント」だって田舎ハードボイルドに含めていいかもしれない。けども、今あげた三つに共通しているのは、主人公がどっか他所から来た流れ者であるという点だ。地元のルールを無視して己を貫く姿がかっこ良かった。
対して「ウィンターズ・ボーン」の少女は流れ者どころか生まれも育ちも舞台となるその村のバリバリの地元民だ。
それがかえって、他者に媚びず己を貫く姿を強調する物語上の装置となる。
基本的に人々が他人に無関心な大都会と違い、狭い社会の田舎は皆がお互いをよく知り気にかけている場所だ。善くも悪くも馴れ合いがある。そこであえて往年のハードボイルドヒーローのように己を貫く事がどれだけ苦しいか。しかもそれをたかだか10代後半の少女が務めている。プレッシャーもストレスも都会のヒーローの何倍にもなるだろうし、敵が暴力に訴えたら最後なす術無いフィジカル面の弱々しさ。
そう思うと本作のジェニファー・ローレンスは、ハンフリー・ボガートやロバート・ミッチャムやジャック・ニコルソンよりもタフに思えてくる。
そうしてハードボイルド的視点で考えると、ハードボイルドのお約束、ファム・ファタールが登場しないのが残念。もちろん女の子が主人公だから男を誘惑する悪女の出番はない。
悪女的な人物はいたが、しょせんは脇役。
けども考えてみれば疾走した父親こそが、主人公に破滅をもたらしかけた悪い奴。そいつの後始末をする物語だから、性別を逆転すればファムファタールが死んだところから始まる探偵物語なのか。
ちょいと話それるけど、初登場時には真犯人かもしれんくらいに怪しさと恐ろしさ爆裂だったおじさんが、実は頼れる仲間だった的展開が意外で楽しめた
個人的にはあまり楽しめなかった本作であるが、数々のタフな女監督を排出したアメリカ合衆国からまた一人デブラ・グラニックという女監督が登場したことは忘れない。
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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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