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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

大鹿村騒動記 【監督:阪本順治】

2012-04-10 19:51:34 | 映評 2011~2012
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]

[鑑賞は2011年に劇場で・・・]

少し前は阪本監督の映画が苦手だった。
映像の美しさが無い作品群に良さを見いだせなかった。はじめて観たのが「トカレフ」だったのも悪かったのかもしれない。傑作と評価の高い「顔」ですら泥臭いだけの映画にしか思えなかった。

阪本監督の映画は美しいロケーションは無いし、カット割りや編集の妙で楽しませることもない。
カメラは引かず寄らず、カット割りも細かく刻むことはない。
アクション映画をよく撮るが、ジョン・ウーならアップ多めに細かく刻んでリズミカルかつエモーショナルに描くところを、阪本監督は引きめのカメラでカットを少なく撮るので、観ていてなんだか盛り上がらない。
ヒッチコックのようにアップと超ロングによる視界の変化もないし、晩年の黒澤みたいに徹底的に引くわけでもない。
つかずはなれず。
映画的な感じがしなかった。けど最近何となく好きになってきた。
多分、映像とか編集とかでなくて脚本を大事にする監督なんだと思う。台詞と物語で丁寧に感情を積み重ねていく。その結果一番うまくいったのが近年だと「闇の子どもたち」ではないか

それはさておき「大鹿村騒動記」。
例によって映像や編集による高揚感は得られない。
佐藤浩市、岸部一徳、大楠道代といった阪本映画の常連俳優たちの気心しれたような演技。瑛太、松たか子といった若い人気者から三国連太郎のような超ベテランまでそろって、様々なカップル、男と女の事情がつかず離れずのカメラで語られていく。
美術的なこだわりの感じられない映像も、大鹿村から見えるであろう雄大な南アルプスにほぼ興味を示さないカメラも、もったいないなと思いつつも、無駄なくエピソードを積み重ねていき、単純に物語と芝居の面白さに酔う。
多分、映像の持つ表面的な美しさに興味がないのだろう。物語と人間、さらに言えば俳優たちと勝負する事が好きなのだろう。
そしてもちろん何といっても原田芳雄の芝居。これが最大の魅力である事は疑いない。主役は大鹿村でも歌舞伎でも映像でも編集でもなくひたすら原田芳雄なのだ。最後にここまでカメラで全身を写され続けて役者人生を終えるのは、なんと羨ましい生き方だろう。

男と女はいくつになっても、何があってもオトコとオンナ。世界はオトコとオンナで出来ている。そんなことを感じさせる物語を、さらりと余計なものを入れずに描いた映画。そんな印象。

ただし、あえて苦言を呈すなら、音楽の使い方ではないか。
クライマックスの歌舞伎のシーンに絶対音楽は余計だったと思う。
せっかく歌舞伎を観に行ったのに、隣の劇場からかかる音楽がうるさい・・・みたいな印象を持った。
大鹿村歌舞伎の生の音と、原田と大楠の芝居だけで、終盤は楽しみたかった


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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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