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【映評】めぐり逢わせのお弁当 [食事は最高のコミュニケーション]

2014-12-09 12:20:43 | 映評 2013~
80点(100点満点)
2014年10月20日、新宿シネマカリテにて鑑賞

インド映画の佳作。といっても事あるごとにスーパースターがかっこいいダンスをキメまくる映画ではなく、欧米の映画祭狙いのような静かで詩的な語り口の切なくも心あたたまるドラマ。
こういう映画悪く思う人はいないだろう。その点でオススメしやすいが、物語的には予想を超える展開にはならない。
「物語の中で主人公は成長しなくてはならない」と、どんな脚本の本にも書いてある通りに、練られた構成。
主人公が人付き合いが嫌いで人に心を開かず、近所の子供たちにも冷たく接している描写が三幕構成の第一幕で描かれる。すると当然のように三幕目では子供たちと優しく接する描写がくるわけだ。などなど、第一幕で提示されたあれやこれやが綺麗にまとめられていくのは脚本家のテクニックを感じる。分かっちゃいるけどいいものはいい。
全般、映画をよく勉強した人が丁寧に作った印象。逆に意外性はない。
それでも、カフェでおっさんと女性がついに会うや会わずやのところは先の読めないハラハラ感を楽しめた。

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日本では馴染みがないが、インドでは弁当の宅配サービスがあるらしい。
亭主を送り出した後から妻が亭主のために弁当を作り、それを宅配業者が亭主の職場に持って行ってくれる。
弁当屋に配送を頼むこともできるらしい。
インドは暑いから朝から弁当持っていったら悪くなるのかもしれないし、スパイスの効いた料理が多いから直前に届くぐらいにしないと職場にカレーの香りが充満してしまうのかもしれない。
ともかく、インド独自のこのシステムで弁当の配送間違いが起こることからの、弁当とメモを通した男女の触れ合いとすれ違いのドラマ。

男女の物語であり人生の物語であり、そして食べる物語である。
美味しい食事で夫婦の愛を取り戻そうとする女性。美味しい食事で硬い心がほぐされていく初老の男。
そして帰りの電車の中で夕食のために野菜の下ごしらえをする初老の男の部下。
彼は孤独を愛するように一人で昼食をとる初老の男のそばに無理矢理入って食事を共にし、初老の男を自分のせまい家に招いて食事を振舞ったりする。その食事は決してご馳走といえるような立派なものではないけれど、食べることがもっとも効果的なコミュニケーションであると知っているのだ。実際、二人の絆は深まり初老の男は優しくなっていく。

一方で登場する女性たちは主人公も、主人公のアパートのおばちゃんも、若い男と駆け落ちして結婚したという妻も、食事を味わう存在ではなく作って振舞う存在だ。
なるほど男は女に生かされている。

映画の中では女たちは食べることより作ることがコミュニケーションになっている。そしてちゃんと味わってくれる人を好きになる。
食事を作ってくれる家族に感謝しなくてはならない。
そんなことを感じさせてくれたインドからの素敵な映画だった。


『めぐり逢わせのお弁当』
監督・脚本:リテーシュ・バトラ
出演:イルファーン・カーン、ニムラト・カウル、ナワーズッディーン・シッディーキー

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---

@shinpen: 「めぐり逢わせのお弁当」印象的な出だし、回収される伏線、少しずつ高まる気持ち、成長する主人公たち、着地点がわからない故に引き込まれるストーリー、ラストの余韻…この種のドラマのお手本のような佳作。

@shinpen: 「めぐり逢わせのお弁当」
でも丁寧にまとまりすぎてる印象も。サプライズや予測不能な不純物とか、そういうのが映画を普通からスゴイに変えるんだけどな~
ま、でも優しい気持ちになりたい人には絶対オススメ


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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート


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