というわけで前回につづけましてジェリー・ゴールドスミス私的ベストテンの第6位〜4位の発表です。
ちなみに10位〜7位はこちら↓
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さて、6位〜4位です!
第6位 ポルターガイスト(1982 )
第5位 猿の惑星(1968 )
第4位 パットン大戦車軍団(1970 )
【第6位 ポルターガイスト(1982 )】
実質的にスピルバーグが監督したと言われるファミリー向けホラー映画という新たなジャンル。E.T.を撮影中だったので契約上別の会社の映画と監督を掛け持ちできず、ホラー映画の得意なトビー・フーパーを監督に据えながら実際には撮影も編集もスピルバーグがほとんど現場を仕切っていたそうです。
で、多分ジョン・ウィリアムズはE.T.で忙しかったのと、なんと言ってもホラーならジェリーってことで、ジェリーの起用となりました。
ジェリーの音楽は強烈で、ホラー映画に怖いかつ美しい曲という『オーメン』や『エイリアン』で確立した方法論を踏襲しつつも、恐怖シーンで耳を襲うのは景気よく鳴る金管群。プップカ馬鹿みたいに鳴る、別の意味で怖い音楽。それは狂気とも取れるし、この状況でゲラゲラ笑う生きた人間とは全く価値観の違う霊たちの心象を音楽にしたものでした。この発想の凄さは本当に感服ものです。
さらに神秘的なコーラスも混ざり合い、様々な音色が渾然一体となり、劇中の壁から溢れてくる霊たちよろしく、音楽の奔流に巻き込まれるような勢いを感じます。
そうやってヘトヘトになったところで、エンドタイトル曲、家族の末っ子の女の子キャリーアンちゃんのテーマの美しさと安らかさに、ホォぉぉっと息を吐いて恐怖の祭典が終わり平和の訪れを感じるのです。この「キャリーアンのテーマ」ホラー映画のテーマ曲とは思えない名曲です。
【第5位 猿の惑星(1968 )】
ゴールドスミスの盟友と呼べる監督は何人かいるのですが、とりわけ強い絆を感じるのがフランクリンJシャフナー監督で、他に『パットン大戦車軍団』『パピヨン』『ブラジルから来た少年』などでも傑作スコアを残しています。
そんなシャフナー監督と手がけたSF映画の古典的作品です。
常にキャッチーなメロディを生み出し続けてきたゴールドスミスが、その長いキャリアでほぼ例外といってもいいくらいに、明確なメロディを打ち出さなかった作品です。
さまざまな打楽器と、木管群を中心としたオケによるメロディ性の一切感じない楽曲は、地球上のどの時代とも、どの文化とも類似性を感じさせません。それは猿たちの支配する惑星に迷い込んだチャールトン・ヘストンらの困惑を表現すると同時に、あの有名なラストシーンを強調するために、ストーリーと演出と一体となって観客をミスリードするための映画的な戦略の上に築かれたスコアだったのです!
これも来日コンサートで、サントラの3曲くらいをピックアップした組曲が披露されたのですが、打楽器が嵐のように襲ってくる異様な雰囲気に圧倒されたのを思い出します。
【第4位 パットン大戦車軍団(1970 )】
またシャフナー監督作品です。敵よりも味方に恐れられた第二次大戦の米軍の猛将パットンの伝記映画です。
オープニングタイトルは、戦場となった砂漠の荒地の映像(パットン赴任前のアメリカ軍がドイツのロンメル将軍に大敗を喫した戦場)でそこに、乾いたトランペットの音が虚しくこだまするように響きます。やがて敬虔なクリスチャンでもあったパットンのキャラを彷彿とさせるようなオルガンの音色が厳かに響いてきて、続けてピッコロの独奏による軍隊風のマーチが寂しげに始まりますがやがてフルオーケストラによる壮大なマーチへと展開し、その後の勝利を予感させます。
このメインテーマを軸に劇中のBGMも構成され、パットンの基本的に獰猛ながらも時々へんにお茶目だったり、子供のように無邪気だったりするキャラクターとしての面白さをゴールドスミスは音楽で見事に表現しています。
他にドイツ軍のテーマもかっこいいのです。ドイツ軍のテーマというよりドイツ軍の猛攻に晒される連合軍側の心情を描いているような曲で、バルジの戦いのシーンでは転調したパットンのテーマと交互に奏でられて戦いの険しさを感じさせます。
来日コンサートでは『マッカーサー』のテーマ曲とセットになった「将軍組曲」として演奏されました。
持っているサントラは映画よりだいぶ後の90年代になってからゴールドスミス自らロイヤル・スコティッシュ・オーケストラを使って再録音したもので、『トラ!トラ!トラ!』の楽曲もカップリングされていて、これはこれでパットン&山本五十六の将軍組曲ですね。
そうなのです。70年代はゴールドスミスの戦争映画音楽全盛期で他にも『脱走特急』『ブルーマックス』などあちこちでゴールドスミスの音楽とともに戦車が吹っ飛び戦闘機が墜落していたものです。
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さて、いよいよベスト3と行きたいところですが、続きは次回で!
それではまた素晴らしき音楽と映画でお会いしましょう!