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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

映像作品とクラシック音楽 第54回 ジェリー・ゴールドスミス 私的ベストテン(3位〜1位)

2022-02-05 13:54:00 | 映像作品とクラシック音楽
というわけで前回につづけましてジェリー・ゴールドスミス私的ベストテンのいよいよベスト3です、
ちなみに10位〜7位はこちら↓


6位〜4位はこちら↓

さて、ベスト3です!

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【第3位 グレムリン(1984 )】
ゴールドスミスの遺作は先にも書いた『ルーニーテューンズ』ですがその監督こそジョー・ダンテで、彼もゴールドスミスにとってシャフナーと同じくらいの絆を感じる監督でした。
そのダンテ×ゴールドスミスのコンビの最高傑作は間違いなく『グレムリン』です。

『ポルターガイスト』と同じ方法論による「恐怖シーンに楽しげな音楽を鳴らす」のが印象深いのですが、さらに飛躍してシンセの音と電子パーカッションによるノリノリなナンバー、その名も「グレムリンラグ」がかかります。楽しげを超えて悪ノリしまくりです。

サントラの電子音パリパリなポップ調も最高なのですが、コンサート用のオーケストラアレンジ版もまた素晴らしく、アルバム「GOLDSMITH conducts GOLDSMITH」で堪能できます。このアルバムですがフィルハーモニア管の演奏も素晴らしく、ゴールドスミスの名曲の数々を堪能できてかなりおススメです。

先にも書いたゴールドスミス来日コンサートの予定外のアンコール曲がジョー・ダンテメドレーで、『スモールソルジャーズ』と「グレムリンラグ」をつなげた組曲でした。実はこの曲はコンサートのプログラムの曲としてすでに演奏されていたのですが、鳴り止まない拍手に押されて、しょうがないなぁ、またあれやるか…って感じでその日2回目の演奏となったのです。会場はグレムリンのリズミカルな曲に合わせて自然と手拍子が打たれ、ゴールドスミスとオーケストラと観客席が一体化したような感動がありました。その時のことをゴールドスミスもキネ旬のインタビューで「あんな経験は初めてでとても楽しかった」と言ってました。そういう自分の良い思い出とのリンクもあって、かなり贔屓の作品です。

ちなみに、『グレムリン』の劇中でゴールドスミスがカメオ出演しています。主人公のお父さんが発明品の見本市で家に電話をかけているシーンで、お父さんの後ろでカウボーイハットをかぶってニヤけてるオジサンがゴールドスミスです。

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【第2位 ロシア・ハウス(1990 )】
あまり有名な映画ではありませんが、映画も音楽も多くの方にオススメしたい名作です。

実を言えばJGベストテンを書こうと思ったのは、この『ロシア・ハウス』をご紹介したかったからと言っても過言ではありません。
北海道出身で、山形の大学で学び、松本で10数年過ごした私は、このアルバムはなぜか雪がちらつく季節、冬の真っ盛りというより、冬の始まりと冬の終わりごろに、無性に聴きたくなるのです。
そういう時期に人生の転機を迎えることが多く、そういう時にCD棚から取り出して聞く事が多かった気がします。一抹の寂しさを感じる心に、ロシアハウスの音楽はそっと心に入ってきた気がします。
映画の切なさと、ロシアの寒空のイメージの思い出とのリンクもあるのでしょう。
それくらい、私の心の曲です。
じゃあなんで2位なんだよと思わずにお付き合いください。

映画はショーン・コネリー演じる素人スパイが(コネリーが「素人」スパイなわけないだろってツッコミはやめてください)Mi6とCIAとKGBをも手玉にとってソ連から好きな女性(ミシェル・ファイファー)とその家族を脱出させようとする、スパイ映画でありながら実はラブロマンス映画です。
ゴールドスミスの音楽はソプラノサックスをメイン楽器に添えて、ストリングスが同じメロディを追いかけるという『チャイナタウン』と同じ方法論ではありますが、その哀愁漂いつつも行き着くところは悲しみではなく愛、というところが良いです。
全体的にジャズ調、ところどころポップス調かもしれず、実際メインメロディに歌詞をつけた本編未使用の主題歌まで収録してゴールドスミスの本作への思い入れの程が伺えます。

メインタイトル曲「Katya」(ミシェル・ファイファーの役名)は全ゴールドスミス史上のナンバーワンの名曲と思っています。
エンドタイトル曲「The Famiy Arrives」はゴールドスミスのジャズへの造詣の深さを示していますが、それだけでなく映画のテーマである、愛とヒューマニズムの讃歌を軽やかに歌い上げ、しかも映画内の主要テーマメドレーとしても楽しめる技アリの一曲です。

ソプラノサックスはジャズの世界の人気奏者のブランフォード・マルサリスを起用し、ラブテーマだけでなくサスペンスシーンでもマルサリスの美しいサックスの音が彩りを添えます。
余談ですがこの映画でブランフォード・マルサリスを知り、彼のジャズアルバムも結構集めました。マルサリスはサントラでもジェームズ・ホーナーの『スニーカーズ』でサックスソロを担当しています。以前にも書きましたが『スニーカーズ』は私の一番好きなホーナー作品でして、『ロシアハウス』と『スニーカーズ』の両方に参加しているブランフォード・マルサリスは私の中でかなり特別な存在です。
なおゴールドスミスの来日コンサートでは、ソプラノサックスをオーボエに置き換えたバージョンで演奏されました。それもまたうっとりするような名演でした。

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【第1位 スタートレック(1979〜2002)】
堂々第一位は『スタートレック』シリーズです。
バリバリのトレッキーで、スタートレックと共に生きてきたような私なのでこれ以外にジェリーの1位はあり得ません。

全10作(リメイク版除く)作られた映画版のうち5作品で音楽を担当。10作目はゴールドスミスの最晩年でもありました。またテレビシリーズでも『ネクストジェネレーション』シリーズと、『ヴォイジャー』でテーマ曲の作曲を担当。正にゴールドスミスにとってのライフワークと呼ぶにふさわしいSFシリーズな訳です。
映画版だけでも長いシリーズなので浮き沈みはあるのですが、よりにもよって一番不人気の「5」と「1」を担当したのが幸か不幸か、むしろそのおかげでプロデューサーの信頼を得て「8」「9」「10」の連続起用に繋がったと思います。

「5」は裏アカデミー賞というかワースト映画を笑い飛ばすラジー賞を総ナメしたある意味で伝説的作品ですが、ゴールドスミスを再招聘した事だけは功績として評価すべきです。スコアは元気というか空元気にスカッと宇宙に鳴り響きます。クリンゴン帝国との交戦シーンのライトモティーフ入り乱れる楽曲などゴールドスミスの劇伴職人ぶりを堪能できます。

「1」はストーリーは良いのですが、どう考えても編集が下手で、そのシーン長すぎだろ!ってファンですら思うシーンがたくさんあるのです。
ですが困ったことに、そういうシーンに限ってゴールドスミスの音楽が良いんです。もう目を閉じてゴールドスミスの交響詩を聴く気分になってください。ってじゃあ、サントラでいいじゃん!
映画として猛烈ダメなんですが音楽が最高にいいシーンが、カークがエンタープライズに搭乗するまで小型シャトルでエンタープライズの周りをゆっくりと飛ぶなんと6分間にも及ぶシーンです。ほぼ台詞なしでエンタープライズを万感の想いで見つめるカークを描き続けます。
その間のゴールドスミスの音楽はカークの気持ちに寄り添うように、カメラが顔によれば静かに、カメラがエンタープライズの全景を捉えればシンバルと共にフルオーケストラの盛大なファンファーレが。そしてカークのシャトルがドッキングするのに合わせて音楽は最高潮に高まっていき、シーンの終わりと共に壮大なるコーダが鳴り終わります。
このシーンの曲名は「エンタープライズ」と言うのですが、個人的にはスタートレックで1番の名曲だと思います。映画的には早送りしたくなるシーンなんですけどね(笑

「8」はジャン=リュック・ピカード艦長らにメインキャストが入れ替わったカークやスポックのスタートレックから80年後の世界を舞台にした新シリーズの映画版で、人類が初めて異星人とコンタクトをとった歴史的な1日にタイムスリップしてきたエンタープライズと、人類を歴史から抹殺しようとする侵略者ボーグとの戦いが描かれます。人類の素晴らしい未来を祝福するファーストコンタクトのテーマがとても美しく、多くの人に聴いていただきたい名曲です。

「10」のクライマックスのアクションシーンの音楽の勇ましさはゴールドスミスがアクションシーン音楽の達人だったことを私たちに伝えてくれます。

スタートレック映画シリーズは「2」「3」はジェームズ・ホーナー、「4」はレナード・ローゼンマンなど全部で5人の作曲家が関わり、作曲家が変わるたびにメインテーマも変わって来ました。(テレビシリーズのテーマ曲の冒頭部分だけは毎回必ず使われて、それがシリーズの統一感を出していたのですが)
スターウォーズのようにいつも同じテーマというのももちろん良いのですが、スタートレックのような色んな作曲家が自由に個性をぶつけ合うというのも、面白かったです。
そんな中でもゴールドスミスの音楽は、帰ってきてほっとする実家のような感じでした。『007』で言えばジョン・バリーのような位置付けですね。
最晩年まで愛情を込めて音楽を作り続けてくれたゴールドスミスの音楽こそ、シリーズのハートのコアになっていたと思います。

なお、ゴールドスミス自作自演アルバムでSF作品のテーマ曲を集めた「FRONTIER」で、「スタートレック・ファーストコンタクト」と、上述の長ーいカーク乗船シーンの曲「エンタープライズ」を、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル・オーケストラによる濃厚な演奏で聴くことができます。サントラよりズシリとした質感の演奏で聞き応えあります。





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などと、猛烈に書き殴ったゴールドスミスベストテンでした。
他にも肉汁あふれる『ランボー』シリーズや、これぞSFな音楽『トータルリコール』、ゴールドスミスが自ら会心の作と述懐したディズニーアニメ『ムーラン』、アカデミー賞受賞の恐怖すぎる『オーメン』、シンセサイザーだけで全部のスコアを作った『未来警察』、アメリカ万歳な『エアフォースワン』、アメリカ非道いな『カプリコン1 』などベスト20でも足りないくらいの名作名曲の宝庫なのですが、とりあえず「ジェリー・ゴールドスミスってなんか凄そう…」とだけ思っていただけたら満足です。

などと好き勝手書いていたら本シリーズ投稿1周年を迎えました。
こちらのグループでは飛び道具的な投稿ですが、今までお読みくださりありがとうございました
次は2周年目指して勝手に頑張ろうと思います!

それでは今回はこんなところで!
また素晴らしい映画と素晴らしい音楽でお会いしましょう!!

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