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ハードボイルド 新・男たちの挽歌

2005-08-30 00:09:18 | チョウ・ユンファ
自分の映画ファン人生に強い影響を与えた映画。
チョウ・ユンファ&ジョン・ウーとの邂逅

この映画を観るまで、香港映画は好きじゃなかった。
もちろん、小学校のころとかTV放映されたジャッキー映画は観たし、放送翌日は学校でジャッキーごっこをやったりした。
しかし、映画にストーリー性とかテーマ性とか求めるようになってくると、ストーリーなし、テーマ=アクションというジャッキーはじめとする香港映画は「格下」と見下すようになった。
それで中学・高校は「格上」のハリウッド映画をむさぼるように観た。
大学に入ると、様々なタイプの映画好きと出会い一気に視野が広がる。クラシックな映画、ヨーロッパの映画を次々と観た。2~3ヶ月の間に、ベルイマン、タルコフスキー、フェリーニ、ヴィスコンティ、トリュフォー・・・小津に黒澤、小川紳介のドキュメンタリー、イギリス時代のヒッチコック、ジョン・フォード、ジャームッシュにヴェンダースに・・・・
で、ある時ふと気づくと、私はヘトヘトに疲れていた。

内容なんかなんもなく、ただひたすらアクションしてる映画が観てえぇぇっ・・・という衝動にかられフラフラとレンタルビデオ屋に行った。内容なしでひたすらアクションと考えて、即座に思いついたのは「格下」香港映画だった。
そして、一本のビデオが目に留まった。「ハードボイルド 新・男たちの挽歌」というタイトル。正直に言う。私はこの時、ウーを知らなかった。ユンファも挽歌も名前は知ってる程度だった。この映画に惹かれた理由はビデオのパッケージのこんな感じのコピー
「歴代香港映画史上最多銃弾発射数」
これだ。これしかない。今の俺を癒せるのはこれしかない!!と確信して早速家に帰って鑑賞。

・・・・・・・それが、ジョン・ウーとチョウ・ユンファとの衝撃的な出会いとなった

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チョウ・ユンファとかいう男は、汗と唾と血を吹き出しながら熱い台詞を吐きつつ、ショットガンやマシンガンや2丁拳銃で悪党どもを虫けらのように殺していった。病院が戦場と化し、ユンファという男は病院設備もめためたに壊しながら、猫屋敷のごとくそこら中に潜んでいる悪党どもを次々と撃ち殺していった(スローモーションで)
今にして思えばいきなりクライマックスなオープニングアクションは、ジャパンの名バイプレイヤー國村準との対決だ。2人の撃ちまくる銃弾はそこら中のものを粉々に破壊し、流れ弾で人が死に、飛び回り転げ回って、最後にユンファが準にトドメをさした。ちなみに國村準はウーとマブダチらしい。羨ましい。

トニー・レオンと初めて出会ったのももちろんこの映画だ。顔だけで考えれば絶対ユンファよりイケメンで、静かな芸風もこのころから変わっていない。トニーと敵の中ボスとの対決も美しかった。敵の中ボスとトニーが銃を向け合い対峙すると、2人の間には病人と看護婦。中ボスは銃を下ろし、行け、と促す。敵がかっこいい・・・なんてこった。「格上」と思っていたハリウッド映画にそんなかっこいい敵はいなかった。
ちなみにトニーはこの作品で香港のアカデミー賞と呼ばれる、香港電影金像奨において、助演男優賞にノミネート。しかし「主演と助演の基準は何か?」ともの申し受賞を辞退。そうするとジョン・ウーがアメリカからトニーに電話し「主演でも助演でもどちらにせよ、君がとてもいい演技をしたことは私が一番よく知っている」と話し、トニーは大感動したそうだ。香港人たちは映画の外でも熱い。

見た目がいけてるトニーは文句無くこの映画で好きになったのだが、ユンファとかいうただのおっさんぽい容貌の、クレージーな男を即座に好きになるには抵抗が大き過ぎた。しかし私の心に強く刻まれたのは、時々愛嬌ある顔をし、ノリノリでギャグをかたり、ある意味もっとノリノリで悪党どもに銃弾を撃ち込みまくっていた、おっさんくさいユンファとかいう熱い男だった。

でもそれからしばらくは、ユンファより、監督ジョン・ウーのスタイリッシュなアクションが観たくて、あれこれと彼の映画をレンタル屋で物色したのだ。ウーの映画を色々観るという事は、当然ユンファとかいう男の全てを観ることになり・・・そしていつしか私は、チョウ・ユンファを世界一愛するようになっていた。
そしていつしか、ユンファ、レスリー、トニー・・・ウー、リンゴ・ラム、ツイ・ハークらが織りなす香港映画は、私にとって完全に「格上」、特にユンファは「別格」となっていた。

初ユンファ、初ウーが「ハードボイルド」だったのは運が良かった。ハリウッドアクションで育った私にとって「ハードボイルド」は、予算もがっぷりかけられてて、映像もかっこよくて、とっつき安い作品だった。作家主義にかぶれ出していた私にとってもウー節が成熟の域に達した「ハードボイルド」は興味深いものだった。ウーの最高傑作は「男たちの挽歌」だと思うが、いきなりそれを観たら、スタイリッシュになりきっていない演出に拒否反応を示したかもしれない。「ハードボイルド」のユンファも他のウー作品のユンファに比べると薄くて初心者に優しい。そうはいっても日本やアメリカの誰よりも濃かったが。

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話はずれるが、それから10年くらいたったころ、ハードボイルドのサントラを発見し、即買いした。ジャケは右手にショットガン、左手に赤ん坊を抱えるユンファの姿だった。
大きな目で赤ん坊を癒しながら耳栓をして、襲い来る悪党どもに殺しまくるシーンだ。赤ん坊と殺し。生と死の対比。ウーが得意とする演出が冴えるシーン。激しいアクションの後、ユンファの服に火がついた。赤ん坊はおしっこをして火を消した。このあまりにも判りやすい子供賛歌。感動しまくったが今観ると笑える名シーンだ。
話がずれた。サントラはマイケル・ギブスという全く聞いた事ない作曲家が担当。80年代風電子音楽にサックスがかぶさるかっこいい音楽も他の香港映画のチープな音楽とは一線を画していた。

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