この記事では、映画『男たちの挽歌2』(以下、挽歌2)の映評を、ティ・ロンが演じたホーさんの登場シーンに限定して色々書いていく。
<1-I ストーリーに沿ったポイント解説>
ホーの初登場シーン
前作と同じく、悪夢にうなされ汗びっしょりで目覚めるホーさん。弟思いのホーさんは、弟キット(レスリー・チャン)が撃たれる夢にうなされている。そのついでに前作のハイライトを夢で見てくれるというサービスのよさも示す。このオープニングで何回観ても疑問に感じるのは、ホーさんがいくらなんでも汗かきすぎているんでないか?ということだ。
悪夢にうなされる以前に何か悪い病気じゃないか?と心配になる。とはいえ、このシーンは演出も演技も前作とほぼ同じなので今更つっこむのはよそう。
さて、服役中のホーさんは、警察から取引を持ちかけられる。ホーさんの恩人であり、かつての黒社会の顔役であり、現在はカタギとして造船業を営むルンさんを内偵しろという。警察はルンさんが今なお偽札製造を手がけていると疑っている。が、ルンさんをリスペクトするホーさんは「あの人は足を洗った」と信じて、警察との取引きを拒否。
ところが、ホーさんが断った潜入任務を、ホーの弟キットが引き受けたと知って、異様に弟思いのホーさんは潜入捜査に志願する。
刑務所から脱走してきたと嘘をつきルンさんに助けを求めるホーさん。そんなホーさんにルンさんは、
「男が悪事を働いたら立派に務めを果たし胸を張って刑務所を出て来い・・・」
と諭すのでした(詳細はディーン・セク(ルンさん)編に)。
いっぽうすでにルンさんの組織に潜入したキットに、後は俺がやるからお前は手を引けと迫るホーさん。だが頑固なキットは
「このまま続ける、続けてかつて黒社会の一員だった兄さんの気持ちを少しでも理解したいんだ」
と言う。弟の頑固さを知っている兄は仕方がないとあきらめるのだった(詳細はレスリー(キット)編に)
さて、あれやこれやでルンさんは造船会社を乗っ取ろうとする悪い奴らの罠にはまり、殺人の汚名を着せられる。
ホーさんはルンさんをつれて、かつて刑務所から出所した自分を温かく迎えてくれたタクシー会社のキンさんのところにつれていく。そしてキンさんの手配でN.Y.へと国外逃亡。この時のキンさんが名台詞を吐くので紹介する。
ほとぼりが冷めるまでN.Y.に逃がそうというホーに対して
「俺の主義に反するな・・・でも主義は変える」
そんなこんなでルンさんを無事N.Y.に送ったホーさんであるが、ルンさんが心配でたまらない。ああ、こんな時マークがいればなぁ・・と思っていた時、ホーさんは一人の画家に出会う。その人はホーさんやマークの生き様を描き続けている人だった(何故?)。
そして、そこでホーさんは、マークには双子の弟がいて、今はN.Y.で若い奴らを束ねて移民グループのボスをやっている、という衝撃の事実を知る!!(詳細はユンファ(ケン)編に)
・・・とここまで、ことごとく他の人たちにおいしい場面を持っていかれ、頭ばかりか影まで薄くなったホーさん。前作の主役なのに・・・。しかし勿論、我らがジョン・ウーはホーさんをこのままほっとくような冷血漢ではない。熱い熱い中華の血がたぎる男である。
過去に黒社会で名を轟かせたホーさんは、ルンさんを裏切った組織に潜入成功。ボスは忠誠を試したいからおとり捜査官を殺せと命じ、ひきあわされた捜査官はキットだった。
組織に潜入するには弟を撃たねばならない。組織の面々が見守る中、ホーさんはまずキットのわき腹に一発。その後1~2分にわたって苦悩し躊躇し他ならぬキット自身に「撃て!」と説得されて2発目。
ここまでじらせたら、正体ばれるだろ!!と思うが、いかに任務とはいえ弟をためらわず撃つような描写をジョン・ウーはさせない。
その後、悪の組織が撤収したところで、ホーさんは戻ってきて、息も絶え絶えのキットを病院に送り込む。
その時のかなり必死な形相が感動的である。
さて、N.Y.ですったもんだの末、ルンさんと、マークの双子の弟ケンが戻ってくる。
ホーさんはうれしさのあまりか、池(小川?)の中をバシャバシャ飛沫あげながら駆けて来る。
↑晩歌2の何十回観ても笑えるが、何十回観ても意味不明でシュールなシーン
常に弟思いで過保護なくらいのホーさん。敵のアジトで元ルンさんが社長をやってた造船工場に殴り込みをかける際も、キットに来るなという。なにせキットの妻ジャッキーは今日がお産なのだ。この配慮は当然だったろう。しかし家族より任務が大事と若さゆえの判断でキットはホーさんたちとは別行動をとる。そして・・・キットは凶弾に倒れるのである(よく撃たれる奴だ)。
キットの歌声がバックグラウンドに響く中、ホーさんはもの言わぬキットと対面する。問題はここからだ。天才監督ジョン・ウーは凄まじい演出を見せる
上段左から3~4コマ 放心のあまり轢かれそうになるホーさん
下段左から2コマ 助けてくれた警備員の顔がキット?
下段左から3コマ え??超判りやすいモンタージュ
下段左から4コマ ブオトコに切り替わる。この役者が少し可哀想だ
そして怒りに燃えるホーさん、ケン、ルンさんは、キットを殺した組織の本部に殴り込みをかけるのである。
なにより皆の心を鷲掴みにしたのは、大ピンチというときキンさんが投げてよこす日本刀!!
ぶった斬り ぶった斬り
すっかり気に入ったのかラストでもしっかりと持っている。
「警部、引退はまだ早いですよ。やる事がたくさんある」
何気に名台詞
<1-II ティ・ロンの功績>
とにかく、挽歌シリーズは基本的にホーさん視点で進んでいくし、2でテーマがぶれはしたが、兄弟の絆こそジョン・ウーが最も描きたかったテーマである。(ただしユンファがあらゆる人間の予想を越えて光り輝いてしまったため、相対的に兄弟というテーマが薄らいだ)
そしてウーの理想の“兄”を(いろんな意味で)パーフェクトに体現していたのがティ・ロンだった。
ティ・ロンは武侠映画のスターだったそうだ(ワイヤー&CGの最近の武侠モノとは違うだろうが)。だからこの「2」で剣を振り回したりしたらしいし、キャリアにおいてユンファやレスリーをはるかに上回るのだ。しかし「2」ではなんだかんだで脇にまわされる。しかしウーがあまり気乗りせずに監督した「2」が物語的にかろうじてウー節をとどめることができたのはティ・ロンという役者が兄弟とは?というテーマをしっかりと抑えてくれたおかげだろう。
<1-III 私の知るティ・ロンの他の作品>
「男たちの挽歌」
「ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち」(監督:ジョン・ウー(誰かと共同))
「非情の街」(ユンファと共演のノワールもの)
「酔拳2」(ジャッキーの父役)
「流星」(レスリー主演のコメディ。未見。チケットを買ったが満員で劇場に入れず友達にやった。友達の話だとちょい役でティ・ロンが出てきてレスリーと語るシーンがあり、挽歌を彷彿させ感慨深かったそうだ)
************
『男たちの挽歌2』出演者別映評
<序章 デジタルリマスター版を批判する>
<第一章 ティ・ロン(ホーさん)編>
<第二章 レスリー(キット)編>
<第三章 ディーン・セク(ルンさん)編>
<第四章 ユンファ(ケン)編の前編>
<第四章 ユンファ(ケン)編の後編>
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<1-I ストーリーに沿ったポイント解説>
ホーの初登場シーン
前作と同じく、悪夢にうなされ汗びっしょりで目覚めるホーさん。弟思いのホーさんは、弟キット(レスリー・チャン)が撃たれる夢にうなされている。そのついでに前作のハイライトを夢で見てくれるというサービスのよさも示す。このオープニングで何回観ても疑問に感じるのは、ホーさんがいくらなんでも汗かきすぎているんでないか?ということだ。
悪夢にうなされる以前に何か悪い病気じゃないか?と心配になる。とはいえ、このシーンは演出も演技も前作とほぼ同じなので今更つっこむのはよそう。
さて、服役中のホーさんは、警察から取引を持ちかけられる。ホーさんの恩人であり、かつての黒社会の顔役であり、現在はカタギとして造船業を営むルンさんを内偵しろという。警察はルンさんが今なお偽札製造を手がけていると疑っている。が、ルンさんをリスペクトするホーさんは「あの人は足を洗った」と信じて、警察との取引きを拒否。
ところが、ホーさんが断った潜入任務を、ホーの弟キットが引き受けたと知って、異様に弟思いのホーさんは潜入捜査に志願する。
刑務所から脱走してきたと嘘をつきルンさんに助けを求めるホーさん。そんなホーさんにルンさんは、
「男が悪事を働いたら立派に務めを果たし胸を張って刑務所を出て来い・・・」
と諭すのでした(詳細はディーン・セク(ルンさん)編に)。
いっぽうすでにルンさんの組織に潜入したキットに、後は俺がやるからお前は手を引けと迫るホーさん。だが頑固なキットは
「このまま続ける、続けてかつて黒社会の一員だった兄さんの気持ちを少しでも理解したいんだ」
と言う。弟の頑固さを知っている兄は仕方がないとあきらめるのだった(詳細はレスリー(キット)編に)
さて、あれやこれやでルンさんは造船会社を乗っ取ろうとする悪い奴らの罠にはまり、殺人の汚名を着せられる。
ホーさんはルンさんをつれて、かつて刑務所から出所した自分を温かく迎えてくれたタクシー会社のキンさんのところにつれていく。そしてキンさんの手配でN.Y.へと国外逃亡。この時のキンさんが名台詞を吐くので紹介する。
ほとぼりが冷めるまでN.Y.に逃がそうというホーに対して
「俺の主義に反するな・・・でも主義は変える」
そんなこんなでルンさんを無事N.Y.に送ったホーさんであるが、ルンさんが心配でたまらない。ああ、こんな時マークがいればなぁ・・と思っていた時、ホーさんは一人の画家に出会う。その人はホーさんやマークの生き様を描き続けている人だった(何故?)。
そして、そこでホーさんは、マークには双子の弟がいて、今はN.Y.で若い奴らを束ねて移民グループのボスをやっている、という衝撃の事実を知る!!(詳細はユンファ(ケン)編に)
・・・とここまで、ことごとく他の人たちにおいしい場面を持っていかれ、頭ばかりか影まで薄くなったホーさん。前作の主役なのに・・・。しかし勿論、我らがジョン・ウーはホーさんをこのままほっとくような冷血漢ではない。熱い熱い中華の血がたぎる男である。
過去に黒社会で名を轟かせたホーさんは、ルンさんを裏切った組織に潜入成功。ボスは忠誠を試したいからおとり捜査官を殺せと命じ、ひきあわされた捜査官はキットだった。
組織に潜入するには弟を撃たねばならない。組織の面々が見守る中、ホーさんはまずキットのわき腹に一発。その後1~2分にわたって苦悩し躊躇し他ならぬキット自身に「撃て!」と説得されて2発目。
ここまでじらせたら、正体ばれるだろ!!と思うが、いかに任務とはいえ弟をためらわず撃つような描写をジョン・ウーはさせない。
その後、悪の組織が撤収したところで、ホーさんは戻ってきて、息も絶え絶えのキットを病院に送り込む。
その時のかなり必死な形相が感動的である。
さて、N.Y.ですったもんだの末、ルンさんと、マークの双子の弟ケンが戻ってくる。
ホーさんはうれしさのあまりか、池(小川?)の中をバシャバシャ飛沫あげながら駆けて来る。
↑晩歌2の何十回観ても笑えるが、何十回観ても意味不明でシュールなシーン
常に弟思いで過保護なくらいのホーさん。敵のアジトで元ルンさんが社長をやってた造船工場に殴り込みをかける際も、キットに来るなという。なにせキットの妻ジャッキーは今日がお産なのだ。この配慮は当然だったろう。しかし家族より任務が大事と若さゆえの判断でキットはホーさんたちとは別行動をとる。そして・・・キットは凶弾に倒れるのである(よく撃たれる奴だ)。
キットの歌声がバックグラウンドに響く中、ホーさんはもの言わぬキットと対面する。問題はここからだ。天才監督ジョン・ウーは凄まじい演出を見せる
上段左から3~4コマ 放心のあまり轢かれそうになるホーさん
下段左から2コマ 助けてくれた警備員の顔がキット?
下段左から3コマ え??超判りやすいモンタージュ
下段左から4コマ ブオトコに切り替わる。この役者が少し可哀想だ
そして怒りに燃えるホーさん、ケン、ルンさんは、キットを殺した組織の本部に殴り込みをかけるのである。
なにより皆の心を鷲掴みにしたのは、大ピンチというときキンさんが投げてよこす日本刀!!
ぶった斬り ぶった斬り
すっかり気に入ったのかラストでもしっかりと持っている。
「警部、引退はまだ早いですよ。やる事がたくさんある」
何気に名台詞
<1-II ティ・ロンの功績>
とにかく、挽歌シリーズは基本的にホーさん視点で進んでいくし、2でテーマがぶれはしたが、兄弟の絆こそジョン・ウーが最も描きたかったテーマである。(ただしユンファがあらゆる人間の予想を越えて光り輝いてしまったため、相対的に兄弟というテーマが薄らいだ)
そしてウーの理想の“兄”を(いろんな意味で)パーフェクトに体現していたのがティ・ロンだった。
ティ・ロンは武侠映画のスターだったそうだ(ワイヤー&CGの最近の武侠モノとは違うだろうが)。だからこの「2」で剣を振り回したりしたらしいし、キャリアにおいてユンファやレスリーをはるかに上回るのだ。しかし「2」ではなんだかんだで脇にまわされる。しかしウーがあまり気乗りせずに監督した「2」が物語的にかろうじてウー節をとどめることができたのはティ・ロンという役者が兄弟とは?というテーマをしっかりと抑えてくれたおかげだろう。
<1-III 私の知るティ・ロンの他の作品>
「男たちの挽歌」
「ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち」(監督:ジョン・ウー(誰かと共同))
「非情の街」(ユンファと共演のノワールもの)
「酔拳2」(ジャッキーの父役)
「流星」(レスリー主演のコメディ。未見。チケットを買ったが満員で劇場に入れず友達にやった。友達の話だとちょい役でティ・ロンが出てきてレスリーと語るシーンがあり、挽歌を彷彿させ感慨深かったそうだ)
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『男たちの挽歌2』出演者別映評
<序章 デジタルリマスター版を批判する>
<第一章 ティ・ロン(ホーさん)編>
<第二章 レスリー(キット)編>
<第三章 ディーン・セク(ルンさん)編>
<第四章 ユンファ(ケン)編の前編>
<第四章 ユンファ(ケン)編の後編>
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ティ・ロンはほんといいですよね。表情がいいんですよね。
私は、ユウファと共演した『タイガー・オン・ザ・ビート』が好きです。これ『挽歌』とは逆でティ・ロンのが短気でそれをユンファが抑える役どころなんですよ。
『非情の街』はどういうのでしたっけ?ひょっとして私、みていないかも・・・。
では。