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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

華氏911

2004-11-03 21:19:13 | 映評 2003~2005
面白かったが、ムーアの「おい、ブッシュ、世界を返せ!」を読んでいれば内容的にはほとんど変わらない
内容は80%がニュース映像の編集で、ムーア得意の突撃取材は少ない。ま、しかたないだろう。ブッシュやラムズフェルドが取材に応じる筈がない。
その結果として映画はどうなったかといえば、反対意見を一切取り入れず、ひたすら自分の主張ばかりを語りまくるドキュメンタリーとなった。
ムーアの前作「ボウリング・フォー・コロンバイン」の場合は突撃取材がメインになっていた。反対者のところにアポなし取材し言いくるめて去っていく。有無を言わせず相手を制圧するレイプのようなドキュメンタリーだった。だが本作は一人で好きなようにするだけの、いってみればオナニーのようなもんだ。
単なるニュース映像の編集にすき勝手なナレーションつけただけの映画にパルムドールはやり過ぎだろう。
とういわけで映画の質的には極めて低いと思うのだけど、ムーアの反戦思想と政府批判は、目新しさはないが、痛烈かつ的確である。
イラク戦争が不当な侵略であったこと、ブッシュ政権が国民を恐怖でコントロールしたこと、戦争では一般人や一兵卒が死んでいき金持ちが得すること、ムーアは名調子で語りまくる。
顔をにやつかせて「イラクはビジネスチャンスです」と語る金持ちたちこそ、最前線に送り込んでしまえばいい。ブッシュの顔がどんどんアホみたく見えてくる。
随所にはさまれるユーモアもかなりいい感じ。
やっぱうまいんだな。

作品の最後の方でジョージ・オーウェルの「1984年」からの引用がある。…戦争は勝つことではなく継続させることが必要だ、とかなんとかいうやつ。オーウェルが想定した全体主義的共産主義的管理社会と同じことをブッシュ政権はやっている。文書の一部削除、かつての発言を無かったかのように正反対のことを語る、など、まさに「1984年」の役所で行われる歴史改ざんである。
ただしムーアは、一方的に自分の意見だけをべらべらしゃべっただけだが、オーウェルは「カタロニア讃歌」というスペイン内戦のルポ小説を書くにあたり、これは自分だけの意見であること、どちらかの側につかねばならない以上客観的にはなり得ないこと、スペイン内戦について客観的たらんと務めたければ他の本も読むこと、をしっかりと語っている。
要はムーアは信じさせたいだけで、真実かどうかはあまり注意をはらっていない。この当たりでジャーナリストととしてはオーウェルに劣っているように感じる。オーウェルはジャーナリストじゃないけど。

この映画の真価は次期大統領選ではっきりする。ブッシュvsムーアの戦争は選挙結果が出るまではっきりしない。

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1 コメント

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大統領選を終えて (しん)
2004-11-05 00:44:10
まあ、少なくともこの「華氏911」という映画が、娯楽性や芸術性はさておき、プロパガンダとしては大失敗だったことは証明された。

結果論だけどさ。

さて、次はどうせめる?マイケル・ムーア君



ちなみに私はムーアの本は大好きである。

「アホでマヌケなアメリカ白人」「おいブッシュ、世界を返せ」すごく面白い。ユーモアセンスはあるし、それに例の映画前作「ボウリング・フォー・コロンバイン」もすごく面白かった。



「華氏911」はあわてて作りすぎたよな。性質上仕方ないけど



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